社内でソフトウェアを複製・コピーする際の著作権法上の注意点

著作物を著作権者に無断で複製、コピーすると、複製権侵害になります。そのため、ソフトウェアをコピーする行為も、複製権侵害に該当します。
ですが、一定の場合に限り、例外的に、複製権侵害にならない場合があります。今回は、会社でソフトウェアをインストールする際に知っておくべき、ソフトウェアの複製権侵害の内容と、例外的に侵害にならないパターンについて、解説します。

1 ソフトウェアの著作権

著作物は、作成者の何らかの個性が表現されているものをいいます(著作権法2条1項1号)。
ソフトウェアは、作成者がオリジナリティを発揮して作成したプログラムが含まれていますので、基本的にソフトウェア全体がプログラムの著作物であると考えられます。

したがって、著作権者に無断でソフトウェアを複製することは、複製権を侵害する行為に該当します。

2 ソフトウェアの複製とは

複製とは、著作物を「有形的に再製すること」と定義されます(著作権法2条1項15号)。
「有形的に再製」とは、物に固定された状態で、著作物の同一性を維持したまま新たに著作物を作り出すことをいいます。

そのため、ソフトウェアをCR-Rにコピーする行為だけでなく、パソコンのハードディスクにコピーする行為(インストールする行為)、サーバーにアップロードして保存する行為のいずれも、「複製」に該当することになります。

3 例外的にコピーが許されるパターン①(ライセンス)

市販されているソフトウェアには、1つのパッケージを購入すれば、複数のデバイスにインストールできるとされているものがあります。

これは、法律的に見れば、ソフトウェアの著作権者が、最初から一定の複製行為を許諾している、つまり購入者に対してライセンスを付与していることになります。

1回しかインストールが許されていないパッケージよりも値段は張りますが、インストール1回あたりの値段は安く設定されています。
著作権の観点からは、複数のデバイスを利用することが分かっている場合は、複数回のインストールが許諾されているパッケージを購入して使うのが、もっとも安全です。

4 例外的にコピーが許されるパターン②(バックアップ)

1回しかインストールが許されていないパッケージでも、著作権法上、複数回のインストールが認められるパターンがあります。

著作権法第47条の3 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において実行するために必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができる。ただし、当該実行に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2 (以下略)

わかりやすくまとめると、以下の通りです。

①プログラムの著作物の「複製物の所有者」であること
②自ら当該著作物を電子計算機(パソコン)において実行するためであること
③その実行のために必要な限度での複製であること
という要件を満たす場合には、著作権者の許諾を得ることなく複製することができます。

この規定は、バックアップをとることも複製権侵害になるのは不都合だ、と考えられて創設されたものですので、バックアップをとるためにプログラムをCD-Rにコピーしたりサーバーに保存する行為に適用されます。

もっとも、当然ではありますが、この規定は正規品を複製した場合のものであり、違法複製物(違法ダウンロードも含みます)を複製したとしても、この条文の適用はありません。
また、サーバーに保存した場合に、第三者がこれにアクセスできるようにすると、要件②や③を満たしませんので、原則通り複製権侵害となります。

5 例外的にコピーが許されるパターン③(私的使用)

前述のバックアップとも関係しますが、プログラムの複製が許されるパターンとしては、「私的使用のための複製」もあります。

著作権法第30条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 (中略)
二 技術的保護手段の回避(中略)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
2 (以下略)

家庭内などの限られた範囲内で使用する場合には、無断で複製がされたとしても著作権者に与える経済的ダメージは少なくて済みます。そのため、家庭内などの限られた範囲での複製は、複製権侵害にならないとされているのです。

この趣旨からすれば、会社で使用するプログラムやソフトウェアを、出張先で使うなどの限定的な場合にノートパソコンにコピーすることも、限られた範囲での使用のための複製ですので、著作権法30条1項により適法であると考える見解もあります。

もっとも、この見解はまだ裁判例では採用されてはいません。一般的には、会社の業務で使用するために著作物をコピーすることは私的使用のための複製には該当しない、つまり複製権侵害だと考えられています。過去の事例では、社内で他人の著作物を無断コピーして損害賠償請求を受けた会社もあります(東京地方裁判所昭和52年7月22日判決)。

この事案は、プログラムをパソコンにインストールしたのではなく、他人の著作物である設計図を無断で複製したというものでした。裁判所は、私的使用目的のための複製であることを否定し、設計図の使用を許諾するときのライセンス料が通常5%であるとして、被告に600万円の支払を命じました。

このように、著作権者に無断で著作物を複製し、会社内部で使用すると、高額な損害賠償請求を受けるおそれがあります。なお、さらに別の事案では、権利者から警告を受けた後に正規のソフトウェアを購入したとしても、著作権侵害は否定されないとしたケースもあります。

6 まとめ

以上、今回は、会社内部でソフトウェアをコピーする行為の著作権法上の問題点について解説しました。
テレビCMや駅などの掲示板でも注意喚起がされているように、ソフトウェアを複製することは違法な行為です。会社内部で行われている違法コピーが外部に通報される、というケースも出てきています。
事業者の方は、ソフトウェアの使用についてもきちんとライセンスを遵守するようにしましょう。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

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