サイト上の広告についての様々な規制①【特定商取引法12条ー誇大広告の禁止】

誇大広告

 当サイトでも、かなりの頻度で登場する「特定商取引法」(正式名称:特定商取引に関する法律)。通信販売となるEC取引では、かなり重要な法律になります。今回は、特定商取引法が広告の出し方についても規制を設けておりますので、それについて解説したいと思います。

 
 
なお、ECの場合、特定商取引法以外でも、景品表示法等他の法律でも広告に対する規制がありますが、長くなるのでそれは別記事で書きたいと思います。

今回は、特定商取引法12条(誇大広告の禁止)についてです。

1 特定商取引法12条

 まず、特定商取引法ってどんな法律なの!?ということなのですが、それは、こちらの記事に書かれていますので参考にして下さい。

ECサイト運営に法律的に最低限必要なもの②

それでは、まず誇大広告についての条文を見てみましょう。

(誇大広告等の禁止)
第12条  販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは指定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第15条の2第1項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

となっています。条文を読むのはなんかめんどくさいですが、つまり、商品やサービスについて、虚偽の内容や消費者(お客さん)を誤認させるような広告をしてはいけませんというごくごく当たり前なことが書かれています。

 これを守らないと、行政処分(業務停止命令)や刑罰(を受けたり、経済産業省のホームページに違反者情報が公開されたりとペナルティーを課されます。
そして、何よりもお客さんとのトラブルのもとになりますので、ご注意ください。

2 特定商取引法12条違反の要件と具体例

 それでは、具体的にどのような場合に特定商取引法12条違反になるのか法律上の要件等を踏まえて見ていきたいと思います。
ずばり、ECの広告で、特定商取引法12条違反となる要件は、①「主務省令で定める事項」について、②「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」をするという2つに該当することです。
※①については、12条自体にも事項が定められていますが、この事項は①がそれを含んで定められていますので、結局①の事項となります。

2.1 ①主務省令で定める事項

2.1.1 法律事項

(誇大広告等の禁止)
主務省令第11条  法第12条 の主務省令で定める事項は次のとおりとする。
一  商品の種類、性能、品質若しくは効能、役務の種類、内容若しくは効果又は権利の種類、内容若しくはその権利に係る役務の種類、内容若しくは効果
二  商品、権利若しくは役務、販売業者若しくは役務提供事業者又は販売業者若しくは役務提供事業者の営む事業についての国、地方公共団体、通信販売協会その他著名な法人その他の団体又は著名な個人の関与
三  商品の原産地若しくは製造地、商標又は製造者名
四  法第11条 各号に掲げる事項

2.1.2 具体例

ⅰ 「一」号
・「種類」
 商品の機種等をいいます。
※既に「最新機種」ではないにもかかわらず、「最新機種」等と表示して、お客さんが最新機種であると思ってしまうようなことを防止するため。
・「性能」
PCの処理能力や健康食品の成分・賞味期限、エステの具体的な施術等
・「効能又は効果」
 ダイエット商品による体重減少の程度、家庭教師による成績の向上等
ⅱ 「二」号
 「農林水産省認定」、「東京都公認」、「経済産業省認定」等

2.2 ②「著しく事実に相違~誤認させるような表示」

2.2.1 法律の考え方

 この要件は、文字通り、事実と広告に違いがある又は実在の商品等より優良・有利であるとお客さんが感じる場合をいいます。
ただし、取引においてお客さんを引きつけるためある程度誇張されるのは広告戦略上必要なことで、お客さんもその辺りは予想できるということから、「著しく」といえる場合に限定されています。
 この「著しく」といえか否かは、個別具体的な判断になります(この辺りは下の具体例等を参考にして下さい。)が、「一般消費者から見て、広告に書いてあることと事実との違いを知っていれば、当然その商品等を買うことはなかった。」といえる場合に該当するといえそうです。

2.2.2 具体例

 上でも述べた通り、最新でないにもかかわらず「最新機種」と表示したり、ダイエット商品による体重減少の検証すらしていないにもかからず、「1週間で10Kg」痩せると表示したりする場合をいいます。
つまり、もし、「最新」ではなかったり、体重減少の検証をしていなかったりしたら、その商品を購入する人はいませんよね。
そういう場合に、②の要件に該当することになります。

3 まとめ

 以上、特定商取引法の「誇大広告」の規制についてみてきましたが、「機種」や「東京都公認」等はすぐに事実と違うかがわかりますし、サイト運営者としてお客さんと明らかにトラブルになるので、事実と異なる表示をすべきではないし、サイト運営者としても簡単に防げます。
一番難しいのは、商品の効能・効果を表示する場合だと思います。
実際に、マーケティングや営業戦略上、機能を説明するよりも、その商品等によってお客さんにどのような変化があるか、影響があるか、どういう意味で幸福感を味わえるかを伝えることこそ、重要だと思います。
ただし、効能・効果を検証もせずに出すのではなく、実際に検証してこのような結果だったという資料等の証拠を残しておくことが重要です。(また、体重等の場合には、「個人差がある」という事実はしっかりお客さんに伝えましょう。)。虚偽の事実を表示することは論外ですが、一定の効果があったことを示す証拠を用意しておくことで、安心して、マーケティングや営業を行うことができるのです。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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