インターネット(IT)・オークションにおける契約の成立時期とは!?いつまでなら出品や落札を取り止められる!?【ITオークションの法律問題②】

インターネット・オークションと契約の成立時期

 前回は、インターネット(IT)・オークション事業者(運営者)の利用者に対して負う責任についての記事を書きました。今回は、実際に出品者が出品している商品を落札者が落札した場合に、いつ契約が成立するのかという点について書きたいと思います。

 例えば、落札者がやっぱり買うのをやめるとか、出品者がやっぱり売るのをやめるのか等いつまでにいえばやめることができるのかということにかかわる問題です。

1 契約の成立時期

 以前から、このサイトではかなりいっていますが、契約は当事者の意思の表示が合致すると成立します。つまり、「これを買います」(申込の意思表示)と「これを売ります」(承諾の意思表示)という互いの意思表示が合致して初めて契約が成立するのです(ECにおける契約の成立時期についての記事はこちら)。
 インターネット(IT)・オークションの場合、契約の当事者はインターネット(IT)・オークション運営者(事業者)ではなく、出品者と落札者となります(詳細は、インターネット・オークション事業者の責任に関する記事をご覧ください。)。ですので、出品者と落札者の意思の表示が合致したといえる時点で、契約が成立したといえることになります。
 では、具体的にどの時点で契約が成立したと評価できるのか検討して行きましょう。

2 具体的な成立時期の検討

 実際に契約の成立時期がいつなのかという問題については、出品者と落札者の意思表示がどの時点で合致していると見ることができるかという個別具体的な問題となります。そのオークションサイトの仕組みや利用規約の内容によって違いがでてきてしまいます。
ただし、オークションの場合、落札した時点で契約が成立するというふうな仕組みで設計されているものはほとんどありません。
仕組みは随時変化していっていますので注意が必要ですが、

「ヤフー」であれば、落札者が決定した場合には自動的に落札者にEメールで通知がいきますが、そのメールには支払い方法や商品の受取方法については、出品者からの連絡をお待ちくださいとなっています。このようなものであれば、「ヤフー」からのメールでは契約は成立せず、オークションの結果によって単に落札者は、出品者と交渉する権利を得たのみであり、その交渉の中で、意思表示の合致があった時点で契約が成立するとみてよいでしょう。

「楽天」の場合でも、落札者が一定の期間内に取引開始手続きを済ませないと取引が自動的にキャンセルになる仕組みとなっているし、一方、出品者も一定の期間内であれば出品をキャンセルできる仕組みがとられています。ここから考えるに、落札があったからといって契約が成立するのではなく、その後の当事者の合意によって契約が成立するという仕組みになっていると評価できます。

※ なお、仕組みについてはそれぞれのサイトで随時変化していますので、自分が利用しているオークションサイトや自分が運営しているサイトの利用規約や仕組みを検討して契約の成立時期を確定させて下さい。

3 まとめ(契約成立時期からの帰結)

 以上からすると、インターネット(IT)・オークションにおける契約の成立時期は、落札があった時点ではなく、その後の出品者と落札者の交渉の中で、契約が成立することになるというが一般的なようです。
 ここからわかることは、落札があっただけでは、契約の成立が認められない以上、落札後もその後契約が成立するまでの間においては、出品者・落札者は「やっぱり売るのをやめるとか買うのをやめる」ということがいえるということになるんです。
 ただし、多くの有名オークションサイトではこのような落札後の取り止めについて、一定のペナルティを課すという形になっているので、どうせあとで取り止めれるしという形で出品したり、落札したりということはやめましょう!

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

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