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お肉やベーコン(生肉や食肉製品)をIT(インターネット)サイトで販売するのに法律上必要な許可手続き【弁護士が教えるECスタートアップに必要な手続き②】
前回、どのような「食品」を販売すると法律上許可・届出が必要なのかという点について書きました。
今回は、ズバリ「お肉」を販売するにはどういう手続きが必要で、どのように許可をとればいいのかを書きたいと思います。なお、当記事は、食肉や食肉製品を自ら製造や加工をする場合ではなく、仕入れて販売する場合を想定した記事になりますのでご注意ください。
また、ただの仲介をするだけであれば下記の許可は不要ですが、販売元が法律上必要な許可を得ているのか等は確認しなければ後々問題になりますので、仲介をするだけのEC運営者も是非ご覧になっておいてください。
なお、当記事は、国内で仕入れ販売をする場合の法規制について書いていますので注意して下さい。輸入で仕入れる場合には、他の法規制がありますので、それは別記事で書きたいと思います。
目次
1 お肉をEC(IT取引)サイトで販売するために必要な許可
前回の販売の許可・届出が必要な「食品」一覧及び食品販売許可届出の要否フローチャートを見るとお肉の販売に関係しそうなものとしては、「食肉販売業」と「食料品等(うち食肉製品)販売業」があります。
1.1 「食肉」販売業として、法律(食品衛生法)上必要な許可
食品衛生法上許可が必要な「食肉販売」とは、鳥獣の生肉(骨及び臓器を含む。)を販売する営業をいいます。
ですので、鳥獣の生肉(骨及び臓器を含む。)を仕入れてEC(IT取引)サイトで販売することは、食品衛生法上の「食肉」販売業にあたりますので、食品衛生上の許可が必要となります。
許可をうけた食肉販売営業者が食肉を細断包装したものを、他の者が保管し、注文配送する場合も許可の対象とされる一方、食肉販売の斡旋若しくは仲介のみ行う場合は許可を必要としません。つまりは、生肉を保管する状態(手元に置く状態)があれば、衛生管理をしっかりしなければならないので、許可の対象となると考えていただければよいでしょう。
1.2 「食料品(食肉製品)等販売」として、条例上必要な許可(東京)
次に詳細は前回の記事の「3.2」もあわせてご覧になってほしいのですが、ベーコン、ウィンナー、ハム等の「食肉製品」を販売することについては、東京都の場合、食品製造業等取締条例で許可が必要とされています。
ただし、「ⅰ販売時における温度管理が不要な食品であって、ⅱ容器包装に入れられた食品のみをⅲ仕入れた状態のまま販売する場合」には許可が不要となるので、ビーフジャーキー等の乾燥食肉製品は、例外的に許可が不要となります。
2 申請をする流れ
それでは、具体的に上記許可を得るために必要なことや条件は何なのかを見ていきましょう。
2.1 行政に事前相談をしよう!
まず、食品衛生法上の許可を得るためには、下にも書きました通り、施設の基準等があります。ですので、施設工事直行前に、施設の設計図や現状についての資料等を持参して、問題がないかチェックしてもらいましょう。施設工事を行ってから問題があると大変なので、営業所を保管する保健所の食品衛生担当者に事前相談はしておいた方がよいでしょう。
2.2 営業許可申請書類を提出
事前相談で問題がなければ、営業許可申請書類を提出しましょう。必要な提出書類は以下の通りです。
2.2.1 個人の場合
2.2.2 法人(会社等)の場合
2.3 施設完成の確認検査
施設が、下記の基準を満たすがどうか、保健所が施設の確認検査をすることになります。ここでもし、条件にあわない事項があると許可をもらえないため、すぐに改善し再検査をうけましょう。
2.4 許可証の交付と営業開始
「2.3」の検査の結果、問題がなければ、許可書の交付がなされます。だいたい確認検査から2~10日以内には許可書が交付されることになります。
この許可書の交付を受けて初めて営業を開始できます。営業を始めたら、下記の食品営異性責任者の名札を見やすい場所に掲示しましょう。
3 許可基準(どういう条件を守ったら許可を得ることができるのか。)
この許可の基準ですが、原則として、下記「3.1」が必要です。ただし、包装済みの食品の販売をするだけという場合には、「3.2」のように基準が緩やかになります。EC運営者の場合、包装済みの食品のみを販売するということが多いと思いますので、そちらもチェックしてください。
