事業者の皆さまは、自社で作成したデザイン等の成果物についての知的財産権を有効に活用できていますでしょうか。
 今回は、知的財産権戦略を進める上で押さえておくべき著作権、意匠権、商標権の特徴と違いについて解説します。

1 著作権について

 まず、もっとも身近であり、ニュースなどでも取り上げられることの多い著作権から解説します。

1-1 著作権制度の目的

 著作権は、創作者の個性が発揮された創作性のある著作物について生じる権利です。創作活動の結果生まれる成果物(著作物)に対する独占的な権利を与えることで、創作活動を促進させて文化の発展に寄与することが著作権制度の目的です(著作権法1条)。

1-2 登録の要否

 著作権は、著作物を創作した時点で自然に発生します。商標権や意匠権と異なって、特許庁などへの登録をする必要はありません。
 一応、著作者の氏名などを文化庁に登録する制度はありますが(著作権法75条以下)、ほとんど使われておりません。

1-3 権利の内容

 著作者は、著作物について、著作権と著作者人格権を有します。

 著作権とは、著作物を第三者が無断で複製、翻案、譲渡、公衆送信などをすることを禁止できる権利です。著作者人格権は、無断での公表、改変を禁止し、著作物に著作者氏名を表示するか否かを決められる権利です。

 第三者が無断でこれらの行為をした場合、著作者は、当該第三者に対して、その行為の差止請求(著作権法112条1項)をすることができ、著作権侵害行為によって損害が生じた場合には損害賠償請求をすることもできます(民法709条)。

1-4 著作権の特徴

 意匠権や商標権は特許庁の登録証などによって容易に自己が権利者であることを立証できますが、登録制度があまり利用されていない著作権の場合、実務上、権利の有無が大きな争点になりやすいです。
 著作権者が著作権侵害訴訟を提起した場合には、その者が本当に著作権者なのかどうかがよく争われますが、原告が著作権者であることを立証できずに敗訴する事例もままあります。

2 意匠権について

 次は、著作権と同様にデザインを保護する権利である意匠権について解説します。

2-1 意匠権制度の目的

 意匠は、新規性のあるデザインについて使用する権利の独占権を与え、デザイン活動を活発にさせ、産業を発達させることを制度目的としています(意匠法1条)。

2-2 登録の要否

 意匠権は、著作権と異なり、特許庁に登録をしてはじめて生じる権利です。ただし、特許庁での登録が認められるためには、デザインに創作性と新規性がなければなりません。新規性というのは、出願前にそれと同一又は類似の意匠が存在しないことをいいます。また、反復生産できる量産品についてのデザインである必要もあります。

2-3 権利の内容

 登録意匠の意匠権者は、その意匠を業として独占的に製造、使用、譲渡などする権利(「実施権」といいます)を有します。自分が登録した意匠そのものだけでなく類似の意匠についても実施権を有しますが(意匠法23条)、他人の意匠権と抵触する場合には実施できません(意匠法26条)。

 意匠を独占的に実施できるので、第三者が無断で登録意匠を実施している場合には差止請求をすることができます(意匠法37条1項)。損害が生じた場合には損害賠償請求をすることもできます(民法709条)。

2-4 意匠権の特徴

 意匠権を取得することで、その製品と同一デザインあるいは類似デザインの模倣品を第三者が販売等をすることを禁止できるため、意匠権は非常に強力な権利です。同じような効力を持つ著作権と比べて、自社に権利が有ることを立証しやすいのもポイントです。
 ただし、特許庁への登録が必要であるため、権利を取得するまでの手続が面倒です。

3 商標権について

 最後に、商標権について解説します。商標権は、主に事業で用いるロゴやキャッチフレーズなどを保護する権利です。

3-1 商標権制度の目的

 商標法は、商標を保護することで、その商標を使用する者の業務上の信用(ブランド価値)を保護して産業の発達に寄与することと、需要者(消費者)の利益を保護することを目的としています(商標法1条)。

3-2 登録の要否

 商標権も、特許庁への登録を受けてはじめて権利が生じます。ただし、単純な言葉だけからなるものや他の商標使用者の利益を害するものは登録を受けることができません(商標法3条、4条など)。
 また、ロゴやキャッチフレーズを登録する際には、どのような商品や役務(サービス)に用いるものなのかをあらかじめ指定しておかなければなりません(商標法5条1項3号)。

3-3 権利の内容

 商標権者は、登録を受けた商標について、出願の際に指定した商品や役務の範囲で使用する権利を独占的に有します(商標法25条)。そして、その指定商品・役務の範囲で商標を無断で使用する第三者に対して、差止請求(商標法36条)や損害賠償請求(民法709条)をすることができます。
 ただし、商標権の効力は、第三者が商標的使用(商品や役務の自他識別機能を害すること)に対してのみ及びます。詳しくは、商標的使用について解説したこちらの記事をご覧下さい。

3-4 商標権の特徴

 商標権は、他人が自社のロゴやキャッチフレーズ等を使用することを禁止する権利ですので、自社のブランド価値を守るのに最適な権利です。
 ただし、意匠権と同様に、特許庁への登録手続が面倒ではあります。

4 まとめ

 以上、今回は企業が扱う知的財産権として、著作権、意匠権、商標権の概要について解説しました。
 いずれも差止請求や損害賠償請求ができるようになる権利ですが、権利を保護する対象が異なっており、使い分けが求められています。

 企業が生み出すデザインやその他の成果物を知的財産権で保護する際に、どの権利で保護すれば良いかは、それぞれの特徴を踏まえ、適切に判断していくことが重要です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

この著者の最新の記事

関連記事

運営者情報

IT・EC特化型リーガルパートナー

お気軽にお問い合わせ下さい

ページ上部へ戻る