サイト上の広告についての様々な規制②【景品表示法4条ー不当表示の禁止】

景品表示法の広告規制

 以前、特定商取引法による「誇大広告の禁止」についての記事を書きました。サイトの広告については、特定商取引法のみではなく他の法律でも様々な規制があります。
今回は、その中でも最も問題となることが多い景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)の広告規制についての記事を書きたいと思います。


今回も長くなるので、細かいのはいいわ!という方は、いつも通り、「3 まとめ(具体的に注意し、準備しておくこと)」からお読みください。

1 景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)って!?

 景品表示法は、事業者が一方的に出す広告等の内容や条件が、実際のものと違ったりすると消費者(お客さん)が、適切にどの商品を選ぶかという選択ができなくなってしまうことから、広告等の最低限の基準を定めたものです。

つまり、フェアに情報を提供しましょうねっていう法律です。ECサイト運営者側からしも、他の競合ECサイトがアンフェアな売り方等をしていれば困ってしまいますし、EC業界自体への信用が失われてしまうこともありますから、「ECを規制する悪しき法律だ!」なんてことはないと思います。
長い目でみれば、顧客満足度につながるところですので、しっかり理解しておいてほしい法律の一つです。

なお、この法律に違反すると国から改善命令が出され、それを守らないと「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」になることがあります(景品表示法15条)。

2 景品表示法が規制している広告の種類

 景品表示法が規制している広告は、景品表示法4条に定められています。

(不当な表示の禁止)
第4条  事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
2  内閣総理大臣は、事業者がした表示が前項第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

この条文の漢数字(法律的には「号」と呼びます。)の「一」「二」「三」の部分が規制される広告です。一般に、

「一」:「優良誤認表示」
「二」:「有利誤認表示」
「三」:「その他 誤認されるおそれのある表示」

と呼ばれています。
 それでは、これらが具体的にどのような表示をいうのかを見ていきましょう。
 

2.1 優良誤認表示(景品表示法4条1項1号)

 これは、商品やサービスの内容や効能についての規制となります。
優良誤認表示は、上の条文をみるとわかるように、実際のものより著しく優良であるとする表示と他の同業者のものよりも著しく優良であるとする表示に分けることができます。
 

2.1.1 実際のものより著しく優良であるとする表示

 有名な例ですと、「松坂牛ステーキ」と記載された商品が、実は松坂牛ではなかった場合がこれにあたります。
他を挙げると、実際は果汁成分50%であるジュースに「100%果汁」と表示、や「走行距離」を偽った中古車、機械打ちの麺に「手打ち」と表示等があります。
 

2.1.2 他の同業者のものよりも著しく優良であるとする表示

 例えば、「PCの販売等でこの技術は日本で当社だけ」や「合格実績NO1」等と表示しているが、実際は当社だけではなかったり、実績の計算法が適正なものでなかった場合等です。
実際に裏付けがない他社との比較による表示は違法となります。
身近な例でいうと、カップめん等の表示で、「麺2倍」の表示に「※当社比」や「※当社他商品と比較して」等と書かれていることがあると思います。これは、この他社比較の優良誤認表示を回避するために表示していると考えられます。
 

2.1.3 優良誤認表示の注意点

 ここまで、例をあげてきましたが、ここで判断が一番難しい問題は、商品やサービスの効果・効能の表示です。前の記事でも書いた通り、虚偽の事実・検証していない事実を表示することは論外として、一定の効果があったことを示す証拠を用意しておきましょう。

 

2.2 有利誤認表示(景品表示法4条1項2号)

 これは、商品やサービスの内容等ではなく、価格等の取引条件等関しての規制です。
こちらも、優良誤認表示と同様、実際条件より著しく有利であるとする表示と他の同業者の条件よりも著しく有利であるとする表示に分けることができます。
 

