労働中の休憩時間にもルールがあった!
- 公開日:2019/5/9 最終更新日:2019/05/08
- 労務
IT事業者の皆さんはもちろん、雇用している労働者に対して、休憩を与えていると思います。
ただ、単に「休憩を与える」といっても、そこには様々なルールがあることをご存知でしょうか。
今回は、単純なようで奥が深い、労働時間中の「休憩」のルールについて解説します。
目次
第1 ルールその1~取得させる時間~
休憩は、①労働時間の長さに応じて、取得させなければならない時間が決まっています。
また、当然のことですが、②休憩は労働時間の「途中」に与えなければなりません。
この二つが、休憩を取得させる時間に関するルールです。
1 取得させる時間
休憩時間は、1日の労働時間の長さによって次のように決まっています。
6時間以内 | なし |
---|---|
6時間を超えて8時間以内 | 45分 |
8時間を超える | 60分 |
1日の労働時間には、時間外労働も含まれます。
そのため、所定労働時間が6時間であっても、残業をする場合には、45分の休憩を与えなければなりません。
8時間の場合でも同様です。
・休憩と賃金
賃金は、労働の対価ですので、労働をしていない休憩時間は賃金支払いの対象ではありません。
9時から6時まで勤務し、途中に休憩が1時間ある場合には、労働時間は8時間です。
拘束時間とイコールではないので注意してください。
・休憩時間の上限
労働時間に応じて、上記のように下限は決まっていますが、上限に定めはありません。
そこで、6時間以内の所定労働時間であっても休憩を取得させたり、8時間以内の場合も1時間の休憩を取得させることが考えられます。
このような活用をすることで、急な残業が生じた場合にも、対応できるということです。
多くの事業者様では、一律1時間の休憩をとっているのではないでしょうか。
・休憩時間の分割
休憩時間を分割して与えることもできます。
法が定めているのは、休憩として与えなければいけない総量であり、「30分ずつ2回」に分けて与えることも可能です。
もっとも、「5分ずつ12回」など、あまりにも細分化すると、その各5分について「休憩」といえるか疑問であり、違法となると思われます。
また、このあと説明する自由利用の原則との関係でも、分割した休憩時間では自由利用の趣旨に反する場合もあるかと思います。
2 労働時間の「途中」
休憩は労働時間の「途中」に与える必要がります。
すなわち、休憩の前後には労働時間があるべきということです。
8時間労働の後に休憩1時間を与えてそのまま勤務終了などという扱いは許されないということです。
休憩という言葉の意味から外れた扱いですし、その後に勤務がないのであれば、拘束から開放すべきです。
じゃあ休憩の後5分でも勤務時間があればいいのかというと、そうではないと思われます。
あまりにも休憩後の勤務時間が短いのであれば、勤務とは言えないのではないかと考えられます。
少なくとも一仕事終えられる程度、時間的には1時間程度の勤務時間があるべきではないでしょうか。
第2 ルールその2~一斉取得の原則~
休憩時間は、労働者に対して一斉に与えなければなりません。(労基法34条2項)
休憩中に他の労働者が勤務していると、休憩中の労働者が手伝いなどで、結局労働から解放されない場合があることを避ける趣旨の規定です。
1 一斉取得の例外
そうはいっても、一斉に休憩を与えると、仕事にならない場合もあると思われます。
そこで、労基法は、一定の事業について、一斉休憩の例外を定めています。
例外となるのは以下の事業です。(労基法40条、労基法規則31条)
- ・道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
- ・物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
- ・金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
- ・映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
- ・郵便、信書便又は電気通信の事業
- ・病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
- ・旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
- ・官公所の事業
これらの事業に該当しなくても、労使協定によって、一斉休憩の例外を定めることもできます。
2 フレックスタイム制では?
フレックスタイム制でも、一斉休憩の原則は適用されます。
先ほど説明した例外事業や労使協定がないのであれば、コアタイムを定めたうえで、その中に休憩時間を置く方法をとることになるでしょう。
フレックスタイム制の詳しい解説は以下の記事をご覧になってください。
第3 ルールその3~休憩時間の自由利用~
休憩時間中は労働から完全に開放されている必要があります。
当たり前ですが、休憩時間は労働時間ではないからです。
したがって、労働者は休憩時間を自由に利用できるのが原則です。
例えば、上司が部下の休憩中に、電話が鳴ったら対応をする よう業務命令を出すことは違法ということです。
1 活用方法の拘束
しかし、会社側からすれば、あまりに自由に活用されるのも、それはそれで困るということもあるでしょう。
そのため、休憩時間の利用について規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差支えないと解釈されています。
外出を届け出制にする規定などは、この必要な制限と考えられています。
2 休憩中の労働の扱い
上記のように、休憩中に電話対応やお茶出しなどの対応をすることがある場合、これは完全に労働から解放されていないので、休憩とは言えません。
したがって、労働時間として数えられるべきですし、その結果、休憩時間が法定の時間に不足するなら違法です。
労働者が勝手に休憩中に働く場合もあるでしょう。
会社がこれを黙認していたような場合には、やはり休憩にはなりませんし、労働時間として数えられる必要があります。
取りうる対策としては、休憩中に働くことは書面などで明示的に禁じ、会社は黙認していないことを形に残した方がいいでしょう。
またその一方で、労働者が休憩時間中に働かざるを得ないような状況についても、効率化を図り、業務量を減らすなどで対処すべきだと思われます。
第4 休憩を与えるのは労働者だけ?
休憩を与えなければいけないのは労働者に対してです。
したがって、パートアルバイトも例外ではありません。
他方で、IT事業者の皆さんが、SES契約に基づき、自社内で作業しているSEの人たちは、労働者ではないので、休憩をさせる義務はありません。
しかし、それは、彼らがIT事業者の指揮命令下にない外部の人間だからです。
休憩を取らせなくてよいという意味ではなく、事業者の指揮命令下にない以上、彼らは自由に休憩をとっても構わないという意味です。
SES契約のSEの人たちが実質的には会社の指揮命令下にあるといえる状況であれば、休憩を取得させる必要があります。
詳しくは下の記事を参照してください。
まとめ
「休憩」と一言で言っても、一つ一つにこまごまとしたルールが定められています。
ぜひ、一度自社の休憩時間の運用についてチェックしてみてください。