商標の世界での「類似性」とは!?

 自らの商品や役務が他人の登録商標と同一・類似の場合には、出願登録しても登録を受けられなかったり、商標権侵害であるとして差止請求や損害賠償請求を受けたりする可能性があります。特に類似性の判断は、専門家の間でも判断が分かれる難しいケースもあります。
 そこで、今回は、商標法の中でも非常に重要な概念である、類似性について解説します。

 

1 商品・役務の類似性とは!?

 商品や役務(サービスのこと)が他人の商品・役務と「類似しているかどうか」について、商標法上明確な規定はありません。
 そのため、類似性の判断基準については、基本的には解釈によって決められます。

1-1 どのような場合に類似していると判断されるの?

 商品・役務の類似性について、最高裁が判断基準を出しています。
 正確な判断基準は少し長い言い回しなのですが、おおまかに言えば次のとおりです。

類似性の判断基準
同一・類似の商標であることから、同一営業主による商品の製造・販売と誤認するかどうか

 例えば、「橘」という同一の商標を、A社が清酒に、B社が焼酎に付したとします。
 この場合、清酒も焼酎も酒類であることから、それぞれに「橘」という同一の商標が付された場合、消費者は、いずれも同じ営業主が製造・販売する種類であると誤認するといえます。
 そのため、このような場合には、商品が「類似している」という判断がされることとなります。

 そもそも商標権は、商品・役務に商標権という独占権を認めて営業やブランドを保護するための権利ですから、製造・販売主が誤認されるような場合には商標は類似であると判断されるのです。

1-2 指定商品・役務が違ったら大丈夫?

商標の出願登録の際には、その商標を使用する商品・役務を指定することが必要とされています。その指定は、政令で定められている「商品及び役務の区分」という分類に従って行わなければなりません。

 では、他人の商標と異なる区分だったら、製造・販売主の誤認は生じないのでしょうか?

 残念ながら、商標法6条3項は、「商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものはない」と規定しています。
 つまり、異なる区分でも商品・役務が類似する場合がありますし、反対に、同じ区分でも商品・役務が類似しない場合もあるのです。

1-3 特許庁での審査ではどうなっているの?

 特許庁では、出願の際の審査を統一するため、類似性の判断をする際の判断基準を公表しています。

類似商品・役務審査基準
特許庁HP

 この審査基準では、商品・役務を一定のグループに分け、同じグループにある商品・役務は類似するものであると推定するものです。ただし、あくまでもこの基準も類似性を推定するものですので、商品・役務の具体的な内容次第では、異なる判断になる可能性もあります。

2 商標の類似性とは!?

 商品・役務が異なっても、商標が類似している場合には、商標法上の問題が生じます。
 では、どのような商標だと類似していると判断されるのでしょうか。

2-1 商標の類似性の判断基準

 最高裁は、商標の類似性の判断基準について、以下のように行うべきであると判示しています(永山印事件・最高裁昭和43年2月27日判決)。

「商標の類似は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、呼称等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」

 そして、その後の最高裁判決では、判断基準がさらに詳しく述べられ、要するに「商品の出所を誤認混同するおそれがあるかどうか」が重要であるとの判断基準が打ち立てられました(小僧寿し事件・最高裁平成9年3月11日判決)。

 これらをまとめますと、以下の3点から「商品の出所を誤認混同するおそれがあるかどうか」を総合考慮することが最高裁の判断基準のポイントとなっています。

    最高裁の判断基準のポイント

  1. ・商標の外観、観念、呼称はどうか
  2. ・取引者に与える印象、記憶、連想はどうか
  3. ・取引の実情はどうか

2-2 もっとわかりやすく!(類似性の具体例)

 上記の判断基準は非常に抽象的なので、具体例を挙げて説明します。

 皆さんは、数年前に「キットカット」というお菓子に、桜の花びらの図柄の上に二段の文字列で「きっと、サクラサクよ。」と表してある商標が付され販売されていたことを覚えていますでしょうか。このキットカットは、実は裁判になっていたのです。

 事案は、既に「サクラサク」というカタカナ文字で商標登録をしていた原告が、被告の取得した「きっと、サクラサクよ。」の商標は自らの商標と類似するから商標登録は無効であると主張した事案です。

 知財高裁(知的財産の事件を専門に扱う裁判所)は、次のように述べ、両商標は類似していないと判断しました(サクラサク事件・知財高裁平成22年8月19日判決)。

「本件商標(キットカットの商標)は、受験シーズンに専らキットカット商品に用いられ、このことはよく知られており、本件商標の付されたキットカット商品はかなりの売上を示しており、他方で、引用商標(原告の「サクラサク」)は、受験シーズンに関係なく、袋菓子や焼菓子などに用いられていることが認められる。」
「このように、本件商標が付されたキットカット商品が、受験生応援製品として持つ意味合いは大きいものと認められ、このような本件商標の用いられたキットカット商品と、そのような意味合いの薄い引用商標が用いられた袋菓子等との間で誤認混同が生じるおそれは非常に低いものと認められる。」

 原告と被告の商標は、確かに、呼称(「サクラサク」という読み方をする部分が共通している)、外観(「サクラサク」の部分がいずれもカタカナであること)、観念(「サクラサク」という言葉から連想する、桜が満開になっているイメージ)の点では、似ているとの判断になりそうです。
 取引者に与える印象等も、桜が満開になっているイメージということで似ているといえます。
 しかし、この事案では、被告のキットカット商品が受験生を応援するための製品であることを重要視して、総合的に考慮すると商品の出所を誤認混同するおそれはないため、両商標は類似していないという判断になりました。

3 まとめ

 以上、商品・役務の類似性と、商標の類似性の判断基準を解説しました。
 類似性の概念は、商標の登録出願をする段階や、商標権侵害かどうか判断する段階で使う非常に重要な考え方です。
 実務では、上記の最高裁の判断基準が用いられていますので、この基準は必ず押さえるようにしましょう。

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