有名人の写真をサイトに掲載したり商品化するのは違法?~パブリシティ権~
- 公開日:2017/7/20 最終更新日:2021/01/01
- 知的財産の問題
ECサイトで商品を販売していると、有名人の写真を使った商品(写真がプリントされたTシャツなど)を販売したり、商品やサービスの宣伝のためにウェブサイトに有名人の写真や名前などを載せたいなと思われることもあるかもしれません。このように、有名人の写真や氏名は宣伝効果が高いため、商品自体や商品・サービスの宣伝などに使用されるケースが多くあります。
ただ、有名人の写真を勝手に使ってもよいのかな、訴えられそうで怖いな、という単純な疑問が浮かんでくると思います。
この場合に法律上問題になりうるのは「パブリシティ権」というものです。有名人の写真や氏名を使用することがパブリシティ権の侵害になる場合、損害賠償責任が発生してしまうので、注意が必要です。
今回は、このパブリシティ権について、見ていきます。
1 パブリシティ権とは?
有名人の氏名、肖像等は、商品等に付され、又は商品等の広告として使用されることによって、その商品等の販売を促進する効力を有する場合があります。このような自分の顧客吸引力を、勝手に他人に使われないようにするための権利があり、これがパブリシティ権と呼ばれるものです。
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<パブリシティ権>
- 自分の氏名、肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利(つまり無断で第三者に使わせない権利)
パブリシティ権に関する法律上の明確な根拠はありませんが、判例により認められている権利です。
そして、基本的には、自分の名前や肖像が、顧客吸引力を持っている人、つまり有名人に認められるものです。一般人の写真や氏名を商品につけたとして、商品やサービスの販売促進効果はありませんよね。
2 パブリシティ権の侵害になる典型的な類型
パブリシティ権の侵害になるかどうかの判断基準は以下になります(最高裁判決平成24年2月2日、ピンクレディ事件)。
- ①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
- ②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する場合
- ③肖像等を商品等の広告として使用する場合
「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」かどうか
具体的には、
①、②は、有名人の写真などを「商品化」すること、③は「広告化」することを対象とするものです。
①は、肖像等を「独立して」鑑賞の対象とするものなので、ブロマイド写真、ポスター、ステッカー、シール、写真集、画像の配信サービス等のように、有名人の肖像自体が商品となっている場合が典型的です。
②は有名人を使った商品で、有名人の写真をプリントしたTシャツ、マグカップ、ポーチ、ストラップ、タオル、下敷き、カレンダー、キーホルダー、マグネット、スポーツ用具など、有名人のキャラクター商品等が想定されます。
③は、ウェブサイトに有名人の写真を掲載し、商品やサービスの宣伝に利用するような場合がこれにあたるといえます。
3 違反となるかどうかの判断
有名人のキャラクター商品を制作して販売する場合などは、比較的パブリシティ権の侵害になることは明確かと思われます。このような場合には、使用することについて、本人の許諾をもらっておく必要があります。
商品自体に有名人の写真等を使用する場合とは異なり、上記類型③にあたるのかどうかは判断は難しいところがあります。
たとえば、ウェブサイトに有名人の写真を掲載する場合、商品やサービスの宣伝として使用するのかどうかは微妙なケースもあります。掲載したからといって、絶対にパブリシティ権を侵害するということになるわけではありませんが、掲載することで、有名人の顧客吸引力を利用することが主たる目的になっているかどうかが判断の分かれ目になります。
掲載写真の枚数や大きさ、ウェブサイトに占める割合なども関係してくるかと思われます。
4 まとめ
以上のように、有名人の写真などを使ったTシャツなどの商品を作成して販売することは、パブリシティ権の侵害になる可能性が高いので、本人の許諾をとっておく必要があります。また、ECサイトでこのような商品を取り扱う場合には、本人の許諾を得ている商品なのかどうかは、卸先にしっかりと確認された方がよいでしょう。
商品やサービスの宣伝のために有名人の写真などをウェブサイトに掲載する場合にも、商品の広告として使用するものとしてパブリシティ権の侵害となってしまう場合がありますので、基本的には、本人の許諾をとらなければならないと考えていただいた方がよいと思います。