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利用規約の法律的に有効な作り方【消費者契約法編】
- 公開日:2014/9/29 最終更新日:2016/07/18
- EC(IT)取引上の問題, サイト運営の開始, 利用規約
- 利用規約, 消費者契約法
当サイトでも、ECにおける利用規約の位置づけの記事や利用規約を契約内容にするため設置方法についての記事と、ECサイトの「利用規約」に関する記事を書いてきました。今回は、法律的に有効な利用規約を作成するという内容面について書きたいと思います。
今回は、EC(インターネット取引)に関連が強い法規である「消費者契約法」という法律の視点から書いていきます。
目次
1 消費者契約法とは
当サイトでも、「耳たこ」なぐらい書いている話ですが、契約(取引)に関する法律の王様は、「民法」となります。民法は、契約の基本を定めた法律です。その中には、「契約自由の原則」というものがあります。つまり、契約は、当事者(売り手と買い手)の自由な意思によりその内容を決定できるというものです。この大原則からすると、当事者の間で自由に契約内容を決定することができるのですから、利用規約の内容についてもお客さんが承諾さえすれば、何ら問題なくその内容で契約が成立するということになります。
しかし、すべての契約でこの契約自由の原則をあてはめるとあんまりよくないよね!?とされている分野があったりします。その部分に限定して、民法以外の法律で、この民法の契約自由の原則を修正しているんです(民法の特別法)。
そして、消費者契約法は、その代表格で、消費者(事業者でない個人)は、事業者(会社等)に比べて、契約に関する知識があるわけでもないし、その取引の対象となる商品(又はサービス)についても詳しいわけでもないんだから、無条件に契約自由の原則を適用すると不利益が生じてしまうかもしれないので、契約内容に一定の規制をしましょうという法律なのです。
つまり、消費者契約法とは、「消費者」と「事業者」との契約において、「消費者」をちょっと有利に扱おうという法律です。いわゆるBtoCビジネスをするECサイト運営者にとっては、重大な関わりをもつ法律となります。
2 利用規約作成上留意すべき消費者契約法の具体的規制
それでは、消費者契約法の概要がわかったところで、具体的にどのように契約自由の原則が修正されるのか。「利用規約」作成にあたって考慮しておいた方が良い規定を見てみましょう。
2.1 サイト運営者の責任を制限する条項についての規制
消費者契約法8条は、事業者が契約内容を守れなかった場合(債務不履行)、事業者の行為によって消費者に損害を与えてしまった場合(不法行為)や契約の目的物(商品やサービス)に欠陥があった場合(瑕疵担保責任)における事業者(サイト運営者)の責任を制限する契約を規制しています。契約書に「もしこの約束を守れなくても当社は責任を負いません。」という意味のものって結構あったりするんですが、これは無効ですよといっているのです。具体的にどのような条項が無効になるかというと
② 当該事業者の故意(わざと)・重過失(明らかなミス)がある場合であっても、当該事業者(サイト運営者)の責任の一部を免除する条項(消費者契約法8条2号、4号)
です。
2.2 キャンセル料等の金額についての規制等
消費者契約法9条は、消費者(お客さん)が、契約を解除(キャンセル)したり、約束通りにお金を支払わなかった場合の約束(条項)について、規制をしています。
2.2.1 契約解除料金(キャンセル料)についての規制(消費者契約法9条1号)
契約書や利用規約を見てみると、よくある規定が「お客さんのご都合で、キャンセルをされる場合には、キャンセル料として料金の50パーセントをいただきます」という意味の規定があると思います。
消費者契約法9条1号は、このようなお客さんの契約解除に伴う料金(キャンセル料)について「同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」キャンセルを規定したとしても、当該平均的な損害額を超える部分についての条項は無効とすると定めています。
「平均的な」とかどうやって調べるんだよ!と思う方もいらっしゃると思いますが、目安でいうと、消費者(お客さん)からのキャンセル料で利益を得るということが禁止されているんだなと考えてもらえれば良いかと思います。
2.2.2 消費者(お客さん)が約束の期日までにお金を支払わなかった場合の利率の規制(消費者契約法9条2号)
次に、こちらも契約書や利用規約を見ると、「指定した期日までにご利用料金の支払いがされない場合には、年○○%の遅延損害金をお支払いただきます」という規定もよく目にするところだと思います。
消費者契約法9条2号は、このような支払いの遅延による利息は、年率で14.6%までしかとってはいけない旨、定められています。ですので、それを超えるような条項があったとしても、実際には14.6パーセントまでしか、請求することはできません。
2.3 消費者の利益を一方的に害する条項の無効
消費者契約法10条は、一般的な消費者(お客さん)の権利を制限したり、義務を加重する条項であって、消費者(お客さん)の利益を一方的に害する規約は無効であると定めています。少し民法の例で説明すると、民法は、何か事業者側が原因で契約の履行(商品を渡す等)が遅れた場合には、お客さんが一定の行為(催告・解除の意思表示)をすれば、契約を解除できる権利があるというルールを定めています。しかし、上記で見たように民法は契約自由の原則を採用していますので、当事者の約束で「1年たたないと解除できない」等の約束をすることも原則的には許されます。このように民法の規定には権利として定められていても、当事者の約束でそれを修正・排除できるものが多く存在します(法律的には、このように当事者の約束で修正できる規定を「任意規定」といいます。)。「2.1」や「2.2」も任意規定です。
つまり、消費者契約法10条は、そのような任意規定を修正する約束であっても、消費者を一方的に害するような約束は無効ですよと定めているのです。
「2.1」や「2.2」は、顕著に消費者(お客さん)に不利益となる類型なので、特に別途条文が設けられていて、それ以外の場合は、消費者契約法10条で個別にカバーして行きましょうというものです。
具体的には
② 一定期間に返答がなければ、消費者(お客さん)が同意したとみなすような規定(サイトの有料会員に対して、料金の値上げをする場合に、サイトでの告知等の周知行為がなくても、1週間以内に拒否するメールをサイト運営者に送らない限り、承諾したものとする規定等)
③ 消費者(お客さん)の法令上の権利の行使期間を制限する条項(民法では、契約の目的物(商品等)に欠陥がある場合には、1年以内であれば契約の解除や損害賠償ができると規定されている(民法566条)が、これを3か月にする規定等)
などが考えられます。
3 まとめ
以上、長々と説明してきましたが、要するに一方的に事業者(ECサイト運営者)に有利な規定は無効になりますよということです。この辺りは、普通にビジネスをして、どんな内容が公平かという視点をもって「利用規約」を作成して行けば良いかと思います。「利用規約」は、実際にビジネスをしている中で、少しずつブラッシュアップして行くものですので、今から「利用規約」を作成する人も、今ある「利用規約」をブラッシュアップする人もこの記事を参考にしていただけたら幸いです。