インターネット(IT)・オークションで、出品者は特定商取引法のルール(表示等)を守る必要があるのか!?【ITオークションの法律問題④】

オークション_特定商取引法

 しばらくインターネット(IT)・オークションに関する記事を書いてきました(インターネット・オークションの記事一覧。)。
 今回は、このサイトでも多く記事を書いてきた通常のECサイトでは適用がある特定商取引法のルールが、インターネット(IT)・オークションの出品者(売主)と落札者(買主)との間でも適用されるのかについて書きたいと思います。

1 特定商取引法のルールとインターネット(IT)・オークション

 特定商取引法という法律は、このサイトの中でも多く記事を書いてきました(特定商取引法の記事一覧)が、一定の消費者トラブルが起こり易い取引類型について、守るべきルールを規定したものです。この辺りの詳細は、特定商取引法の概要的なものを紹介したこちらの記事をご覧ください。

 通常、インターネット(IT)・オークションについても、その取引類型の1つである「通信販売」に当たるものと考えられます(これは、通常のECサイトも同様)。
 そうだとすると、やはり特定商取引法のルールが適用されるころになりそうです。
通信販売についての主なルールとして

があります(詳細は各リンク先記事をご覧ください。)。

 ただし、特定商取引法は、事業者と消費者の間で消費者を守ろうよ!という法律ですので

第2条  ・・・省略・・・
二  販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供
2  ・・・省略・・・
3  ・・・省略・・・
4  ・・・省略・・・

からもわかるように出品者(売主)が「販売業者」といえる場合に限定して適用になります。インターネット(IT)・オークションの場合には、EC運営者と異なり、出品者が別に「業者」であるわけではない場合も多いですよね。
 ですから、出品者が「販売業者」と言えるか否かで、特定商取引法のルールを守らなくてはならないかが違ってくるのです。

 それでは、誰が「販売業者」で、誰が「販売業者」ではないのか。。。この辺りを見ていきましょう。

2 出品者が特定商取引法の適用がある「販売業者」といえる場合!?

 特定商取引法のいう「販売業者」とは、販売について、

①営利の意思を持って②反復継続して取引を行う者

をいうと考えれています。
 ここでいう①「営利の意思」とは、取引実態等から客観的に判断されるものです。例えば、転売目的で商品の仕入れをする場合等は①「営利の意思」ありと判断されます。
 ②「反復継続」は、1個の商品を1回だけ販売するというような場合ではなく、継続的に商品を販売するということを意味しています(まぁ、そのままです。)
 なお、注意が必要なのは、この①「営利の意思」や②「反復継続」についてはインターネット(IT)・オークション以外の取引も含めて総合的に判断されるので、例えば、普段店頭で商品を販売している者が、一回だけインターネット・オークションで出品したという場合には、当然「販売業者」にあたり、特定商取引法のルールを守る必要があるということになります。

 とはいっても、インターネット・オークションは、これまで消費者であった個人が容易に「モノ」を販売することができる仕組みですので、特定商取引法の適用のありなしで、悩むのは一個人がどのような販売をしたら、「販売業者」に当たるかだと思います。
 厳密には、上の①「営利の意思」と②「反復継続」を個別に判断しなきゃなりません。ただし、そんなこといちいちするのは難しいですよね。そこで、この辺りについて、国が一定のガイドラインを定めています(ガイドラインは法律的な効果があるわけではないので、これに従ったからといって絶対OKというものではありません。個別事情によって①②の厳密な判断は変わってきます。ただ、事実上、概ねこれに従っておけばまず問題ないでしょうという基準になりますのでチェックしておいてください。)

2.1 すべてのカテゴリー商品について

 国のガイドラインでは、まず、すべての商品について以下の場合には、特別な事情がない限り、原則として①「営利の意思」と②「反復継続」があり、「販売業者」にあたるとされています。

これに加えてこんなことも書かれています。

但し、これらを下回っていれば販売業者でないとは限らない。商品の種類によっても異なるが、一般に、特に、メーカー、型番等が全く同一の新品の商品を複数出品している場合は、販売業者に該当する可能性が高いことに留意すべきである。

2.2 特定のカテゴリー商品について

 また、特に消費者トラブルが多い商品等について、国はより細かな基準をガイドラインの中で謳っています。それをまとめると以下のようになります。

一般の家電製品(テレビやカメラ等)・・・同一の商品を一時点において5点以上出品している場合
※この場合の「同一の商品」とは、カメラ、パソコン、テレビ等、同種の品目を言い、メーカー、機能、型番等が同一である必要はないと考えられる。
車やバイクの部品・・・同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
※この場合の「同一の商品」とは、ホイール、バンパー、エンブレム等、同種の品目を言い、メーカー、商品名等が同一である必要はないと考えられる。
CD、DVD、パソコン用ソフト・・・同一の商品を一時点において3点以上出品している場合
※この場合の「同一の商品」とは、メーカー、商品名、コンテンツ等が全て同一の商品を言う。
いわゆるブランド品(時計、バック等)・・・一時点において20点以上出品している場合
インクカートリッジ・・・一時点において20点以上出品している場合
健康食品・・・一時点において20点以上出品している場合
チケット等(スポーツの施設利用や観戦、映画のチケット等)・・・一時点において20点以上出品している場合

3 まとめ

 以上、今回は、国のガイドラインから「販売業者」といえるのかを見てきました。
細かく見てきましたが、これらの基準は絶対ではありませんが、かなり明確な基準となります。実際、この基準からOKなのに、特定商取引法違反とされる場合には、それ以前に国や落札者等からクレーム等が入ると考えられるので、その際に、修正するということでも、十分かと思います。

 私、個人としてはもう少しシンプルに

○同一時期(周辺時期)に、けっこう複数の販売をする場合
○数は少なくても、もうそれで生計たててるといえるくらい高額な収益がある場合

には、自分(出品者)は「販売業者」であるという認識で、インターネット(IT)・オークションを利用するべきだと考えています。上にあげた特定商取引法のルールを守ること自体もそこまで大変ではないので、この段階でしっかりと「販売業者」としての義務を守る癖をつけておくとよいかと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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