IT(インターネット)サイトで「食品」の販売を開始するのに法律上許可・届出が必要なものとは!?【弁護士が教えるECスタートアップに必要な手続き①】

食品EC販売_許可届出

 EC(IT取引)サイトを通じて、いろんな商品を多くの人に届けられるようになってきました。これは本当に素晴らしいことですよね!
ただし、許可や届出が必要なものがあります。例えば以前の記事でいうと「中古品」の販売がこれにあたります。
 今回は、ECでも販売されることが多い「食品」に関連するもののうち、許可等が必要なものを書きたいと思います。そのあとで、それぞれの食品の種類に応じで、どのようにすれば許可が得られるのか、その後運営で何に気をつけたら良いか等を別記事で書いていきます(書き次第このページにもリンクを貼っていきますね。)。
なお、当記事は、国内で仕入れ販売をする場合の法規制について書いていますので注意して下さい。輸入で仕入れる場合には、他の法規制がありますので、それは別記事で書きたいと思います。


 EC運営者の方は、主に「3」をご覧になってください。製造をするよりも、商品を仕入れて売るという形が多いと思うので。
 最後の「4 ECサイトでの食品販売まとめ」で、取扱い食品の許可・届出の要否を整理するフローチャートもありますのでそれも参考にして下さい。

1 食品に関する法律「食品衛生法」!!

 まず、「食品」を製造や販売する場合に、どんな法律が問題になるのかという点が問題になると思います。「食品衛生法」という法律が「食品」を扱う上で、最重要の法律になります。

1.1 食品衛生法って!?

 どんな法律かざっくりいうと「食の安全を保つための法律」といっていいと思います。
つまり、食品や飲食において、安全性維持や衛生上の危害発生を防止して、国民の健康を保護することを目的とした法律なのです。

1.2 食品衛生法ってどんな規制があるの!?

 ここでは、ざっくりとに収めますが、商品や添加物、器具や容器包装、表示・広告や営業の仕方について様々な規制がなされています。
 所管は厚生労働省ですが、実際に監督指導をするのは、通常地方公共団体の保健所です。

1.3 スタートアップにどう影響するのか!?

 そして、食品衛生法は、ある食品を製造・加工したり、販売する場合には、許可をとる必要があると定めています。この辺りがスタートアップと関連してくるのです。食品衛生法によって許可がいるものが決まっていますが、地方公共団体が定める「条例」によっても許可が必要とされているものがありますので、注意が必要です。以下は、「東京」を前提として、条例も含めて検討します。
 なお、飲食店や喫茶店の営業ももちろん許可が必要ですが、ECについてのサイトですので、ここでは省略します。

2 自ら食品を製造・加工してEC(インターネット(IT)サイト)で販売する場合

 まず、EC(IT取引)サイトであっても、自ら食品を作って売りたい!!という人はいると思います。例えば、自分で作ったお菓子を売りたい場合等がこれにあたるでしょう。
 下記の通り、ほとんどの食品を「製造・加工」等する場合には、許可(ないし届出)が必要であると考えて間違いないでしょう。

2.1 食品衛生法・条例で許可が必要な場合

 食品衛生法及び各地方公共団体の条例では、製造・加工について許可が必要な食品の種類を定めています。

2.1.1 食品衛生法の許可

菓子製造業、あん類製造業、アイスクリーム類製造業、乳製品製造業、食肉製品製造業、魚肉ねり製品製造業、清涼飲料水製造業、乳酸菌飲料製造業、氷雪製造業、食用油脂製造業、マーガリン又はショートニング製造業、みそ製造業、醤油製造業、ソース類製造業、酒類製造業、豆腐製造業、納豆製造業、めん類製造業、そうざい製造業、かん詰又はびん詰食品製造業、添加物製造業、乳処理業、特別牛乳さく取処理業、集乳業、食肉処理業、食品の冷凍又は冷蔵業、食品の放射線照射業

2.1.2 条例(東京都の場合:食品製造業等取締条例)

・つけ物(塩づけ及びぬかづけ以外)製造業
・製菓材料等(生種、いり種、コーンカップ、アンゼリカ、フォンダント、フラワーペーストその他の製菓材料並びにジャム及びママレード類)製造業
・粉末食品(粉末ジュース、インスタントコーヒー、みそ汁のもと、ふりかけ類、ドーナツのもとその他の粉末食品)製造業
・そう菜半製品等(ギョウザ、コロッケ、ハンバーグその他のそう菜の半製品、こんにやく、ちくわぶその他のそう菜材料及びしそ巻、たいみそその他のそう菜類似食品)製造業
・調味料(チャーハンのもと、だしのもと、カレールーその他の調味料及び七味唐辛子、カレー粉、さんしよう粉その他の香辛料)等製造業
・魚介類加工業
・液卵(鶏の液卵(鶏の殻付き卵から卵殻を取り除いたもの)製造業

