ECサイトなどのウェブサイトでフリー素材を使用する際の注意点とそのリスク

 ちまたでは、いわゆる「フリー素材」と呼ばれる写真やイラストなどを提供しているサイトが数多くあります。ECサイトやその他ウェブサービスのサイトを運営するにあたり、このような「フリー素材」を利用するケースも多いのではないでしょう。
「フリー素材」であれば著作権はなく、どのような利用をしてもよいと誤解されがちですが、実際にはフリー素材にも著作権があり、サイトによってそれぞれで異なった利用条件で利用を認めている(許諾している)というものが大半です。
 今回は、このようなフリー素材を利用するにあたっての注意点やリスクについてご説明します。

1 フリー素材って著作権侵害にならないの?

 写真やイラスト画像などには基本的に著作権があり、著作権者に無断で利用すると、原則として著作権侵害となってしまいます。
「フリー素材」というと、著作権がないと誤解されがちですが、フリー素材にも著作権はあります。ただ、写真やイラストなどの素材を提供するサイトが、サイトの利用規約によりそれらの利用を許諾(許可)しているため、著作権侵害にならないというだけです。
 このように利用を許諾しているだけなので、当然その利用を行うには、利用規約に定められている利用条件や制約などの内容に従って行うことが必要です。
 素材を提供しているサイトによって利用条件は様々なので、しっかりとその内容を確認をし、その内容に則って利用するようにしてください。これに違反した利用の仕方をしてしまうと、許諾された範囲を超えた著作物の利用として著作権侵害になってしまう可能性があります。

2 フリー素材を利用することのリスク

 では、素材を提供しているサイトの利用規約に則って利用していれば100パーセントOKかというと、そうでもありません。フリー素材には、以下のようなリスクがあるのです。

2.1 本当に「フリー」なのか?

 フリー素材を提供しているサイトで、自由に利用していいですよと言われていたとしても、実際の著作権は、このサイトとは関係のない人が持っている場合もあり得ます。そして、それを使用してしまったとしたら、著作権侵害となってしまう可能性があるのです。
 なぜなら、本当の著作権者が使ってもよいと許可したから著作権侵害にならないのであって、著作権者とは関係のない第三者から許可を得たとしても何の効果もなく、著作権者に無断で使用しているということにかわりはないからです。

2.2 フリーで提供しているサイトから入手したことで著作権侵害にならないといえるか?

 とは言っても、フリーサイトで使用してよいと書いてあったから使用したのに、それで著作権侵害で損害賠償をしろと言われても困ります。

 フリーサイトから入手したため、著作権侵害になるとは知らなった、だから損害賠償責任はない、と言いたいところですが、実際にこのような主張は通るのでしょうか。著作権侵害として損害賠償が認められるためには、著作権を侵害したことに関して故意、または、過失が必要なので、これを手掛かりに責任を免れたいところです。

 この点について実際に争われた裁判例(東京地裁平成27年4月15日判決)があります。
 これは、ウェブサイトに写真画像を載せていた事業者(被告)が、著作権者から、著作権侵害を理由に損害賠償を請求された事案です。被告は、フリーサイトからダウンロードしたことなどをもって、過失はなく損害賠償請求は認められないという反論をしましたが、結果的に損害賠償は認められました。
 裁判所は、「フリーサイトから入手したものだとしても、識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは、著作権等を侵害する可能性がある以上当然である」ばなどとして、被告の主張を認めなかったのです。
なかなか、厳しい判断ですね。
この裁判例からは、少なくとも、フリーサイトからダウンロードしたことのみをもって、著作権侵害の損害賠償を免れる理由にはならないということがいえると思います。

 やはり、フリー素材を使用するにあたっては、著作権者の調査確認はしっかりと行い、他人の著作権を侵害しないよう配慮しなければならないということですね。ただ、実際に、著作権を誰が持っているかの調査は事実上困難といってよいでしょう。
フリー素材を利用する限り、このようなリスクはついて回ると考えた方がよいと思います。

3 まとめ

 写真やイラスト画像などのフリー素材を利用する場合、まず重要なことは、素材を提供しているサイトの利用規約を確認し、利用が許されている範囲内でその素材を利用するということです。
 ただ、その範囲内で利用していたとしても、著作権者が他にいる場合には、その著作権者から著作権侵害だと言われてしまうリスクは残ることになります。このようなケースは決して多いわけではないですが、これを完全に避けることは困難でしょう。フリー素材には、このようなリスクがあることを認識した上で利用することが重要かと思います。

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