生魚・魚肉ソーセージやかまぼこ等(魚介類・魚介類加工品)をIT(インターネット)サイトで販売するのに法律上必要な許可手続き【弁護士が教えるECスタートアップに必要な手続き④】

魚介類・加工品販売

 さて、当サイトでは、ここ最近「食品」のEC販売をするために必要な法律的な手続きを書いてきました(「食品」販売開始の手続き一覧はこちら)。今回は、魚関連食品(魚介類や魚介類加工品)を実際に仕入れて、EC(IT取引)サイトで販売するために必要な手続きについて書きたいと思います。今回も魚介関連食品を製造・加工するというのではなく、仕入れてEC(IT取引)サイトで販売する場合に関する記事です。
 なお、当記事は国内で仕入れ販売をする場合の法規制について書いていますので注意して下さい。輸入で仕入れる場合には、他の法規制がありますので、それは別記事で書きたいと思います。また、仲介や取次をするのみであれば、許可等は不要ですのでご注意下さい。

目次

1 「魚」関連食品をEC(IT取引)サイトで販売するために必要な許可

 他の食品でも書きましたが、魚関連食品販売を開始するにあたってどんな手続きが必要かということは、食品の許可・届出一覧に関する記事フローチャートを見ればわかります。
 これらを確認すると、「魚」が関連する食品に必要となりそうな許可・届出は、「魚介類販売」と「魚介類加工品販売」だと思います。

1.1 「魚介類」販売として、法律(食品衛生法)上の必要な許可

 法律(食品衛生法)上の「魚介類販売」とは、店舗を設け、鮮魚介類(鯨肉を含む)を販売する営業をいいます。
 「鮮魚介類」とは、生魚やあさり等をいいます。スーパーでパック販売させているもの等がわかりやすいでしょう。

 ただ、1点気になることがあります。上では「魚介類販売」は「店舗を設け」とされています。ですので、EC(IT取引)のみで販売する場合には、許可は不要なのでは!?と思います。実際、漁師さんとお客さんの仲介をするのみであれば上述のように許可は不要です。
 しかし、「生魚」を実際にを仕入れた場合には、保管する倉庫なり施設が必要になると思います(例えば、家の冷蔵庫も倉庫です。)ので、このような場合には、その保管する倉庫を「店舗」ととらえて、「魚介類販売」の許可が必要となるのです。そうでなければ、食中毒等から食の安全を守るという食品衛生法の趣旨を全うできないですよね。

 
 ただし、この「魚介類販売」からは、魚介類を生きているまま販売するものや魚介類競り売りで販売す(「市場の競り」のことです。)ものは除かれますので、ご注意ください。

1.2 「魚介類加工品」を含む「食料品等販売」として条例上必要な許可(東京)

 前々回の食品の許可・届出一般についての記事「3.2」でも述べられている通り、塩辛、くん製品、魚肉ねり製品、ゆでだこ、たらこ、すじこ、いくら、魚肉ソーセージ等の「魚介類加工品」を販売することについては、東京都の場合、食品製造業等取締条例で許可が必要とされています。

 ただし、「ⅰ販売時における温度管理が不要な食品であって、ⅱ容器包装に入れられた食品のみをⅲ仕入れた状態のまま販売する場合」には許可が不要となります。例えば、常温保存可能な干物や煮干し等は許可が不要になるんです。

1.3 「魚介類加工品」として、食品衛生法細則上必要な届出(報告)

 上記「1.2」の2段落目の通り、条例上の許可が不要な場合がありますが、この場合でも、営業を開始して10日以内に保健所の届出をする必要があります。
 届出の内容ですが、ⅰ営業所所在地、ⅱ名称、屋号又は商号、ⅲ営業の種類、ⅳ営業設備の大要を記載して提出すれば足ります。あくまで、届出なので、審査等があるわけではありません。営業を開始して、10日以内に提出すれば良いということになります。
 許可・届出が少し複雑になりましたが、混乱したら、こちらの記事をご確認ください。

2 「魚」関連製品の許可等の流れ

 それでは、次に許可の手続きの流れを見てみましょう。この辺りは、別の食品の記事とかぶるので、当サイトの別記事の該当箇所を引用します。

2.1 行政に事前相談をしよう!

