プラットフォームサービスにおける特定商取引法に基づく表示義務
- 公開日:2019/3/7 最終更新日:2019/03/06
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IT事業を始める方の中には、いわゆる「プラットフォームサービス」を選ぶ方もいらっしゃると思います。
いわゆるマッチングサービスです。
新規に事業を始める際に、特定商取引法という法律の名前を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
特定商取引法は、プラットフォームサービスを提供するときにもかかわりのある法律です。
具体的には、プラットフォームサービスを提供するIT事業者は、「特定商取引法に基づく表示義務」を負うことになるのです。
- ・「特定商取引法に基づく表示義務」とは、そもそもどういうものなのか。
- ・プラットフォームサービスにおける「特定商取引法に基づく表示義務」とは何か
詳しく見ていきましょう。
目次
1 プラットフォームサービスにおける「特定商取引法に基づく表示義務」
「特定商取引法に基づく表示義務」は、「通信販売」をする一定の業者が負うものです。
プラットフォームサービスの提供も、法律上の「通信販売」に該当し、表示義務を負うことになります。
1-1 「通信販売」とは
特定商取引法 第11条
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。
(以下略)特定商取引法 第2条2項
この章及び第58条の19において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
法律では、上記のように、「通信販売」には、役務の提供も含まれるのです。
そして、「役務提供契約」とは、役務を有償で提供する契約をいいます(特定商取引法2条1項1号)。
「役務」とは、労務または便益を提供することをいいます。
プラットフォームサービスは、ユーザーの
・売りたい/買いたい
・貸したい/借りたい
といった双方の需要を満たすことを容易にするサービスとして、ユーザーに便益を提供しているといえます。
つまり、プラットフォームサービスを提供するときに、サービス利用料をユーザーからもらえば、立派な「通信販売」というわけです。
1-2 通信販売業者が「広告」をする際には
さて、「通信販売」業者は、「広告」をするときに、特定商取引法に基づく表示をしなればなりません。
「広告」とは、販売業者等が通信手段により申し込みを受けて、商品の販売等を行うことを意図していると認められる広告を指しています。
この「広告」は、方法を問わないもので、インターネット上のホームページにおけるものも含まれます。
いわゆる通販サイトなどで、ページの下のほうに「特定商取引法に基づく表示」などと書かれているのは、これが理由です。
プラットフォームサービスもご多分に漏れず、インターネット上のホームページでの広告がされているといえます。
したがって、プラットフォームサービスを提供するときには、「特定商取引法に基づく表示」をしなければなりません。
1-3 表示すべき内容
特定商取引法 第11条
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは指定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。(中略)
1 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)
2 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
3 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
4 商品若しくは指定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第15条の2第1項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)
5 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
「特定商取引法に基づく表示」として求められる内容は、この条文に定められています。
プラットフォームサービスを提供する場合の表示で気を付けるポイントについてだけ、触れていきます。
なお、ECサイトにおける表示内容については、以下の記事で触れています。
プラットフォームサービスを提供する事業者自らが、売り手等になることがある場合は、こちらも参考にしてください。
⑴ 役務の対価(1号)
この項目で記載すべきは、あくまで役務の対価です。
したがって、サービス利用料がかかることや、そのサービス利用料の算定方法について記載すべきでしょう。
現実では、プラットフォームサービスにおいて、「各商品に表示された価格」などの記載が見受けられます。
しかし、プラットフォームサービスを提供する事業者自らが、売り手などにならない限りは、不正確というべきでしょう。
⑵ 役務の対価の支払時期・方法(2号)
支払い時期についても、記載すべきはあくまで役務提供の対価の支払い時期です。
いわゆるエスクロー方式をとっているなら、「売り手・貸し手に手数料を差し引いて支払うときに決済する」などと記載することになるでしょう。
この項目については、実際の運用や利用規約と整合するように定めればよいのではないでしょうか。
支払い方法は、銀行振込やクレジットカード決済のほか、電子マネーや仮想通貨を使用できるなら、そのことを表示すべきです。
⑶ 役務の提供時期(3号)
この項目で記載すべきは、プラットフォームサービスをいつから利用できるようになるのかです。
特段条件がないのであれば、「会員登録後直ちに利用可能です。」などと表示することになるでしょう。
⑷ 申込の撤回又は解除に関する事項(4号)
役務提供の場合、返品を観念できないので、記載をしないか、「性質上返品は不可能です」などと記載することになるでしょう。
2 ユーザーが「特定商取引法に基づく表示」義務を負う場合
プラットフォームサービスと特定商取引法に基づく表示に関して、事業者側で気を付けるべきことがあります。
それは、ユーザー個人が、特定商取引法に基づく表示をしなければならない場合があるということです。
たとえ、個人であっても、プラットフォームサービスを利用して、売り上げを上げた場合に、「販売業者」等に当たる場合があります。
それは、個人が、営利の意思をもって、反復継続的に取引を行う場合です。
個人が、「販売業者」に当たるのに、特商法に基づく表示をしなかったときは、法律上は、行政による指導や処分が行えることになっています。
また、そこまでいかなくても、個人が特商法の表示をするということは、自宅の住所等をネットの海にさらさなければならないということです。
一般市民たるユーザーであればこれを避けたいと思うのではないでしょうか。
プラットフォームサービスを提供する事業者が「役務の対価」などについて、特商法に基づく表示をする場合に、「各商品の価格に準じる」などと記載していることがあります。
このように自ら販売しているかのような表示をしている背景には、個人に表示義務を負わせない建前を取ろうとしていることがあるのかもしれませんが、定かではありません。
サービスが盛り上がり、ユーザーが増えるほど、個人が「販売業者」に当たりうる可能性は高くなるでしょう。
最初は気にする必要もないかもしれません。
しかし、ある程度サービスが大きくなったら、ユーザーに対して、注意喚起することも考えられるでしょう。
個人が特商法に基づく表示義務を負う場合について、詳しくは、下記の記事を参照していただければと思います。
まとめ
今回は、プラットフォームサービスと特定商取引法について解説しました。
プラットフォームサービスは場所がウェブ上であるために、初期投資を少なくして、事業を始められるメリットがあります。
しかし、きれいな花にはトゲがあるように、特定商取引法をはじめ、いろいろと規制があります。
むしろこれから増えていってもおかしくはない分野です。
ぜひ、アンテナを広く張って、法的リスクは回避しながら、事業の成功を目指してください。