3.1 包装済みの食品だけでなく、小分け等して販売する場合(原則的な基準)
3.1.1 営業施設の構造(「食肉販売」と「食料品等販売」と共通)
場所 | 清潔な場所 |
建物 | 鉄骨、鉄筋コンクリート、木造作り等十分な耐久性がある構造 |
区画 | 使用目的の応じて、壁、板等により区画 |
面積 | 取扱量に応じた広さ |
床 | タイル、コンクリート等の耐水性材料で排水が良く、清掃しやすい構造(床こう配1/50~1/100が適当) |
内壁 | 床から1メートルまでの耐水性で清掃しやすい構造(床と壁が交わる隅は丸みをつける) |
天井 | 清掃しやすい構造(配管ダクト、照明器具等が露出しないこと) |
明るさ | 50ルクス以上 |
換気 | ばい煙、蒸気などの排除設備(換気扇等:ダクトによって屋外に廃棄する場合には近隣に迷惑にならないように高さや方向に注意する。) |
周囲の構造 | 周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水がよく、清掃しやすい構造 |
洗浄設備 | 原材料、食品や器具等をあらうための流水式洗浄設備(目安として、45㎝(幅)×36㎝(奥行)×18㎝(深さ)以上が望ましい。) |
従業員専用の流水受漕式手洗い設備と手指の消毒装置 | 目安として36㎝(幅)×28㎝(奥行)以上で、蛇口は、足踏み式、ハンドコック等が望ましい。 |
更衣室 | 清潔な更衣室または更衣箱を作業場外に設ける。 |
3.1.2 食品取扱設備(「食肉販売」と「食料品等販売」と共通)
器具等の整備 | 取扱量に応じた数の機械器具および容器包装 |
器具等の配置 | 移動しにくい下階器具等は、作業に便利でで、清掃や洗浄をしやすい位置に配置 |
保管設備 | 原材料、食品や器具類等を衛星的に保管できる設備(食器戸棚や器具保管庫等の戸を必ず設置) |
器具等の材質 | 耐水性で洗浄しやすく、熱湯、蒸気又は殺菌剤等で消毒可能なもの |
運搬具 | 防虫や防塵じん、保冷できる清潔な食品運搬具を備える。 |
計器類 | 冷蔵、殺菌、加熱、圧搾等の設備には、見やすい個所に温度計及び圧力計を備える。必要に応じで、計量機を備える。 |
3.1.3 給水及び汚物処理(「食肉販売」と「食料品等販売」と共通)
給水設備 | 水道水又は飲用に適していると認めれる水を豊富に供給できるもの ※貯水槽は衛生上支障のない構造。ただし、島しょ等で飲用に適した水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。貯水槽や井戸水を使用する場合は年1回以上、水質検査を行い成績書を1年間保存 |
便所 | 作業場に営業のない位置や構造で、従業者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ネズミ族、昆虫等の防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける。 |
汚物処理設備 | ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れないもの |
清掃機具格納設備 | 作業場専用の清掃機具と格納設備 |
3.1.4 「食肉(生肉)販売」のみに必要な条件
冷蔵設備 | 食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。 包装凍結肉を販売する場合は、-15℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備 を設けること。 |
最高最低温度計 | 包装凍結肉の冷蔵設備には、最高最低温度計を備える。 |
3.1.5 「食料品(食肉製品)等販売」のみに必要な条件
・取扱量に応じた陳列ケース及び取扱器具を備えること
・冷蔵設備は、常に5℃以下(食品によってはそれ以下の場合もあり。)に冷却できる能力を有すること
・運搬容器はふたがあり、専用のものであること
・(発酵乳又は乳酸金飲料を扱う場合は、汚染防止の設備をした空き瓶置場が設けられていること(注:食肉製品の場合は関係ないこともあるので、カッコ書き))
3.2 包装済みの食品だけ販売する場合
上記、「3.1」が、食肉関連食品販売をするために必要な施設基準なのですが、包装済みの食品を販売するというだけであれば、条件が緩和されます。調理等一切しないわけですから、換気や洗浄設備、食品取扱設備等について条件が不要になったり、緩和されています。
