利用規約の変更にサイト利用者は拘束されるか!?【法律的に有効な利用規約変更の注意点】

利用規約の変更

 当サイトでは、EC(IT取引)サイトにおける利用規約についての記事を複数書いてきました(利用規約に関する記事の一覧)。これらのページでも書いている通り、利用規約というものは、最初から完璧なものではなく、EC(IT取引)サイトの実際の運営、ビジネスの経験等を通じて、より良いものに常にブラッシュアップしていくものです。そうすると、利用規約を変更する場面というものがでてくると思います。その際に、運営者側で利用規約を変更したとしても、その変更がお客さんに対して効力をもつのか。もたせるためにはどのような措置をとるべきなのでしょうか。今回は、この利用規約の変更を法律的に有効に行うための方法を買いていきたいと思います。


 なお、利用規約に関する記事の中でも、利用規約を契約内容にする方法に関する記事は、今回の記事の大前提となりますので、チェックしてみて下さいね。

1 利用規約を契約内容とするための原則

 まず、上でリンクを貼っている利用規約を契約の内容にするための記事のおさらいになってしまいますが、契約が成立するためには、お客さん(サイト利用者)の申込みと承諾者(サイト運営者)の承諾の意思の表示が合致する必要があります。
上記リンク先で説明している「事前確認要件」と「同意要件」がクリアーできれば利用規約の内容で両者の意思表示が合致したと認定できます。

2 利用規約の変更を契約とするには!?

 それでは、利用規約の変更をする場合には、どのような措置を講じれば、その変更部分についてサイト運営者とサイト利用者の意思表示が合致したといえ、変更部分も含めて契約内容となるのか検討してみましょう。

2.1 変更後の利用者(お客さん)との関係

 まず、利用規約の変更後にサイト利用者(お客さん)となった人との関係については、これは単純に利用規約の内容を契約内容にする場合と同じでいいですよね。
 つまり、申込時に変更後の利用規約だったのですから、そのお客さんにとっては、そもそも利用規約の変更というよりも、最初からその利用規約だったのですから、この記事を参考にすればOKです。 

2.2 変更前からの利用者(お客さん)との関係

 問題は、変更前からのサイト利用者(お客さん)との関係です。つまり、変更前からの利用者とは、一度当初の利用規約で契約が成立していますから、その変更を契約内容とするにはどうしたらいいかです。
 

2.2.1 最も確実な方法だけどなかなか難しい方法

 最も確実なのは、利用規約の変更について、利用規約を契約内容にする記事や「2.1」の場合と同様の方法で、改めて明示的に同意をとることです。そうすれば、その変更について、両者の意思表示に違いはないと認定できます。しかし、利用規約はブラッシュアップしていくべきものです。すべての利用規約変更の度に利用者全員に改めてチェックボックス等を利用してまで、確認をとるというのは、あまりにも煩雑であることは否めないです。実際上かなり難しいといえます。
 

2.2.2 実効性と法律のバランスをとった方法(黙示の同意)

 利用規約は、順次改良されていくものですし、多数のサイト利用者(お客さん)に統一されたサービスを提供するためには、利用規約の変更を契約内容とすることはマストです。そのような状況であることは、サイト利用者のみなさんも認識していることだと思います(実際はそうかどうかはわからないのですが、最近の法律的な考え方はこのようになってきています←実際上の困難さを回避する為にですが。。。)。
 そこで、チェックボックス等で変更についての明確な同意を得なくても、

①サイト運営者が、利用者に対して、利用規約の変更について十分告知(変更の事実を認識していたと認定できることと変更内容が適切に開示されていたことが必要です。)した上で、
②変更の告知後も利用者が異議なくサイトの利用を継続していた場合

には、黙示的に利用規約の変更に同意があると認定すべき場合があると考えられています。
 ただし、これは例示なのですが、その変更内容について

ⅰ 変更が一般の利用者に合理的に予測可能な範囲のものといえるか
ⅱ 変更が利用者に影響を及ぼす程度
ⅲ 法令変更への対応、利用者の不正・トラブル対応、条項や文章の整理といったようなサイト利用者が当然同意する内容かどうか
ⅳ 変更がサービスの改良や新サービスの提供等利用者にもメリットがあるものかどうか

等の内容によって黙示の同意がえられたといえるか影響をうけるでしょう。
ⅰ予測可能なら同意、ⅱ影響が小さければ同意、ⅲ当然同意する内容なら同意、ⅳ利用者にメリットがあるものなら同意があるとそれぞれ認定される可能性を強くしていきます。

3 まとめ(サイト運営者が具体的に取るべき措置)

3.1 サイト運営者として同意をとる方法

 以下、私のお勧めの方法を書きます。
 

3.1.1 サイト利用者に対して著しく不利益な変更内容の場合

 
 まず、利用規約の内容が、大幅な値上げ(いままで利用できていた重要な機能を使うのにさらにお金が必要となった場合等も含む)等、サイト利用者(お客さん)に及ぶ不利益がかなり大きい場合には、メールやログイン画面で再度同意の確認を取る方法がベターでしょう。この場合にも、どのような変更があるのかをしっかりと利用者がわかる形で表示した上で同意を取りましょう。ただし、上記の通り、本当に重大な変更の場合に限ります。そうしないと実際煩雑さ等を理由にサイト利用者(お客さん)が逃げていってしまうおそれがあります。
 

3.1.2 それ以外の場合

 それ以外の場合には、「2.2.2」の方法を取るべきだと私は思います。
その際には、変更内容の告知が利用者であれば必ず目にするであろうという場所に設置してください。
 ログイン画面やトップ画面でサイト利用者であれば必ず経由する場所に利用規約の変更とその変更内容を適切に開示しましょう。

3.2 変更履歴の保存

 また、利用規約を変更する際は、将来の紛争に備えて何月何日何時に変更された利用規約が掲載されたか、どのような変更があったかを残すようにしましょう。
 例えば、変更前と変更後に時刻が入るようにキャプチャをとっておく等の方法が考えれます。さらに満を持するとすると、履歴証明会社等あります例えばここ等様々あります。ただし、公的なサービスではないため、証拠としての力は第三者であるから、単に本人だけよりは強くなるねっていうていどですが。。。

3.3 いつでも「利用規約」を「変更」できる旨の規定を利用規約にいれておくのは!?

 最後に余談ですが、

(規約の変更)
第〇条 当社は、理由の如何を問わず本規約をいつでも自由に変更することができます。
 2 本規約の変更は、本サイトに掲載した時点より効力を生じるものとします。

的な規定って、けっこう利用規約に含まれていたりします。しかし、この規定の効力は正直疑わしいといわざるありません。あまりにも一方的な内容なので、無効と判断される可能性が高いです(詳細は、消費者契約法と利用規約の関係についてのこの記事等を参考にして下さい。)。
 ただし、このような利用規約を入れることも犯罪ではないので(無効な可能性は高いですが。。)、入れても良いかなと考えています。なぜかというと、お客さんが最初からこのような内容を認識していれば、利用規約の変更について不満に思うということが少なくなるかもしれないからです。
 しかしながら、実際に利用規約の変更をする際は、この規定の有無にかかわらず、しっかりと「3.1」のやり方を実践するようにしていただければと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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