これは東京都について書いていますが、私が調査したところ、

「食品」「製造」「許可」「該当都道府県」

で検索するとその地域の情報がでてきますので、そちらをご覧ください。

2.2 届出(報告)が必要な場合(東京都の場合)

卵選別包装業(鶏の殻付き卵を選別し包装する営業),給食供給者
※食品製造業等取締条例

※その他、生食用かきやふぐを扱う場合は別途規制があります。

製粉業、つけ物製造業(塩づけ又はぬかづけを製造するもの。)、食品衛生法施行規則第78条のおもちゃ(主に乳幼児が遊ぶもの)製造業、その他食料品製造業(「2.1.2」で許可を必要する営業を除く。)
※食品衛生法施行細則

3 単にEC(インターネット(IT)サイト)で販売するのみの場合

3.1 販売のみでも、食品衛生法の許可が必要な場合

 食品衛生法は、下記のように鮮度が下がることによって、食中毒が発生するおそれが強い食品について、たとえ販売するのみであっても許可をとることを要求しています。保存方法等を定めたり、指導監督できるようにしなければ、食の安全が害されるおそれが強いからですよね。

乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業、魚介類せり売営業、氷雪販売業

3.2 販売のみでも、条例で許可必要な場合(東京都)

食料品等販売業(弁当類、そう菜類、乳製品、食肉製品、魚介類加工品その他の調理加工を要しないで直接摂食できる食品を販売する営業をいう。)

というすでに製品化されるものを販売する場合にも、条例により、許可が必要であるとしています。

ここがEC運営者には一番重要なポイントかと思いますので、詳細に説明します。
 

3.2.1 対象品詳細

 上の括弧の中に食料品等販売の中身が書いてありますが、これを例をとってより詳細に説明します。

① 弁当類(にぎりめし、赤飯、すし、サンドイッチ等)
② そう菜(煮物、煮豆、揚物、蒸し物、酢の物、あえ物)
③ そう菜類似品(納豆、つくだ煮、つけ物、嘗みそ)
④ 乳製品(バター、チーズ、はっ酵乳、乳酸菌飲料)
⑤ 食肉製品(ベーコン、ウインナー、ハム、ソーセージ等)
⑥ 魚介類加工品(塩辛、くん製品、魚肉ねり製品、ゆでだこ、たらこ、すじこ、いくら等)
⑦ その他の食品(豆腐、ゆでめん類等)

これらが、条例で許可が必要とされている対象食品になります。
 

3.2.2 例外的に対象食品であっても許可が不要になる場合

 平成25年2月1日から上記の対象食品であっても、ある条件がそろった場合には許可が不要となるEC運営者にとってとても重要な変更がありました。
 どういう変更かというと「ⅰ販売時における温度管理が不要な食品であって、ⅱ容器包装に入れられた食品のみをⅲ仕入れた状態のまま販売する場合」には許可が不要となるというものです。例えば、

・漬物のうち常温保存可能なもの(梅干し、らっきょう漬け等)
・つくだ煮のうち常温保存可能なもの
・チーズのうち常温保存可能なもの(粉チーズ等)
・乾燥食肉製品(ビーフジャーキー等)

等は、許可が不要となりました。
 ただし、①弁当類、②そうな菜については、傷みやすいやすいため、

「容器包装詰加圧加熱殺菌食品等のレトルト殺菌食品」又は「製造所において、加熱処理され、真空脱気等により気密性ある容器包装に入れられた温度管理が不要な食品」

といえる場合のみ許可が不要となります。非常食用の常温で長期保存可能なそう菜が例としてはあるかなと思います。

3.3 販売のみでも、届出(報告)が必要な場合:食品衛生法施行細則

 次に許可までは不要だけど、一定の事項の届出をして、こういうの売ってますよと教えて下さいねという「食品」もあります。

豆腐加工品販売業(製造と兼ねるものを除く。)
生菓子販売業
魚介類加工品販売業(「3.2」で許可を必要する営業を除く。)
乳さく取業乳製品販売業(「3.2」で許可を必要する営業を除く。)
アイスクリーム類販売業

これらの食品を販売する場合には、届出が必要となります。

4 ECサイトでの食品販売のまとめ

 以上が、EC(IT取引)サイトによって、「食品」を販売する場合に、許可や届出が必要になる場合をまとめたものです。最後に思考の過程をまとめておきます。

4.1 製造・加工までする場合

 この場合には、「2」でも書いた通り、ほとんどの場合に許可・届出が必要となりますので、そのように考えてまず間違いありません。ですので、食品の製造・加工等がしたいときは、すぐに保健所に許可申請や届出をしましょう。

4.2 販売のみする場合(許可届出の要否フローチャート)

 食品販売許可届出の要否フローを下に画像で上げておきます。スマホからご覧の方は、タップして画像のみでご覧ください。

食品販売許可届出の要否フロー

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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