IT・EC事業者が知っておくべき、リンクの設定の注意点とは!?

 他人が作成したウェブページや画像へのリンクを貼る行為は、基本的には著作権侵害にはならない、と今までは考えられてきました。ですが、今年、リンクを貼る行為が著作者人格権侵害になるという裁判所の判決が出ました。
 今回は、その判決を元に、IT・EC事業者の方が知っておくべき、リンクと著作権侵害の問題を解説します。

1 リンクの種類について

 リンク先を表示する方法には2種類あります。
 ユーザーがリンク元のテキストや画像をクリックすることでリンク先のウェブページを開くようになる方法を「通常の方式によるリンク」といいます。
 これに対し、ユーザーがリンク元でなんらの操作をすることなく(何もクリックすることなく)、リンク元のページにリンク先の画像等が表示される方法を「インラインリンク」といいます。

2 今までの基本的な考え方

 著作権のうちリンクを貼る行為と関係が深い具体的権利は、複製権と公衆送信権です。今までは、リンクを貼る行為によっては複製権も公衆送信権も侵害されないという理解が一般的でした。
 なぜなら、「通常の方式によるリンク」でも「インラインリンク」の方法でも、リンク元のページのサーバーに画像の複製がされないからです。また、技術的に言うと、リンク元のページを見ているユーザーにリンク先の画像等を送信しているのは、リンク先のサーバーであるからです。

 なお、別の記事(他人のサイトにリンクを貼って違法となる場合があるのか!?【無断リンクの適法性_通常のリンクの場合】)で、リンクを貼る行為が違法になるかどうかを、著作権法に限らず解説しています。ちなみに、このリンクの貼り方は「通常の方式によるリンク」です。

3 注目判決が出た!その内容は・・・

 以上のように、今までは、ユーザーがリンク先のサーバー(元のサーバー)から直接画像等のデータを受信していることから、リンクを貼る行為が著作権侵害になるとは考えられてきませんでした。
 ですが、今年、リンクと著作権法の問題に関して、注目すべき判決が出たのです(知財高裁平成30年4月25日判決)。

3-1 事案の概要

 事案の概要は、次のとおりです。
 写真家が撮影した写真の画像データを自己のウェブサイトで公開していたところ、あるユーザー(Aさん)が無断でその写真をダウンロードし、Twitterに転載しました。その後、Aさんの当該画像ツイートを別のユーザー(Bさん)がリツイートしました。写真家は、自己の画像が無断で転載されたことは著作権等の侵害であると主張して、ツイッター社に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、AさんとBさんの個人情報の開示(発信者情報開示)を請求したというものです。
 なお、Bさんがリツイートした結果、Bさんのタイムライン上に表示される写真は、①元々の画像から端っこ部分がトリミングされ、②下部に表示していた写真家のサインが見切れてしまっていました。

 この事案では、Aさんが写真家の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害したことは争いがなく、BさんがAさんの画像ツイートをリツイートした行為が写真家の権利を侵害するかどうか、という点が主な争点になりました。

3-2 判決の内容

 知財高裁は、Bさんがリツイートしたことで写真家の著作権(複製権、公衆送信権)は侵害されていないと判断しました。理由としては、従前の議論と同様に、Bさんがリツイートしたとしても、ユーザーにデータが送信されるのは元のサーバー(Aさんが画像ツイートをする際に画像をアップロードしたサーバー)からである、というものでした。

 これとは反対に、Bさんのリツイート行為によって写真家の同一性保持権と氏名表示権が侵害されているとの判断がされました。タイムライン上に表示される写真がトリミングされ(同一性保持権侵害)、写真家のサインが見切れてしまっている(氏名表示権侵害)という結果は、元のサーバーからのデータの送信ではなく、Bさんのリツイートによる結果だと判断したのです。

 詳細な判決文は、裁判所HPで公開されています。判決を読めばわかりますが、リンクの仕組みの技術的な部分がかなり詳細に認定されています。

 なお、個人情報の開示の点は、ツイッター社はAさんとBさんのメールアドレスを開示せよ、と判決で命じられています。

4 実務への影響はあるのか?

 今までの基本的な考え方によれば、リンクを貼る行為は、著作権侵害にはならないと考えられてきました。しかし、今年出た知財高裁の判決では、著作者人格権の侵害がありうるという判断になっています。この判決は、単にTwitterでのリツイート行為についてだけ判示したものではなく、もっと広く、リンクを貼る行為全般に影響のある判決だと捉えるべきでしょう。

 もちろん、リンクを貼る行為がすべて著作者人格権の侵害になるというわけではありません。リンクの貼り方、特にユーザーにデータが送信されるのはどのサーバーからであるのか、ユーザーから見た画面にはどのように表示されているのか等の点がポイントになると考えられます。また、SNSの場合、これらの点の技術的な部分や利用規約が改訂される度に、結論が変わってくるかもしれません。

 ひとまず、今回の知財高裁の判決が出たことによって、今まで「リンクを貼る行為は著作権法的に問題はない」と考えていた事業者の方は、画像等のリンクを貼る際には「本当に権利侵害にならないか?」と立ち止まって考えた方が良いでしょう。

5 まとめ

 以上、今回は、IT・EC事業者の方がサイト運営をする際に知っておくべき、リンクと著作権法の問題について解説しました。
 自社の運営するウェブサイトが著作権侵害を起こしていた場合、サイトの封鎖や損害賠償請求を受けるなど、ダメージは甚大です。また、ユーザーからもコンプライアンスを疑われ、顧客離れにもつながるかもしれません。
 この機会に、自社のウェブサイトが適法に運営されているか、振り返って確認されるのはいかがでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

この著者の最新の記事

関連記事

運営者情報

IT・EC特化型リーガルパートナー

お気軽にお問い合わせ下さい

ページ上部へ戻る