無料!?どこからが有料!?【フリーミアム型WEBサービス広告の法律問題】

フリーミアム?

 以前より、ECサイト(web・ITサービスを提供するものも含む)の広告についての法律問題を書いてきました(これまでの広告関連記事一覧
 特に広告について一番基本となる法律は、「景品表示法」という法律なのですが、当サイトにも景品表示法の広告制限を解説する記事口コミサイト関連する場合の記事があります。
 今回は、最近のウェブサービスで良く見られるいわゆる「フリーミアム」型サービスをする場合について、景品表示法上の注意点を書いていきたいと思います。

1 フリーミアム型サービスとは!?

 「フリーミアム」型サービスとは、基本的なサービスを無料で提供して、付加的なサービスを有料で提供して収益を得るビジネスをいいます。
有名どころでいうと、「Dropbox」とか、「Hulu」とか、無料で始められるスマホゲームでアイテム等で課金したり、先のストーリーをプレイするためには課金が必要なものとかが、フリーミアム型サービスに該当します。

「Dropbox」は、1GB分のオンラインストレージを無料で提供し、それを超えた容量を使用したい場合は、月額課金されるというものです(かういう私もヘビーユーザです。)。
また、「Hulu」オンラインストリーミングサービスで、最新のドラマエピソード数話だけ無料ので見ることができ、よりドラマを見たい場合には、課金されるというものです。
ニコニコ動画もこのサービスに分類されるのでしょう。
 
 つまり、無料で多くのユーザを囲い込み、(サービスの良さを知ってもらった上で、)そのユーザの中から有料サービスを利用してもらい(無料ユーザから有料ユーザにコンバージョンさせて)収益を上げるというモデルです。

なお、余談ですが、「フリーミアム」とは、「Free(無料)」と「Premium(上質)」を組み合わせた造語のようです。

2 フリーミアム型サービスの広告でよく問題なる点

 一時期、スマホゲーム等でよく問題とされたのですが、「フリームミアム」型サービスの場合、無料でサービスを提供してユーザ数を増やすことが最初の課題(この人数が少ないと当然、有料にコンバーンする数も減ります。)になりますので、広告に、「完全無料でプレイ可能!」等の表現がされることが多々あります。

2.1 景品表示法違反!?

 この「完全無料でプレイ可能!」という広告は、すべてのサービスを無料で利用できるとの印象をユーザに与えることになるおそれがありますので、景品表示法上問題となることが多いです。

 実際上の条件(途中から有料でしかプレーできない)よりも著しく優良(すべて無料でプレーできる)であると評価されるおそれが強く、「有利誤認表示」(景品表示法4条1項2号)にあたる可能性が非常に高いです。有利誤認表示の詳細については、景品表示法4条についてのこちらの記事をご覧ください。
 

2.2 問題がある広告表示例

① ストレージサービスにおいて、無料では保存できるデータの量や種類が限定されているにもかかわらず、「無料ですべてのデータを、いつでも、どこからでも保存し、アクセスすることができます!」と表示すること

② 動画を視聴サービスにおいて、実際には、全種類の動画を視聴したり、あらゆる時間帯に視聴するためには、有料会員登録が必要にもかかわらず、「完全無料で動画が見放題!」と表示すること

③ スマホゲームサービスにおいて、一定以上ゲームを進めようとすると有料アイテムを購入しなければならないにもかかわらず、「完全無料でプレイ可能!」と表示すること

etc

3 まとめ(ECサイト運営者(ウェブサービス運営者含む)の取るべき対策)

 以上からみると、サイト運営者(サービス運営者)としては、フリーミアム型サービスを行う場合には、無料で利用できるサービスの具体的内容・範囲を正確かつ明確に広告等に表示する必要があります。
具体的には

①ストレージサービスの場合:無料で使える容量やデータ種類を明確に記載する。
※「1GBまで、無料利用可能!」


②動画視聴サービスの場合:視聴できる範囲や時間帯を明確に記載する。
※「22:00~24:00の間、動画視聴可能!」


③スマホゲームの場合:有料課金があることをしっかり表示する。
※「無料でプレー可能!(※「3」ステージ以降は、有料アイテムが必要です。)」

 このあたりも、サービスモデルの在り方(マーケティング方法)と広告規制のバランスが必要になりますが、長期継続するサービスを提供していくには、お客さんの信頼を裏切らないことが重要ですので、あからさまに「完全無料!」とする表示は避け、適切な情報提供を尽くしましょう。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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