 まず、食品衛生法上の許可を得るためには、下にも書きました通り、施設の基準等があります。ですので、施設工事直行前に、施設の設計図や現状についての資料等を持参して、問題がないかチェックしてもらいましょう。施設工事を行ってから問題があると大変なので、営業所を保管する保健所の食品衛生担当者に事前相談はしておいた方がよいでしょう。

2.2 営業許可申請書類を提出

 事前相談で問題がなければ、営業許可申請書類を提出しましょう。必要な提出書類は以下の通りです。
 

2.2.1 個人の場合

①営業許可申請書1通、②営業設備の大要・配置図2通、③許可申請手数料(自治体により異なりますが、概ね15,000~20,000円)④食品衛生責任者の資格を証明するもの、⑤水質検査成績書(※貯水槽使用水、井戸水使用の場合)

 

2.2.2 法人(会社等)の場合

①営業許可申請書1通、②営業設備の大要・配置図2通、③許可申請手数料(自治体により異なりますが、概ね15,000~20,000円)④登記事項証明書1通⑤食品衛生責任者の資格を証明するもの、⑥水質検査成績書(※貯水槽使用水、井戸水使用の場合)

2.3 施設完成の確認検査

 施設が、下記の基準を満たすがどうか、保健所が施設の確認検査をすることになります。ここでもし、条件にあわない事項があると許可をもらえないため、すぐに改善し再検査をうけましょう。

2.4 許可証の交付と営業開始

 「2.3」の検査の結果、問題がなければ、許可書の交付がなされます。だいたい確認検査から2~10日以内には許可書が交付されることになります。
 この許可書の交付を受けて初めて営業を開始できます。営業を始めたら、下記の食品営異性責任者の名札を見やすい場所に掲示しましょう。

3 「魚」関連食品販売の許可基準(許可を得るにはどんな条件が必要か!?)

 他の食品と同様、包装済みの食品のみの販売か、そうでないかによって、許可の条件が変わってきます。包装済み食品の販売のみであれば、人の手等が触れることがなく食中毒等の危険性が低くなりますので、許可の条件が緩くなります。

3.1  包装済みの魚関連食品だけでなく、小分け等して販売する場合(原則的な基準)

3.1.1 営業施設の構造(「魚介類販売」と「食料品等販売」と共通)

場所清潔な場所
建物鉄骨、鉄筋コンクリート、木造作り等十分な耐久性がある構造
区画使用目的の応じて、壁、板等により区画
面積取扱量に応じた広さ
タイル、コンクリート等の耐水性材料で排水が良く、清掃しやすい構造(床こう配1/50~1/100が適当)
内壁床から1メートルまでの耐水性で清掃しやすい構造(床と壁が交わる隅は丸みをつける)
天井清掃しやすい構造(配管ダクト、照明器具等が露出しないこと)
明るさ50ルクス以上
換気ばい煙、蒸気などの排除設備(換気扇等:ダクトによって屋外に廃棄する場合には近隣に迷惑にならないように高さや方向に注意する。)
周囲の構造周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水がよく、清掃しやすい構造
洗浄設備原材料、食品や器具等をあらうための流水式洗浄設備(目安として、45㎝(幅)×36㎝(奥行)×18㎝(深さ)以上が望ましい。)
従業員専用の流水受漕式手洗い設備と手指の消毒装置目安として36㎝(幅)×28㎝(奥行)以上で、蛇口は、足踏み式、ハンドコック等が望ましい。
更衣室清潔な更衣室または更衣箱を作業場外に設ける。

3.1.2 食品取扱設備(「魚介類販売」と「食料品等販売」と共通)

器具等の整備取扱量に応じた数の機械器具および容器包装
器具等の配置移動しにくい下階器具等は、作業に便利でで、清掃や洗浄をしやすい位置に配置
保管設備原材料、食品や器具類等を衛星的に保管できる設備(食器戸棚や器具保管庫等の戸を必ず設置)
器具等の材質耐水性で洗浄しやすく、熱湯、蒸気又は殺菌剤等で消毒可能なもの
運搬具防虫や防塵じん、保冷できる清潔な食品運搬具を備える。
計器類冷蔵、殺菌、加熱、圧搾等の設備には、見やすい個所に温度計及び圧力計を備える。必要に応じで、計量機を備える。

3.1.3 給水及び汚物処理(「魚介類販売」と「食料品等販売」と共通)

給水設備         水道水又は飲用に適していると認めれる水を豊富に供給できるもの
       
※貯水槽は衛生上支障のない構造。ただし、島しょ等で飲用に適した水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。貯水槽や井戸水を使用する場合は年1回以上、水質検査を行い成績書を1年間保存
便所
作業場に営業のない位置や構造で、従業者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ネズミ族、昆虫等の防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける。
汚物処理設備
ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れないもの
清掃機具格納設備
作業場専用の清掃機具と格納設備

