懸賞・賞品・景品・割引き(値引き)等についての法律上の規制【景品表示法3条に違反する!?】

懸賞・景品

 当サイトでは、頻繁に景品表示法という法律がでてきます。やはり、インターネット取引中心の記事を書いていると広告問題とかかわりが強いので、広告を規制する法律の王様である景品表示法についての記事がどうしても多くなってしまいます。
 ただ、これまでの記事は、景品「表示」法の表示(つまり広告ですね。)に対する法律問題をとりあげるものでした。代表的なものは、広告の表示の規制について詳細に解説されているこの記事です。
 今回は、今までとは異なり、「景品」表示法の「景品」についての部分にフォーカスして記事を書いていきたいと思います。

1 景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)が求めていること

 景品表示法は、お客さんが「景品」に、惑わされて質の良くない物や割高な物を購入することを防止することや競合業者同士が商品やサービスではなく「景品」によって差別化を図ることは、本来の商品やサービスの質が低下するおそれがあることから、「景品」を商品やサービスにつけることに一定の規制をかけています。

(景品類の制限及び禁止)
景品表示法第3条  内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

この一定の規制なんですが、法律はこのように内閣総理大臣に規制方法を委任してしまっています。

それでは、どのようなことに対して、どのような規制がなされているのか具体的に見ていきましょう。
 なお、この法律に違反すると国から改善命令が出され、それを守らないと「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」になる等不利益があるのは、表示広告の場合と同様です(景品表示法15条)。

2 規制の対象となる「景品類」とは何か!?

 まず、規制の対象となる「景品類」とは何なのか。。では、法律を見てみましょう。

(定義)
景品表示法第2条  ・・・省略・・・
2  ・・・省略・・・
3  この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
4  ・・・省略・・・

 条文から分かることを整理すると

① 顧客を誘因するための手段として
② 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引に
③ (取引に)付随して
④ 経済上の利益を与える

ということを指してそうです。そのうちで、内閣総理大臣が指定するものとなっていますが、総理大臣の指定もこのようになっています。
 ただし、総理大臣の指定で、「正常な商慣習に照らして値引き・アフターサービスに過ぎない場合や商品・役務(サービス)の一環と認めれるもの」は含まないとしています。この点は、①~④の要件にもかかわるので、要件を検討する中で見ていきたいと思います。

 それでは、以下、各要件がどのようなものかを検討してみましょう。

2.1 ①顧客を誘因するための手段として

 この「顧客を誘因するための手段」か否かは、提供者の意図(心の中の)や名目によらず、客観的に顧客誘引のための手段になっているかで判断されます。
 つまり、親睦や儀礼のためになされたものであったとしても客観的にお客さんを誘因するような形になっていれば、要件を満たしてしまいます。また、既存顧客のリピート率を高めるためのものもここにいう「顧客を誘因する」にあたるので注意してください。

2.2 ②自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引

 「取引」には、自分が製造又は販売する商品について、最終需要者(お客さん)のところに届くまでのすべての流通過程が含まれます。また、当然ですが、「取引」には、販売のほかに賃貸・交換等の契約一般が含まれます。

2.3 ③(取引に)付随して

 次に、自分の商品に「付随」してとはどのような場合をいうのでしょうか。
 

2.3.1 「取引」が条件となっている場合

 この商品を購入して賞品がもらえる場合等については、当然に「付随」してといえます。
 

2.3.2 「取引」条件となっていない場合

 このような場合であっても

○ 商品の包装に懸賞等の企画内容を告知している場合
○ 商品・サービス購入により、懸賞に応募できる場合や懸賞クイズのヒント等が与えられて、賞品等を得ることが可能または容易になる場合
○ 自分の店等に入店した者に限定して、賞品等を渡す場合(ECサイト(IT取引サイト)では、無料会員になることを条件にする等)

であれば、「付随して」とされます。
 誰でも応募できる懸賞(例えば、ウェブ上でだれでも応募できるもの等)は当然、「付随」してとはなりません。
 また、商品・サービスの一環であると認めれるもの(宝くじの当選金、パチンコの景品、喫茶店の砂糖や容器包装等)は「付随して」とはいえません(法律からもそのように理解できますし、上記の通り、内閣総理大臣がそのように指定しています。)。

2.4 ④経済上の利益を与える

 「経済上の利益」は、提供側が出費を要しないで提供できる物品等や市販されていない物等であっても,提供を受ける者の側からみて,通常,経済的対価を支払って取得すると認められるものは,「経済上の利益」に含まれます。つまり、かなり広い範囲のものが「経済上の利益」に含まれるということになります。
 ただし、経済的対価を支払って取得するものでないものは除外されます(表彰状とかトロフィー等)。
 

