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中古品販売のために古物商(古物市場主)の許可を得た後の基本的ルール【古物商を規制する法律】
当サイトでは、ECサイト(IT取引)によって中古品を販売するには「古物商」等古物営業の許可が必要ですよという記事を書きました。今回は、許可を取った後に、古物商・古物市場主はどのようなルールを守りながら、ビジネスを展開する必要があるかを書きたいと思います。
1 古物営業法の目的
古物営業の許可について詳細に書いた記事にも書きましたが、中古品を販売するためには、古物商や古物市場主の許可を得る必要があります。
なぜ、中高品の販売に許可を必要とするかというと、中古品には盗品が混ざる可能性があるので、ちゃんと許可を取った人だけに販売等する権利を与えて盗品の発見を容易にしようということです。また、発見を容易にすることで転売目的の窃盗を失くそうという目的もあります。なので、許可を与えるのが公安委員会なんです。
このような目的で中古品の販売に許可が必要とされている以上、許可を得た後も、法律は一定の規制をかけています。以下、この規制の基本的なルールを書きたいと思います。
2 標識の提示
2.1 一般的な標識提示
まず、古物商は営業所・露店、古物市場主は古物市場の、人の目につき易い場所に、標識を掲示しなければなりません(古物営業法12条、同施行規則11条)。標識はサムネイル画像のように設置する必要があります(○○商の○○の部分は、取り扱い古物の種類(「美術品商」「衣類商」「時計・宝飾品商」「自動車商」「オートバイ商」「自転車商」「写真機商」「事務機器商」「機械工具商」「道具商」「皮革・ゴム製品商」「書籍商」「チケット商」)によって異なります。)
自分で作成しても良いですし、各県で2千円程度で購入することも可能です(許可申請時に窓口で相談すれば良いでしょう。窓口についてはこちらの記事参照。)
2.2 ECサイト(IT取引)の場合の標識提示
ECサイト(IT取引)の場合には、取扱い古物に関する事項とともに、その氏名又は名称、許可をした公安委員会の
名称及び許可証の番号を、サイト上に表示しなければなりません。
これについてもお客さんが一般的に見やすい場所に、見やすい大きさで提示する必要がありますので注意して下さい。
3 管理者の選任
次に古物商・古物市場主は、営業所又は古物市場ごとに、その営業所又は古物市場に係る義務を適正に実施するための責任者として、管理者一人を選任する義務しなければなりません(古物営業法13条)。
なお、法律は、その管理者に対して、取扱い古物が不正品であるかどうかを判断するために必要とされる一定の知識、技能又は経験を得させるよう努力するように規定しています。あくまでも努力義務という形をとっています(しなかったからといって違法になるわけではない。)が、管理者にそのような能力を得させることは、古物営業活動自体にプラスに働くし、管理者のモチベーションアップにもつながりますから、できる限り実践してみましょう。
4 仕入先等の身分確認
さて、古物営業法は、古物商に対して、一定の取引関係がある者については身分確認をしなければならないとしています。「1」で記載した古物営業法の目的からもわかるように身分を確認させて、盗品の流通経路等を補足しようというものです。
4.1 誰の身分を確認しなければならないのか?
古物商は、古物の「買い受け・交換」や「売却・交換の委託」を受ける場合には、相手方の真偽を確認する措置をとらなければならないとされています(古物営業法15条)。条文を見るとわかりにくいのですが、基本的に「仕入れ」をする場合には、仕入先の身分を確認しなければならないと考えて下さい。
4.2 身分確認をしなくても良い場合
原則として、仕入れ先の身分確認をしなければならないのですが、
○自分で一度売却したものを買い受ける場合
には身分確認は、例外的に不要となります。
これは、対価が小さい場合には窃盗を助長する可能性は低いですし、許可を得てルールを守らなければならない古物商自ら売却したものであれば盗品でない可能性が高いと法律は考えているからです(もちろん手続きの煩雑さ解消という面もあります。)
4.3 1万円未満でも確認が必要となる例外のさらに例外
ただし、代金の総額が1万円未満であるとしても
② 家庭用コンピュータゲームソフト
③ 光学的方法により音又は影像を記録した物(CD・DVD等※カセットテープ、ビデオテープ、FD、MD、フラッシュメモリは対象外です。)
④ 書籍
については、仕入先の身分確認が必要です。これらの商品は、一般に盗品が流通してしまうケースが多いものなので、法律は、1万円未満であっても身分確認をしなければならないというルールにしているのです。
4.4 身分確認の方法
身分確認の方法としては、
(自動車運転免許証、被保険者証等の提示を受ける。)
② 相手から住所等が記載された文書の交付を受ける。(面前で署名したものに限る。)
③ 相手から住所等が記された電子署名付き電子メールの送信を受ける。
④ 相手に本人限定受取郵便等により古物の代金を送付する契約をする。
⑤ 相手から住民票の写し等の送付を受けて、そこに記載された本人の名義の預貯金口座に古物の代金を入金する契約をする。
⑥ 相手から本人確認書類(運転免許証、国民健康保険者証等)のコピー等の送付を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめ、あわせてそのコピー等に記載された本人名義の預貯金口座等に代金を入金する契約をする