2.2.1 実際の条件より著しく優良であるとする表示

 例えば、「送料無料」と強調して表示していたが、実は送料が無料となるのは、東京都のみであった場合や「今なら半額!!」という表示をしているが、実際にはすべての取引でその値段設定をしていた場合等があります。
いわゆる二重価格表示問題(メーカー小売希望価格の設定がないにもかかわらず、メーカー小売希望価格を設定し、それと比べて「半額!」等と表示する問題)もこの有利誤認表示に分類されます。
 

2.2.2 他の同業者の条件よりも著しく優良であるとする表示

 例えば、価格調査をすることなく「地域最安値」と表示したり、他社の割引サービスを考慮することなく「他社より安い」と比較を表示したりする場合をいいます。
 

◯追記
「有利誤認表示」!?ECサイトの価格表示が景品表示法違反にならないための注意点
※より詳しく具体例から「有利誤認表示」を解説しています。

 

2.3 その他 誤認されるおそれのある表示(景品表示法4条1項3号)

 この規制される広告は、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」にあたらない(又はあたりそうか微妙なもの。)んだけど、消費者(お客さん)に誤認を与えれるおそれがあるものについて、総理大臣が指定すれば、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」と同様に扱うこととしたものです。現状では、以下の次の6種類があります。
 

2.3.1 無果汁の清涼飲料水等について不当表示

 無果汁・無果肉又は果汁5%未満の清涼飲料水等について、「無果汁・無果肉」や実際の果汁%等を明確にせずに、果実名を用いた商品名等その果実でできていると誤認させる表示等は、この不当表示になります。詳細
 

2.3.2 商品の原産国に関する不当表示

 商品に原産国が明示されていない場合や原産国を判別することが困難である場合に、国旗等を表示する等、原産国が実際とは異なる国であると誤認させる表示等は、この不当表示となります。詳細
 

2.3.3 消費者信用の融資費用に関する不当表示

 消費者信用の融資費用について、実質年率が明確に記載されていない場合に、実質とは異なる年利表示等をして、その年利しかかからないと誤認させる表示等がこの不当表示なります。詳細
 

2.3.4 不動産のおとり広告に関する不当な表示

 不動産取引で、消費者を誘引するために、実在しない不動産、実在しても取引の対象とならない不動産(他人の土地等)や取引する意思のない不動産を表示することが、この不当表示になります。詳細
 

2.3.5 おとり広告に関する不当な表示

 一般消費者を誘引する手段として、はじめから存在しない商品・サービス、供給できる数が著しく少ないにもかかわずそれを表示していない商品・サービスや実際に取引する意思がない商品・サービスを表示することは、不当表示になります。詳細
 

2.3.6 有料老人ホームに関する不当な表示

 有料老人ホームの施設・設備、サービスについて、入居後の居室の住み替えに関する条件等が明記されいない表示、介護サービスは別のところがするにもかかわらず、その旨が明瞭に記載されていない表示や夜間の最小介護職員や看護師数等の介護職員等の数が明瞭に記載されていない表示などが、この不当表示にあたります。詳細
 

3 まとめ(具体的に注意し、準備しておくこと)

 今回も長くなってしまいましたが、ECサイト運営者として、この景品表示法の問題とどのように向き合っていくかについて最後に書きたいと思います。
上に転載した景品表示法4条には、算用数字で「2」と書かれた部分(法律的には「項」と呼びます。)があると思います。
そこには、国は、広告表示ついて、その表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています。さらに、その資料が提出できなかったときは、上に見た違法な表示とみなすとされています。「みなす」とは、資料の提出がない場合は違法な表示となるということです。
ですので、以前の記事でも書きましたように、広告の問題については、

虚偽の事実を表示することは論外ですが、・・・(省略)証拠を用意しておくことで、安心して、マーケティングや営業を行うことができるのです。

 特に商品やサービスの効果や効能の表示についてはかなり判断が難しいものが多いので、しっかりと検証結果等の証拠を準備しておきましょう。

 
 今回は、景品表示法についてという切り口で書きましたが、今後このサイトでは、実際にこういう表示どうか!?等のより内容を深めた記事も書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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