IT・EC事業の事業主の皆さまは、自社の販売する商品や提供するサービスについて、商標登録をしていますか?
きちんと商標登録をしておかないと、他社に商標を先に登録されて、ある日突然差止請求を受ける、なんて日が来るかもしれません。
今回は、商標権の概要、商標登録するメリットは何かという点をメインに解説します。
1 商標権とは?
商標権とは、事業者が顧客などに対して販売・提供する商品やサービスについて、他人に真似されないように守るための権利のことをいいます。
1-1 チョコレート菓子販売会社では・・・
商標権の重要性について、チョコレート菓子を販売する会社を例にとって解説します。
この「A」チョコが、味も良く、値段も手ごろだったことから大ヒットしたため、競合他社のB社が、黒い包み紙に赤文字で「AB」とプリントしたパッケージでチョコレート菓子を販売するようになりました。
すると、消費者は、「AB」チョコもA社の商品だと思って、「A」チョコよりも少し値段の安い「AB」チョコを買うようになり、「A」チョコの売上が下がりました。
さらに、「AB」チョコは品質の悪い材料を使って安い値段で製造していたため味も悪く、消費者は「A社のチョコの味が落ちた」と思い、A社の企業イメージが下がりました。
このとき、A社が「A」チョコについて商標登録をしていれば、B社が「AB」チョコの販売を開始したときに販売の差止請求をしたり、売上が下がったことによる損害賠償請求をすることができました。また、「美味しいチョコレート菓子を販売するメーカー」という消費者のイメージも守ることができました。
1-2 商標登録の効果とは
このように、商標登録をすると、類似商品を販売する他社に対して、差止請求や損害賠償請求をすることができるようになります。つまり、商標権は、自社の市場競争力やブランドイメージなどを守ることができる権利なのです。
市場競争力、ブランドイメージなど、商標登録により得られる効果のことを、法律の世界では次の4つの機能があるといいます。
- ・出所明示機能
- ・自他識別機能
- ・品質保証機能
- ・広告宣伝機能
これらの機能は、別の記事で詳しく解説しますが、ここで覚えておいていただきたいのは、商標権で自社ブランドを守れる!ということです。
2 商標登録するには?
商標登録するためには、特許庁で審査を受ける必要があります。出願の具体的な流れは、次のとおりです。
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出願の流れ
- ① 事前調査(既に類似の商標はないか?など)
- ② 出願
- ③ 審査
- ④ 手数料の納付
- ⑤ 登録
上記の流れのうち、③審査のところでは、様々な理由により登録を拒絶されるケースがあります。例えば、既に同じ区分で類似する商標を第三者が取得している場合があります。
そのため、事前準備では、商標をどの区分で出願するのか、その区分の中で類似の商標は既に登録されていないかのリサーチが、マーケ・ブランド戦略構築に並ぶくらい非常に重要です。せっかく素晴らしい企画を立案しても、他社が既に商標を取得していたら実現できないからです。
3 まとめ
近年、商標によるブランド戦略が重要視され、商標権の重要性が高まってきました。商標をうまく使いこなすことができる事業者が、市場でも勝ち抜いていくケースが多いです。
事業者の方は、いま現在自社で販売・提供している商品やサービスについて、もしまだ商標を取得していない場合には、ぜひ取得を検討することをオススメします。最近は専門知識が豊富でない方でも出願登録ができるようにハウツー本もいろいろ出ています。
ですが、他人の商標権を侵害しないかの判断は難しい点がありますので、不安なことや困ったことがあれば弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。