EC取引における申込画面の設定の仕方【行政処分を受けないためにー特定商取引法14条】

確認画面がわかりにくい

 前回の記事では、購入者の操作ミスにより申込みがあった場合に、法律上、契約はどのように処理されるのかについて記載しました。

この話は、購入者とECサイト運営者との契約関係と問題(これを法律的には、「私法上の問題」とかいったりします。)についてのものです。

今回は、申込画面等をちゃんとやらないと国とECサイト運営者との関係(これを法律的には、「公法上の問題」といったりします。)で問題がありますよという記事を書きたいと思います。つまりは、このルールを守らないと国から何かしらのペナルティーを受けますよという問題です。

私法上の問題と公法上の問題は、一応別問題なので、理論的には、「公法上は違法だけと、民法上の契約は有効」というパターンもありますので、頭を整理してみて下さい。

1 どの法律が問題になるの?

さて、ECサイト運営者が、タイトルにもあるよう申込画面の設定について、理解しておくべき法律は、特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)14条です。

第14条  主務大臣は、販売業者又は役務提供事業者が第11条、第12条、第12条の3(第5項を除く。)若しくは前条第1項の規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一  通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約に基づく債務又は通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。
二  顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの
三  前二号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの
2  主務大臣は、通信販売電子メール広告受託事業者が第12条の4第1項若しくは同条第二項において準用する第12条の3第2項から第4項までの規定に違反し、又は次に掲げる行為をした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、その通信販売電子メール広告受託事業者に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
一  顧客の意に反して通信販売電子メール広告委託者に対する通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの
二  前号に掲げるもののほか、通信販売に関する行為であつて、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの

と、条文を見るといろいろめんどくさい感じなのですが、今回問題になるのは、2号の

二  顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為として主務省令で定めるもの

です。

つまり、申込画面の設定が不十分だと「顧客の意に反して…申込みをさせようとする行為」に該当する可能性があり、その場合には、特定商取引法14条の柱書(冒頭部分)によって、改善するように指示を受けてしまいます。そして、その指示を守らなかった場合には、業務停止命令等(特定商取引法15条)を受ける可能性があるのです。

その場合には、、経済産業省のホームページに違反者情報が公開されてしまうというペナルティーまで課されてしまいます。

2 どんな場合に違反となるのか?

 それでは、特定商取引法14条第2号に違反する申込画面・違反しない申込画面とは何か。つまり、上記2号の「主務省令で定めるもの」を見ていきましょう。下記のどちらかにあたれば、アウトですので、注意してください。

2.1 契約の申込みとなることを、購入者が操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと(主務省令16条第1号)

 この規定では、購入者が知らないうちに契約の申込みをしてしまうことを防止するためのものです。ただし、「容易に」となると程度問題となってきます。この点に関して、国(消費者庁及び経産省)が、具体例を元にガイドラインを設定していますので、そちらが参考になります。これを簡単に説明します。

 

2.1.1 主務省令16条第1号に該当するおそれのあるもの

●最終的な申込みあたるボタン上で、購入・注文・申込み等の用語を使用せずに、単に送信等の用語が使用されていて、画面上ほかの部分でも申込みであることが明確に示す表示がない場合

●最終的な申込にあたるボタンの近くに「プレゼント」等、有償ではない申込みと誤認をさせてるような表示がある場合

 

2.1.2 一般に、主務省令16条第1号に該当しないと考えられるもの

●申込みの最終段階において、確認画面が表示され、その上で「この内容で注文する」等の表示のあるボタンを押すことで、申込みを確定させるようになっている場合

●確認画面がない場合であっても、①最終的な申込みボタンに「私は、上記の商品を購入(注文・申込み)します」等の表示がある場合、②申込ボタンに近接して、「購入(注文・申込み)しますか」との表示があり、ボタンに「はい。」等の表示がある場合。

2.2 契約の申込みの内容を、購入者が操作を行う際に容易に確認し及び訂正できるようにしていないこと(主務省令16条第2号)

 こちらも、1号同様、「容易に」となっていますので、程度問題となります。こちらもガイドラインを簡単に説明します。

 

2.2.1 主務省令16条第2号に該当するおそれのあるもの
●申込内容確認画面が表示されず、これを確認するための方法(「注文内容を確認」等のボタンや「ブラウザの戻るボタンで前に戻ることができる」旨の説明等)が提供されていない場合

●申込内容確認画面があっても、訂正するための方法(「「変更」等のボタンや「ブラウザの戻るボタンで前に戻ることができる」旨の説明)が提供されていない場合

●申込内容として、あらかじめ(変更等購入者がしない限り)、同一商品を複数申込するようになっている等通常では想定できない設定になっている場合

 

2.2.2 一般に、主務省令16条第2号に該当しないと考えられるもの
●申込最終段階で、①【申込内容確認画面が表示又は注文内容を確認するというボタンや確認したい場合にはブラウザの戻るを押して下さいとの表示があり】(確認の側面)、かつ②【画面上に「変更」や「取消」等のボタンが存在又は「修正したい場合にはブラウザの戻るを押して下さいとの表示がある】(訂正の側面)場合

3 まとめ(結局、ECサイト運営者はどうすべきか。)

 以上、長々と書いてきましたが、結局のところ、ECサイト運営者としては、

①申込の最終段階で「申込内容確認画面」を表示し、②お申込みボタンと訂正(又は戻る)ボタンを設置する

ということで良いと思います。

前回の記事でも書きました通り、法律云々を別にして、その方が、お客さんに親切ですし、オペレーションコストも下がりますので。

 

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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