3.2.1 営業施設の構造(包装済み食品のみの販売の場合)
場所 | 清潔な場所 |
建物 | 鉄骨、鉄筋コンクリート、木造作り等十分な耐久性がある構造 |
区画 | 使用目的の応じて、壁、板等により区画 |
面積 | 取扱量に応じた広さ |
床 | タイル、コンクリート等の耐水性材料で排水が良く、清掃しやすい構造(床こう配1/50~1/100が適当) |
内壁 | 床から1メートルまでの耐水性で清掃しやすい構造(床と壁が交わる隅は丸みをつける。) |
天井 | 清掃しやすい構造(配管ダクト、照明器具等が露出しないこと) |
明るさ | 50ルクス以上 |
周囲の構造 | 周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水がよく、清掃しやすい構造 |
従業員専用の流水受漕式手洗い設備と手指の消毒装置 | 目安として36㎝(幅)×28㎝(奥行)以上で、蛇口は、足踏み式、ハンドコック等が望ましい。 |
更衣室 | 清潔な更衣室または更衣箱を設ける(作業所外である必要はない。)。 |
3.2.2 食品取扱設備(包装済み食品のみの販売の場合)
保管設備 | 食品を衛星的に保管できる設備 |
運搬具 | 防虫や防塵じん、保冷できる清潔な食品運搬具を備える。 |
計器類 | 冷蔵等設備には、見やすい個所に温度計を備える。 |
3.2.3 給水及び汚物処理(包装済み食品のみの販売の場合)
給水設備 | 水道水又は飲用に適していると認めれるミスを豊富に供給できるもの ※貯水槽は衛生上支障のない構造。ただし、島しょ等で飲用に適した水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。貯水槽や井戸水を使用する場合は年1回以上、水質検査を行い成績書を1年間保存 |
便所 | 従業者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ネズミ族、昆虫等の防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける(作業場に営業のない位置や構造である必要ない。)。 |
汚物処理設備 | ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れないもの |
3.2.4 「食肉(生肉)販売」のみに必要な条件(「3.1.4」と同一)
冷蔵設備 | 食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。 包装凍結肉を販売する場合は、-15℃以下の冷蔵能力を有する冷蔵設備 を設けること。 |
最高最低温度計 | 包装凍結肉の冷蔵設備には、最高最低温度計を備える。 |
3.2.5 「食料品(食肉製品)等販売」のみに必要な条件
・取扱量に応じた陳列ケースを備えること
・冷蔵設備は、常に5℃以下(食品によってはそれ以下の場合もあり。)に冷却できる能力を有すること
・運搬容器はふたがあり、専用のものであること
・(瓶に入れられた発酵乳又は乳酸金飲料を扱う場合は、汚染防止の設備をした空き瓶置場が設けられていること(注:食肉製品の場合は関係ないこともあるので、カッコ書き))
3.3 食品衛生責任者の資格(「3.1」と「3.2」共通)
次に、包装済み食品のみの販売であってもなくても、「食品衛生責任者」を設置する必要があります。
これは、各都道府県が条例により定めているもので、講習を受けることによって誰でもなることができます。
詳細は都道府県により、若干異なりますが、「公衆衛生学」、「衛生法規」、「食品衛生学」の講座を6時間程度受講することで資格を得ることができるのです。
東京の場合は、社団法人東京都食品衛生協会ホームページで日程等の詳細を確認できます。
また、
については、講習を受ける必要はありません。
なお、ここにいう「食品衛生責任者」は、食品衛生法によって、一定の業種に必要となされる「食品衛生管理者」とは異なりますので、注意して下さい。
4 まとめ
以上が、食肉を仕入れて、EC(IT取引)サイトで販売することをスタートアップするための許可です。
施設を使用しないことをECの強みととらえるのであれば、食肉販売業者とお客さんを単に仲介するだけという方がビジネスとしては良いのかもしれませんが、必ずしもそうとは限らない側面があります(特に「3.2」の基準での使用や食肉製品販売)ので、ご参考にしていただければなと思います。