著作物利用許諾契約と著作権譲渡契約の違いとは!?

 他人が創作した著作物を事業で利用するには、著作物の利用の許諾を受けるか、著作権の譲渡を受ける必要があります。以下では、許諾契約と譲渡契約の意義と相違点を解説していきます。

1 著作者の有する2種類の権利

 著作物の利用の許諾を受ける契約と譲渡を受ける契約の違いを押さえるためには、まず著作者が有する2種類の権利を把握しておかなければなりません。

 著作物を創作した著作者には、著作権と著作者人格権の2種類の権利が発生します。
 複製権や譲渡権、公衆送信権などの著作権は、金銭で評価することが馴染みやすい財産権ですので、著作者は他人に譲渡することができます(著作権法61条1項)。一般に「ライセンス契約」と言われるのは、この著作権の許諾をする契約のことをいいます。

 一方で、著作者人格権は譲渡することはできないと考えられています(著作権法59条)。著作者人格権は、同一性保持権(改変されない権利)、公表権(世間に初めて公表する権利)、氏名表示権(作成者の氏名を表示する/しないを決める権利)などのように、個人的なこだわりを保護する権利(法律的には「一身専属的な権利」といいます)ですので、他人に譲渡することはできないと考えられています。
 そのため、契約においては、著作者人格権を行使しないという条項を入れることが多いです。そうしないと、著作権は許諾したのに、世間に公表したことが公表権侵害であるとして差止請求ができるようになってしまい、契約を締結した目的を達成できないからです。

2 著作物利用許諾契約とは

 著作権を譲渡せずに、一定の範囲で他人に利用を許諾する契約のことを著作物利用許諾契約といいます。
 以下では、著作権の利用を許諾する側をライセンサーといい、許諾を受ける側をライセンシーといいます。
 

2-1 通常のライセンス契約とは

 一定の範囲で著作物の利用を許諾する類型の利用許諾契約では、どの著作物を、どの範囲で利用できるのかを明確に定めておくことが重要です。特に、以下の条項は必須項目といえます。

    ライセンス契約における契約条項

  1. ・誰と誰の間の契約か
  2. ・どの著作物についての契約か
  3. ・許諾を受けた者は著作物をどの範囲で利用できるのか
  4. ・利用できる期間はいつまでか
  5. ・利用の対価(ロイヤルティ)はいくらか
  6. ・著作者は著作者人格権を行使しない(著作者人格権不行使特約)

 上記の条項のほかにも、契約当事者間で当該ライセンス契約に関する取り決めを盛り込むことも一般的です。例えば、ライセンス契約の存在や内容という秘密を他人に漏洩しないこと(秘密保持条項)、契約違反をした場合の損害賠償義務(違約金条項)、許諾にかかる著作権が他人の権利ではないことを保証すること(表明保証条項)などがあります。

2-2 独占的ライセンス契約とは

 独占的ライセンス契約とは、上記の通常のライセンス契約の条項に加えて、ライセンサーがほかの人には著作物の利用を許諾しないことを約束するという条項を入れた契約のことをいいます。つまり、ライセンサーAがライセンシーBとの間で独占的ライセンス契約を締結した場合、その後AがCとの間でライセンス契約を締結することは、Bに対する債務不履行になるのです。

 独占的ライセンス契約は、ライセンシーの方がライセンサーより優位に立っている場合や、事業戦略的な観点から独占的ライセンス契約を締結しておくべき場合に締結されることが多いです。
 もっとも、ライセンサーは他人に許諾することができなくなるという大きなデメリットが生じますので、利用の対価(ロイヤルティ)は通常のライセンス契約に比べて高額になります。

2-3 独占的ライセンス契約の注意点

 独占的ライセンス契約の条項で重要なのは、独占的であることを明らかにする条項です。
 独占的かどうかが不明確な場合、ライセンサーは他人にも許諾をしてしまうことがあり、独占的であると考えて事業計画を立てていたライセンシーに不測の存在が生じるリスクがあります。
 また、ライセンサーの方では独占的ではないと考えて他人にも許諾したところ、突然ライセンシーから契約違反だと言われてしまうおそれがあります。
 このように、独占的であるかどうかは、ライセンサーとライセンシーの双方にとって重大な関心事ですので、契約条項では明確に定めておくことが必須です。

3 著作権譲渡契約とは

 上記の著作物利用許諾契約と異なり、著作権譲渡契約は、そもそも著作権を他人に譲渡する契約のことをいいます。

3-1 著作物利用許諾契約との違い

 著作権の譲渡を受ける者が著作権を行使できるようになる点では、譲渡契約は利用許諾と同じです。
 しかし、著作権を譲渡した側は、許諾した側(ライセンサー)と異なり、基本的にはその後は著作権を失います。つまり、原則として、自分で著作物を利用することはできませんし、他人に許諾することもできなくなります(ごくまれに、著作者が複数の者に二重譲渡するケースもありますが)。

 ちなみに、著作物を譲渡したからといって著作権も譲渡したことにはなりません。つまり、著作者Aが著作物の絵画の所有権をBに譲渡したからといって、Bが絵画を無断で複製できることにはならないのです。
 これは、著作権と所有権は別個の権利であるため、それぞれについて契約で定める必要があるからです。

3-2 譲渡される権利の取扱いに注意!

 前述のとおり、著作者であっても著作者人格権を譲渡することはできません。そのため、譲渡できる権利は著作権となります。
 もっとも、著作権であればいかなる権利も譲渡できるので、「包括的著作権譲渡契約」のように、すべての著作権を譲渡する旨の契約も多く見られます。
 
 ただし、著作権譲渡契約においては、譲渡する著作権の中に翻案権(著作物を改変できる権利。著作権法27条)や二次的著作者の有する権利(著作権法28条)も譲渡した旨を明記しないと、それらの権利は著作権者に留保されたままである(=譲渡されていない)と推定されます(著作権法61条2項)。これは、翻案権が著作物を改変できる強力な権利であり、著作権者の予想に反して著作物を利用される危険が大きいことから、必ず契約条項に明記しておくべきであるとされているのです。明記が必要なのは、部分的な譲渡契約でも包括的著作権譲渡契約でも同様です。

4 まとめ

 今回は、著作権の許諾契約と譲渡契約の総論について解説しました。
 基本的に、通常の許諾契約→独占的許諾契約→譲渡契約の順番で、著作権の許諾や譲渡を受ける側に有利になっていきます。もっとも、どのような契約を締結するかは、著作物の種類・性質、両当事者の関係性、事業や資金の計画などのビジネスジャッジによって変わってきますので、著作権ビジネスに詳しい専門家のアドバイスがあると心強いでしょう。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

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