2.4.1 正常な商慣習に照らして値引きと認められる場合

 上述の通り、内閣総理大臣の指定により、このような経済上の利益の場合には、景品表示法の規制は及ばないとされています。なので、適正な範囲で、「2つ以上買うと割引」としたり、同一商品やサービスを付加すること等も「正常な・・・値引き」といえ、景品表示法の規制を受けません。
 しかし、対価の減額であっても、懸賞による場合、減額した分の金銭の使い道を制限(旅行費用に充当される等)同一の企画において景品類を提供とを併せて行う場合(A商品かB賞品かを選択させこれを付加する等)は、ここにいう「値引き」にはあたりませんので要注意です。
 

2.4.2 正常な商慣習に照らしてアフターサービスと認められる場合

 例えば、PCを購入した場合に、「1年間無料サポートが付いてくる!!」といった場合には、正常のアフターサービスと評価できるので、これも内閣総理大臣の指定内容により、景品表示法の規制は受けないでしょう。
 

2.5 「景品類」にあたるかのまとめ

 以上の要件を備えていると「景品類」となります。ただし、「景品類」となったとしても、それが完全に禁止されるわけではなく、一定のルールを守るよう要求されるだけです。
 なので、以下そのルールをしっかり見ていきましょう。

3 規制の内容(「景品類」にあたる場合にどのようなルールを守らなければならないか。)

 それでは、次に「景品類」にあたり、景品表示法の規制の対象となるとしても、どのようなルールを守らなければならないのかを見ていきましょう。

3.1 一般懸賞

 商品・サービスの利用者に対して、くじ等の偶然性を利用したり、ある特定の行為の優劣又は正誤によって(例えば、パズルやクイズの正誤等)景品類を提供するものをいいます。
 この場合には、以下の第1.第2条件を満たさなければなりません。
 

3.1.1 第1条件(最高額)

○ 景品の最高額は10万円以内でなければなりません
○ 10万円以内であったとしても、懸賞を与える本来の取引(商品1つあたりの)の20倍の価格までとなります。(例えば、4,000円の商品を購入した場合にくじをすることができる場合は、景品の最高額は80,000円まで)

3.1.2 第2条件(総額)

○懸賞により提供する景品類の総額は、懸賞を与える本来の取引の売上予定総額の2%までです(例えば、1個4,000円の商品を200個販売する(4,000×200=800,000円)場合、このうち100個の商品の購入者に懸賞による100個の商品を与える場合には、懸賞であたる商品の総額は、(800,000円×0.2=)160,000円まで)。

3.1.3 一般懸賞まとめ

 一般懸賞の場合、「3.1.1」の第1条件と「3.1.2」の第2条件を満たせば、OK(懸賞しても問題ない)ということになります。

3.2 共同懸賞

 一定の地域や業界の事業者が共同して、懸賞により、「景品類」を提供するものをいいます。「3.1 一般懸賞」との違いは、提供者が共同であるかどうかです。
 この場合には、以下の第1.第2条件を満たさなければなりません。
 

3.2.1 第1条件(最高額)

○ 本来取引の商品1つあたりの金額に関係なく、景品の最高額は30万円となります。

3.2.2 第2条件(総額)

○ 売上予定総額の3%までです(計算方法は、「3.1.2」の例の0.2を0.3に直すだけです。)。

3.2.3 共同懸賞まとめ

 共同懸賞の場合は、景品の最高金額30万円(第1条件)で、景品の総額が売上予定総額の3%以内であれば、懸賞による景品の提供もOKということになります。

3.3 総付景品

 総付景品とは、懸賞によらず、商品やサービスを購入したり、来店したりした人にもれなく提供される景品類のことをいいます。例えば、商品・サービスの利用者全員に提供したり、申込み又は入店の先着順に提供する場合等です。
 この場合には、

○ 景品の最高額が、本来の取引価額(商品1つあたり)の2割の以内の金額
○ 上の2割以内の金額が200円未満の場合には、景品の最高額は200円

であれば、OKとなります。

4 まとめ

 以上、長々と景品表示法の「景品」についての規制を書いてきました。この規制は、「景品類」にあたる(「2」で書きました。)からダメというものではなく、あたる場合にはルールを守ってね(「3」で書きました。)というものです。
 ですので、景品を出す場合には、あまり慎重になり過ぎず、どの範囲なら許されるのかを考えて、柔軟にご対応いただければよいかと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

この著者の最新の記事

関連記事

運営者情報

お気軽にお問い合わせ下さい

ページ上部へ戻る