お米・玄米等(米穀)をIT(インターネット)サイトで販売するのに法律上必要な手続き【弁護士が教えるECスタートアップに必要な手続き⑤】

米販売_スタート

 当サイトでは、食品をEC(IT取引)販売をスタートするために法律手続きについて書いています(「食品」販売スタート手続きに関する記事一覧)。
 今回は、お米や玄米等の「米穀」を販売するにはどのような法律手続きが必要なのかについて書いきたいと思います。これも国内で仕入れて販売する場合ですので要注意です。

1 「米穀」って!?

 「米穀」っていうのは、ズバリ、「お米」や玄米です。
ここでいう米穀類は、調理をする前のものをいいます。つまり、お米で炊飯器等で炊く前の状態のものをさします。

2 食品衛生法の許可・届出は不要!?

 今までの「食品」(肉や魚や牛乳)は、食品衛生法の許可やこの法律と同一の趣旨からなる食品製造業等取締条例で許可や届出が必要となる場合がほとんどでした。
 それでは、お米や麦といった米穀の販売には、食品衛生関連法の許可・届出が必要になるのでしょうか。
 各食品の食品衛生関連法の許可・届出の要否ついて書かれた記事フローチャートを見ると分かるように、「米穀」販売については規制の対象となっていません。
 したがって、米穀をEC(IT取引)サイトで販売をスタートするにあたって、食品衛生関連法の許可・届出は不要です。
 ただし、お米を炊いたもの(調理したもの)を販売することは、食料品等販売のうち「弁当類」の販売になり、許可が必要になりますので要注意です。
 

3 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律!?

 以上のように、米や玄米等の「米穀」を販売する場合には、食品衛生関連法上の許可・届出は不要です。
 しかし、実はお米とかっていわゆる日本人の主食といえますよね。そこで、法律は、食品衛生法のように食の安全を守るという目的のためではなくて、主食がちゃんと安定して国民が食べられるように規制をしているのです。これが、標題にもなっている「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」という法律です。通称で、「食糧法」なんて呼ばれいます。
 具体的には、農林水産省が管轄する各地の農政局に「届出」を提出する必要がある場合があります。以下、もう少し詳細に見ていきましょう。

3.1 どのような場合に食糧法の届出が必要か!?

 米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者は、事業開始前に農林水産大臣に開始届を提出しなければならないとしています。ここにいう「米穀の出荷又は販売の事業を行う者」とは、営利の目的をもってすると否とを問わず、自己の名義により継続反復して、①生産者からの委託を受けて米穀を集荷し、有償で他人に譲渡すること(出荷)又は、②自ら所有する米穀を有償で他人に譲渡すること(販売)を目的として事業活動を行う者をいいます。ですので、生産者が自ら生産した米穀を届出事業者を仲介することなく直接消費者に販売(産直販売)する場合も含まれます。
 これをEC(IT取引)で考えると、農家さんと消費者の仲介だけをするEC(IT取引)サイト運営であれば届出は不要ですが、仕入れてECサイトで販売するという場合には、届出が必要になります。

 しかしこれにも例外があり、事業規模が20精米トン未満の場合には、法律上届出は不要とさせています。
 ただし、下記の通り、届出は許可等と異なり審査はなく一定の情報を通知すれば良いというものですので、手続きはそんなに煩雑じゃありません。知らないうちに20精米トンを超えている自体もありますし、だいたいそれを把握していないということもありますので、「米穀類」販売を考えた場合には、届出書を一枚提出しておくと良いと思います。届出をしていないと「50万円以下の罰金」になります。

3.2 食糧法の届出の内容や形式

 次に届出が必要だとして、その詳細を見ていきましょう。
 

3.2.1 届出の内容

 まず、届出の内容として、法律上

 ⅰ商号、名称又は氏名及び住所、ⅱ法人である場合においてはその代表者の氏名、ⅲ主たる事務所の所在地、ⅳ事業の開始予定時期、ⅴ届出時点における年間出荷予定数量又は年間販売予定数量

を届出書に記載しましょう。
 ちなみに 予定数量は、精米=「玄米×0.91」で換算します。
 

3.2.2 形式

 届出書の形式については、親切にも農林水産省のHPに書き方例やワードデータで編集可能な様式がダウンロードできますので、そちらをご覧ください。提出先は、各地域の農政局(正確には農政局長)に提出すればOKです。
 農林水産省HP

4 まとめ

 EC(IT取引)サイトでお米を仕入れて販売するということは昨今の農業ブームもあり、十分にあり得ることだと思います。EC(IT取引)サイト運営者の方も参考にしていただければ幸いです。その他、お米の販売にはJAS法等による表示規制等もありますが、今回はスタートアップに特化した形の記事を書きました。また、表示規制等についても書きたいと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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