3.1.4 「魚介類販売」のみに必要な条件

冷蔵設備  食品を保存するために十分な大きさを有する冷蔵設備を設ける。
 ただし、生食用魚介類を販売する場合は、5℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備を設ける。
 また、冷凍魚介類を販売する場合は、-15℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備を設ける。
機械器具取扱量に応じた生食専用の機械器具を設ける。
解凍設備冷凍魚介類を解凍販売する場合は、解凍設備を設ける。
最高最低報時計冷凍魚介類の冷蔵設備には、最高最低温時計を備える。

3.1.5 「食料品(魚介類加工品)等販売」のみに必要な条件

・作業場には、沈殿槽のある排水溝が設けられていること。

3.2 包装済みの魚関連食品だけ販売する場合

3.2.1 営業施設の構造(包装済み魚関連食品のみの販売の場合)

場所清潔な場所
建物鉄骨、鉄筋コンクリート、木造作り等十分な耐久性がある構造
区画使用目的の応じて、壁、板等により区画
面積取扱量に応じた広さ
タイル、コンクリート等の耐水性材料で排水が良く、清掃しやすい構造(床こう配1/50~1/100が適当)
内壁床から1メートルまでの耐水性で清掃しやすい構造(床と壁が交わる隅は丸みをつける。)
天井清掃しやすい構造(配管ダクト、照明器具等が露出しないこと)
明るさ50ルクス以上
周囲の構造周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水がよく、清掃しやすい構造
従業員専用の流水受漕式手洗い設備と手指の消毒装置目安として36㎝(幅)×28㎝(奥行)以上で、蛇口は、足踏み式、ハンドコック等が望ましい。
更衣室清潔な更衣室または更衣箱を設ける(作業所外である必要はない。)。

3.2.2 食品取扱設備(包装済み魚関連食品のみの販売の場合)

保管設備食品を衛星的に保管できる設備
運搬具防虫や防塵じん、保冷できる清潔な食品運搬具を備える。
計器類冷蔵等設備には、見やすい個所に温度計を備える。

3.2.3 給水及び汚物処理(包装済み魚関連食品のみの販売の場合)

給水設備         水道水又は飲用に適していると認めれるミスを豊富に供給できるもの
       
※貯水槽は衛生上支障のない構造。ただし、島しょ等で飲用に適した水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。貯水槽や井戸水を使用する場合は年1回以上、水質検査を行い成績書を1年間保存
便所
従業者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ネズミ族、昆虫等の防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける(作業場に営業のない位置や構造である必要ない。)。
汚物処理設備
ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れないもの

3.2.4 「魚介類販売」のみに必要な条件

冷蔵設備 食品を保存するために十分な大きさを有する冷蔵設備を設ける。
 ただし、生食用魚介類を販売する場合は、5℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備を設ける。
 また、冷凍魚介類を販売する場合は、-15℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備を設ける。
最高最低報時計冷凍魚介類の冷蔵設備には、最高最低温時計を備える。

3.2.5 「食料品(魚介類加工品)等販売」のみに必要な条件

・作業場には、沈殿槽のある排水溝が設けられていること。

3.3 食品衛生管理者(「3.1」と「3.2」共通)

 「魚介類販売」か「魚介類加工品販売」否か、包装済み食品の販売のみか否かにかかわらず、「食品衛生管理者の資格」を持ったものが必要があります。以下、当サイトの別食品に関する記事と同一なので、引用です。

詳細は都道府県により、若干異なりますが、「公衆衛生学」、「衛生法規」、「食品衛生学」の講座を6時間程度受講することで資格を得ることができるのです。
 東京の場合は、社団法人東京都食品衛生協会ホームページで日程等の詳細を確認できます。
 また、

栄養士、調理師、製菓衛生師、と畜場法に規定する衛生管理責任者、と畜場法に規定する作業衛生責任者、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士、食品衛生管理者もしくは食品衛生監視員となることができる資格を有する者

については、講習を受ける必要はありません。
 なお、ここにいう「食品衛生責任者」は、食品衛生法によって、一定の業種に必要となされる「食品衛生管理者」とは異なりますので、注意して下さい。

4 まとめ

 以上が、「魚」関連食品を実際に仕入れ、EC(IT取引)サイトで販売することをスタートアップするために必要な法手続きになります。
 ただし、繰り返しになりますが、「魚」関連食品を製造・加工することや「魚」関連食品を輸入して販売することについては、別の規制がありますし、ただ単に漁師さんとお客さんの仲介をするだけ等であれば許可は不要です(魚関連商品を保管等することがあれば必要です。)ので、注意して下さいね。あくまでも、国内で、魚関連商品を実際に仕入れ、EC(IT取引)サイトで販売するという場合を想定しています。
 是非、お役に立てて頂ければ幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

この著者の最新の記事

関連記事

運営者情報

お気軽にお問い合わせ下さい

ページ上部へ戻る