等の方法があります。他にも認めらた方法があるのですが、ここではこの辺りを紹介しておきます。
4.5 ECサイト(IT取引サイト)で、最適な確認方法
ECサイト(IT取引サイト)の運営者は、仕入れ自体もネット上でするという場合もあるかと思いますので、ここではネット上で仕入れをする場合に具体的にどのような方法がより簡便かつ確実な方法かを書きたいと思います。具体的な状況、設備、人材等により、上で書いた他の方が良いという場合もありますので、これは私のおすすめということで読んでいただければと思います。
4.5.1 1回目の取引
「4.4」で記載した「④ 相手に本人限定受取郵便等により古物の代金を送付する契約をする。」方法が良いのではないかと思います。このような契約にすることについては、しっかりと利用規約を活用して契約内容になるように配慮してください。詳細はこちらの記事をご覧ください。本人限定郵便とは何かについてはこちら(日本郵便)をご覧ください。
4.5.2 2回目以降の取引
2回目以降の取引では、一度確認をしているので、それを活かさない手はありません。
IDとパスワードの送信を受けること等により、相手方の真偽を確認するための措置を既に取っていることを確かめる方法です。例えば、本人確認をした仕入れ先に、第三者に漏れない方法でID、パスワードを付与し、自身のホームページの入力画面から、それが入力されることによりログインでき、申込みを受け付けることができるようにするという方法等でOKです。
なお、記載された顧客情報と2回目以降の申込画面に入力された内容が異なるのであれば、再度、各二人措置をとる必要があるのでご注意ください。
5 帳簿等への記録義務等
次に古物営業法は、盗品の流通経路を補足するために古物商に取引についての記録義務を定めています。以下、どのような方法で、どのような場合に記録する義務があるのかを見ていきましょう。
5.1 記録の方法
古物商は、古物の売買や交換等により、古物を受け取り、又は引き渡したときは、所定の事項を帳簿等に記録しておく必要があります。これも盗品の流通経路を補足するために古物商に課された義務です。
具体的には、〇帳簿へ記載する、〇取引伝票の編綴、〇コンピュータへ入力のいずれかの方法で、以下の5点を記録する必要があります。
② 古物の品目及び数量
③ 古物の特徴
④ 相手方の住所、氏名、職業及び年齢
⑤ 相手方の身分を確認した方法
なお、帳簿等は、最終の記録をした日から3年間営業所等に備え付ける義務がありますのでご注意ください。
5.2 記録が必要な取引は!?
法律の規定(古物営業法16条)からすると、すべての取引(こちらは身分確認と異なり売却先についても)記録をしなければならないように思えるのですが、実はすべての関係法令を精査・整理しすると以下の場合にのみ記録義務が生じることになります。
5.2.1 仕入れの場合
仕入れの場合、身分確認の「4.2」、「4.3」のルールがそのままあてはまります。つまり、頭の整理のため他の言い方をすると(「4.2」、「4.3」と同じことをいっていますんで、そちらの方が理解しやすい方はそちらで理解して頂ければと思います。)
① 対価の総額(代金の総額)が1万円以上のもの
② 対価の総額(代金の総額)が1万円未満のもので、「いわゆるバイク、家庭用コンピュータゲームソフト、光学的方法により音又は影像を記録した物(CD・DVD等※カセットテープ、ビデオテープ、FD、MD、フラッシュメモリは対象外)、書籍
については、記録義務があります。
5.2.2 売却(売上)する場合
こちらは、身分確認とは異なり、
② 時計・宝飾品類
③ 自動車(その部分品で1万円以上のものも含む)
④ 自動二輪車及び原動機付自転車(その部分品で1万円以上のものも含む)
を売却する場合にも、記録義務が生じますので要注意です。
6 その他
6.1 許可証の携帯
古物商は、営業所を離れて取引を行う(行商といったりします。)場合やせり売りをする際には、許可証を携帯する義務があります。
また、古物商の代理人、使用人その他従業者についても行商従業者証というものを携帯させる義務もあります。
6.2 許可証の提示
古物商やその代理人や従業員は、行商をする場合において、取引相手から許可証等の提示を求められたときは、許可証等を提示する義務があります。
6.3 営業の制限
6.3.1 古物商の営業制限
古物商は、営業所又は取引相手の住所若しくは居所以外の場所において、古物を古物商以外の者から受け取る(仕入れる)ことができません。
6.3.2 古物市場における取引制限
古物市場においては、古物商間でなければ古物を売買し、交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けることができません。
6.4 名義貸しの禁止
古物商や古物市場主は、自己の名義をもって、他人にその古物営業を営ませることができません。つまり、名前だけ貸して他の者に中古品販売等をさせちゃいけないよということです。その古物商らに対して、許可を与えている以上、これを許したら許可制の意味がなくなるので、当然です。
6.5 業務営業用の変更に伴う届出
古物商や古物市場主は、営業内容等に変更があった場合、変更日から14日以内(登記事項証明書を添付すべき時は20日以内)に公安委員会に変更届出を提出しなければなりません。
7 まとめ
以上、長くなりましたが、古物商や古物市場主が守るべき基本的なルールを解説しました。
ECサイト(IT取引サイト)においても、中古品を販売することは多々あると思いますので、是非とも参考にして頂ければ幸いです。