電子契約や電子委任状とは!?

 企業間の取引においては、後にトラブルが生じないようにするため、あるいはトラブルが生じた場合の証拠を保全するため、契約書を作成することが重要です。近年、企業間の契約を紙媒体ではなく電子で行う電子契約のニーズが高まってきたことから、「電子委任状の普及の促進に関する法律」が平成29年の国会で成立し、平成30年1月から施行されています。
 今回は、先に施行されている電子署名法も絡めながら、電子契約と電子委任状について解説します。

1 電子契約とは

 契約は、当事者の意思が合致して成立します。例えば、「Aという商品を1万円で買いたい」と、「Aという商品を1万円で売りたい」という双方の意思が合致して、はじめて売買契約が成立します。
 従来は、契約は紙媒体で行われてきましたが、電気通信技術の発達、企業取引の迅速性のニーズの高まりなどから、契約を電気通信で行う電子契約が増えてきました。

 紙媒体での契約では、契約書の偽造を防いだり、本人が内容に納得したことなどを証拠として残したりするために、実印などの印鑑を当事者双方が押します。
 電子契約では印鑑を押すことができない代わりに、秘密鍵(数百桁の数字など)を電子データに付与して暗号化し、電子証明書(公開鍵)と一緒に相手方に送信します。データを受信した相手方は、その電子署名が本人によりなされたものであるかどうかを、認証事業者に問い合わせることで確認した後、公開鍵を使って文書を復元します。

総務省「認証業務とは」

出典:総務省「認証業務とは」(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/ninshou-law/pdf/090611_1.pdf)

 このようなステップを踏むことで、その電子署名が付された電子データが改ざんされていないことや電子データを本人が作成したこと(≒契約内容に合意していること)がおおよそ立証できるような仕組みになっているのです(「厳密には本人性の立証ができていない」という指摘もあります)。
 なお、これらの電子署名については、平成12年に電子署名及び認証業務に関する法律(通称「電子署名法」)が施行され、電子署名の方法やその証明力などが条文で定められています。

2 電子委任状とは

 前述の電子署名法に加え、平成29年の国会で「電子委任状の普及の促進に関する法律」が成立しました。この法律は、電子契約における代理権も電子で証明できるようにするための整備を目的としています。

2-1 委任状の果たす役割とは

 企業間の取引は、あくまで企業同士が当事者となって締結されます。そのため、契約書には企業を代表する権限を有する代表取締役の印鑑が必要になるのです。
 もっとも、交渉に当たる担当者に契約を締結する権限、すなわち代理権があれば、いちいち代表取締役の印鑑を押さなくても適法に契約が成立します(逆に、代理権がないまま担当者が勝手に契約してきても、それは無権代理となって無効です)。このような代理権を証明するのが委任状の役割です。

2-2 電子委任状の仕組み

 電子委任状の場合でも、紙媒体での委任状と同様に、適法に代理権を授与したことを証明する機能が重要です。

 まず、企業の代表取締役が、担当者に対して代理権を授与します。次に、代表取締役は、担当者に代理権を授与したことを電子委任状取扱事業者に登録します。
 企業の担当者は、相手方と契約内容の交渉を行い、代理権の範囲内であれば、そのまま上長の決裁を改めて受けることなく契約を締結することができます。取引の相手方は、あらかじめ電子委任状取扱業者から電子委任状を取得し、その担当者が締結しようとしている契約が代理権の範囲内かどうかを確認することができます。

総務省「『電子委任状取扱業務』のイメージ」

出典:総務省「『電子委任状取扱業務』のイメージ」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000513140.pdf)

2-3 代理権授与の際の注意点

 担当者への代理権授与、電子委任状取扱事業者への登録の際に重要なのは、代理権の内容について、次の点を明確にしておくことです。

    代理権授与の際に明確にすべき事項

  1. ・委任者
  2. ・受任者
  3. ・代理権の具体的な内容
  4. ・代理権の制限の有無(有れば社長決裁が必要であるなど)
  5. ・代理権の有効期間
  6. ・その他代理権に関係する事項

 代理権の内容や範囲が不明確になっていると、契約の相手方が誤信し、思わぬトラブルを巻き起こすおそれが出てきます。例えば、30万円を超える取引については上長の決裁が必要であるのに、それを委任状に登録し忘れていると、担当者が30万円を超える取引を勝手にしてきてしまった場合、決済が必要であると知らなかった相手方との間では契約の無効(無権代理)を主張できなくなってしまいます。

3 まとめ

 以上、今回は電子契約と電子委任状について解説しました。
 まだまだ紙媒体での契約も多い上、電子契約や電子委任状を用いる場合には専門の業者への登録等が必要になってくるため、始めるときは正直言って少し面倒です。ですが、これらを上手く使いこなせば、取引の迅速性は格段に飛躍するものと見込まれますので、気になる事業者の方は取り入れてみてもいいかもしれません。

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