著作権者が不明な場合は著作物は使えないのか!?

 他人が創作した著作物を利用する際には、事前に著作権者の許諾を得る必要があります。
 しかし、特にインターネットの世界では、誰が著作者であるか不明な著作物も多く流通しており、IT・EC事業者の方も「この著作物を利用したいが、著作者が不明だから、勝手に使うのは危険かもしれない」とお悩みになったこともあるかと思います。
 このように、著作者が不明な著作物を利用する際には、どのようにすれば良いのでしょうか。
 今回は、著作者が不明な場合に使える、裁定制度を解説します。

1 著作者から受けるべき許諾について

 まず、前提として、誰から利用許諾を受ければ良いかを確認します。

 著作者が、ゼロから一人で創作した著作物であれば、著作者は1人ですので、その著作者から許諾を受ければ足ります。
 これに対して、ある人が創作した著作物に、別の人が新たな創作性を加えて完成させた著作物(これを「二次的著作物」といいます。例えば、マンガを原作としたアニメなどがあります。)の場合、元の著作物の著作者と、新たに創作性を加えた著作者の2人から、それぞれ許諾を受ける必要があります。

 また、著作者が第三者に著作権を譲渡している場合には、譲渡を受けた者から許諾を受ける必要があります。
 もっとも、著作者が著作物について取得する著作者人格権は譲渡できませんので、著作者の氏名を表示するかどうかについては、譲渡する前の元々の著作者から許諾を受けなければなりません。
 著作者が著作権と著作者人格権の2種類の権利を有していることについては、こちらの記事(著作物利用許諾契約と著作権譲渡契約の違いとは!?)をご参照ください。

2 裁定制度とは?

 裁定制度とは、著作者や著作権者の許諾を受けられない場合にも、著作物を適法に利用することができるようになる制度のことをいい、著作権法で規定されています。
 以下で、概要と要件を解説します。

2-1 裁定制度の概要

 前述のように、著作物を利用する際には、前もって著作者・著作権者の許諾を受ける必要があります。
 ですが、著作者が不明な著作物については、誰に連絡をすれば良いのかすら不明なので、許諾を受けることができません。
 この場合には、一定の要件を満たしているときに限って、文化庁長官の裁定を代わりに受けることで、著作物を利用できるようになります。

 このように、要件さえ満たしていれば、文化庁長官による強制的な裁定を受けて著作物を利用できるようになるため、裁定制度は「強制許諾制度」とも呼ばれます。
 要件は、著作権法の条文で定められています。

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第67条 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。
2 (略)

 いくつか要件があるので、以下で細かく見ていきます。

2-2 著作物についての要件

 上記のうち、「公表された著作物」とは、著作者等が適法に公表した著作物をいいます。一方、「相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物」とは、公開されているが、誰が公開したのかが不明な著作物のことをいいます。

2-3 著作権者と連絡することができない場合とは

 著作権者が誰であるか不明な場合や、誰が著作権者であるかは判明しているが、どこにいるか不明な場合には、連絡をしても許諾を受けることができません。

 どのようなことをすれば「連絡ができない場合」に該当するかについては、著作権法施行令に詳細が決められています。

(著作権者と連絡することができない場合)
第7条の7 法第六十七条第一項の政令で定める場合は、著作権者の氏名又は名称及び住所又は居所その他著作権者と連絡するために必要な情報(以下この条において「権利者情報」という。)を取得するために次に掲げるすべての措置をとり、かつ、当該措置により取得した権利者情報その他その保有するすべての権利者情報に基づき著作権者と連絡するための措置をとつたにもかかわらず、著作権者と連絡することができなかつた場合とする。
一 広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料を閲覧すること。
二 著作権等管理事業者(著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。)その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者に対し照会すること。
三 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法により、公衆に対し広く権利者情報の提供を求めること。
2 (略)

 著作権等管理事業者には、音楽の著作物関連ではJASRACなどが登録を受けています。
 文化庁HPに一覧が掲載されています。

2-4 具体的な手続はどうすれば良いのか

 文化庁長官に対して上記の裁定の申請書を提出する必要があります。
 文化庁で公開されている申請書ひな形では、下記の項目が記載されています。

    申請書の項目

  1. ・著作物の題号
  2. ・著作者名
  3. ・著作物の種類及び内容又は体様
  4. ・著作物の利用方法
  5. ・補償金の額の算定の基礎となるべき事項
  6. ・著作権者と連絡することができない理由
  7. ・著作権法第67条の2第1項の規定による著作物の利用の有無

 まず、利用をしたいと考えている著作物を特定する必要があります。そのため、申請書には、題号、著作者名、種類等を記載しなければなりません。
 次に、著作者が判明している場合にはその著作者名も記載します。

 補償金とは、著作物の利用するに当たって、ライセンス料の代わりとして申請者が法務局に納める(供託する)金銭のことをいいます。補償金の金額は、「この著作物のライセンス料が決められるとしたらいくらくらいになるか」という観点から、著作物の種類や利用期間に応じて決められるので、ある程度高額な補償金を納めなければならないケースもあります。

 著作権法第67条の2第1項の規定による著作物の利用とは、文化庁長官の裁定が出る前から利用したい場合に申請します。
 特に、「どうしてもこの日までに適法に著作物を利用できるようにしておきたい!」とお考えの場合には重宝する制度であるとはいえます。

3 まとめ

 上記で要件を解説しましたが、基本的には、裁定制度は使い勝手の良くない制度です。
 まず、申請するに当たって、申請者側で著作者を探す努力をしなければならず、しかも中途半端な探し方では法律上の要件を満たしたとの判断を受けることはできません。
 また、補償金の金額が不明瞭であるのもネックです。

 だからといって、事業場の必要性からどうしても著作物を利用したい場合に、「著作者が不明だから」という理由で無断で利用すると、途中で著作者が現れ差止請求を受けるリスクがあります。
 そのような事態になるよりは、コンプライアンスに配慮して裁定制度を用いた方が安全ではあります。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

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