マッチングサイトでの返金クレームへの対処法【うまくマッチングされないとの理由によるサイト登録・利用料等の返金クレームについての法律関係】

返金くれーむ

 前回の記事では、マッチングサイト運営者がマッチングした者同士のトラブルに責任を負うのかというトピックについて解説しました。
 今回は、マッチングサイトを利用しているお客さんから、マッチングサイト運営者に対して、適切なマッチング相手が見つからなかったのであるから、サイト利用料や登録料を返金して欲しい旨のクレームが入った場合に、返金等をする必要があるのか否かについて書きたいと思います。

1 マッチングサイトの仕組み

 まず、前提として今回の記事が想定しているマッチングサイトの仕組みを簡単に解説したいと思います。
 マッチングサイトでよくある仕組みとしては、有料会員になったお客さんの出会いたい人の要望や条件等を登録して、サイト運営者がその要望や条件にあった別の会員を紹介するものや別の有料会員のプロフィール等を見て、お客さん自らマッチアップしたい会員に働きかけるというものがあります。
 いわゆる「出会い系」といわれるサービスとかは、まさにそれですよね。その他にも、プロのデザイナーが登録されていて、デザイナーに仕事を頼みたい人が利用して、仕事のマッチングするというサービスもたくさんあります。
マネタイズの方法は、サイトによって様々です。いわゆる「出会い系」とかですと、男性登録者は有料で、女性は無料とか、プロのデザイナーさんは登録料を有料にして、仕事を依頼する方は無料といった形で、ビジネスの広がり易さ等を考慮して、各サイトが様々な工夫をされています。このサービスを利用するには有料とか、このサービスは無料とか、本当にいろいろ設計されています。
 例えば、転職マッチングサイトであるビズリーチさんなんかは、従来求人をする会社がお金を払うという転職マッチング業界の定石を破り、ハイクラス求人に絞ったサービスを展開して、転職したい人から利用料を受け取る形のモデルで大成功していたりしますよね。

2 マッチングサイト運営者とお客さんの契約内容(希望のマッチングという結果についてまでサイト運営者は責任を負うのか)

 
 それでは、今回の本題である希望しているマッチングが実現されなかった場合に、有料のお客さんから登録料や利用料の返金を求められた場合、それに応じる必要があるのかについて入っていきましょう。

2.1 マッチングサイトサービス契約の法律上の分類

 マッチングサイトというのは、物等を販売するわけではなく、マッチングの機会を作るというサービスを提供しているもの(法律的には「役務の提供」なんていったりします。)です。やや大雑把ですが、このようなサービスを提供をしてその対価をもらう契約は、法律上、「雇用」(経営者に対して労働という役務を提供する)、「委任(準委任も含む)」、「請負」なんてものがあります。マッチングサイトの場合、マッチングサイト運営者とお客さんに主従関係や指揮命令関係があるわけではないので、「雇用」にはあたりませんので、「委任(準委任も含む)」なのか、「請負」かになります。

2.2 請負と「委任(準委任含む)」の違い

 「請負」というのは、ある一定の仕事の完成(結果)対して対価が支払われるという契約類型です。逆にいうと何かの仕事が完成しなければ、代金を支払う必要はないんです。例えば、家を建てる契約とかがこれにあたります。家を完成させることで初めて、大工さんたちはお金をお客さんからもらうことができるのです。
 一方、「委任」というのは、仕事の完成(結果)に対してではなくあくまでも「行為」の対価としてお金を支払うという契約類型をいいます。つまりは、結果がどうであれ、その行動等をしてくれたこと自体に対して代金を支払うんです。例えば、私たち弁護士の顧問契約なども委任になります。成果を得れたらお金を払うわけではなく、顧問として相談にのるという「行為」に対して、お金が支払われるからです。その他を見ると、お医者さんもそうですよね。病気が治ったことに対してお金を払うわけではなく、検診してくれたことにお金を払っています。
 それで、この請負と委任の違いと今回の記事の関連は!?というと。。。
もうお分かりの通り、マッチングサイトサービスが、「請負」ならば、お客さんの希望するマッチングという結果までサイト運営者は責任を負いますし、「委任」といえるならば負いません。つまり、「請負」ならお客さんの返金のクレームに応じなければならないし、「委任」なら負う必要はありません。

2.3 マッチングサイトは「請負」?「委任」??

 上記「1」で紹介したようなマッチングサイトの場合には、通常、希望する人と出会える可能性のある出会いの場をお客さんに提供するというサービス内容で、それに対してお客さんから利用料や登録料をいただくというものです。つまり、具体的に希望するマッチングを実現する(結果)に対して、お金をもらうというものではなく、出会いの場を提供する(利用させてあげる)という「行為」に対して、お金をもらっているのです。
ということは、マッチングサイト運営者とそのお客さんとの関係は、「委任(準委任含む)」ということになるんです。
 したがって、サイト運営者としては、上記のような希望のマッチングが果たされなかったから返金してくれとのお客さんのクレームに応じる必要はありません。

 ただし、利用規約の作り方等で、「マッチング実現に対して代金を支払う」等の請負のような記載をしていたり、マッチングの実現を保証する広告を出していたりすると、返金に応じなければならないということにもなりかねませんので、ここは注意してください。
 

3 まとめ(クレームへの対応方法)

 以上をまとめると、

マッチングサイトビジネスにおいて、マッチングが実現しなかったから登録料等を返金してくれとのクレームがお客さんから入ったとしても、マッチングの実現(結果)に対してお金をいただいているわけではないので、応じられない旨伝える

という対応をすることになります。一定数クレームがつくので、その人たちにはめんどくさいから返金してしまうというサイトもあるにはあるのですが、私としては、それはクレームを言った人だけが得をすることになってしまい他のお客さんに対して失礼ですし、お客さんが増えるほど実際に対応することが困難になってきます。
 ですので、ここは、はっきりと理由を説明して、丁寧にお断りするという対応をすべきです。 

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

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