- Home
- 販売した商品で事故が起こった場合に責任を負う条件~製造物責任法(PL法)➁~
販売した商品で事故が起こった場合に責任を負う条件~製造物責任法(PL法)➁~
- 公開日:2017/4/27 最終更新日:2021/01/01
- EC(IT)取引上の問題
前回、「販売した商品で事故が起こった場合に責任を負うのは誰?~製造物責任法(PL法)➀~」という記事を書きましたが、今回は引き続き、どのような場合にPL法に基づく損害賠償責任が発生するのかという点について、ご説明します。
目次
1 どのような場合にPL法に基づく責任を負うのか?
製造物責任とは、製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害の賠償責任を負うというものです(製造物責任法3条本文)。
その要件は、
- 製造物であること
- 製造物に欠陥があること
- 生命、身体または財産が侵害され、製造物以外のものについて損害が発生すること
- 製造物の欠陥が損害発生の原因になっていること(因果関係)
です。以下、詳しく見ていきます。
1.1 ①製造物であること
製造物とは、製造または加工された動産です(製造物責任法2条1項)。この場合、あらゆる「物」が対象になります。よく事故が起こる例としては、加工食品、化粧品、美容機器、電化製品、自動車、おもちゃなどが挙げられます。
製造または加工されていることが必要ですので、野菜などの農産物を全く手を加えずに出荷する場合には、製造物にはあたりません。また、動産に限定されているので、ソフトウェアなどの無形物は、対象にはなりません。
1.2 ②製造物に欠陥があること
「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます(製造物責任法2条2項)。
欠陥にあたるかどうかは、製造物の特性、通常使用される方法など考慮した上、「安全性」に着目して判断されることになります。
実際の裁判例において、「欠陥」にあたるかどうかは様々な要素を総合して判断されるため、なかなか難しいところがありますが、代表例である食品でいえば、食品の加工の過程で食品の中に異物が混入し、そのために喉をけがした場合や、有害な細菌が発生し食中毒を起こしたという場合には、安全性を欠いているといえるでしょう。
難しいのは、その食品自体に特に有害な物質が含まれているということではなくても、摂取方法や用量などによっては人体に影響が出るという場合があります。
たとえば、食品にアレルギーを引き起こす成分が含まれている場合です。アレルギー反応がない人にとっては、食べても特に問題はないので安全ですが、アレルギー反応がある人にとっては命にも関わりかねない重大な問題です。
このような場合には、そのような成分が含まれていることが明示されていたかどうかや、アレルギーを引き起こす危険性についての警告が十分だったかどうかという、表示や注意喚起の程度なども、「欠陥」があったかどうかの判断に影響を及ぼしてきます。
1.3 ③生命、身体または財産が侵害され、製造物以外のものについて損害が発生すること
典型的な例では、食品の中に異物が混入しておりそれによって健康被害が出た、電化製品の不具合によって事故が起こり人体に被害が出た、というような場合です。
「生命、身体または財産」の侵害に限定されているため、精神的な損害としての慰謝料請求はできません。また、製造物以外について損害が出たことが必要と考えられており、欠陥があったとしても、そのことによりその製造物自体の価値が低下しているというような場合の財産的な損害は対象にはならないと解されてます。
1.4 ④製造物の欠陥が損害発生の原因になっていること(因果関係)
製造物に欠陥があったとしても、それが損害発生の原因となったのかどうかがわからないという場合には、責任が認められません。
裁判例では、ガスファンヒーター付近から出火して火災が生じた事案で、火災の原因がガスファンヒーターの異常燃焼によるものか、その付近に置いてあったスプレー缶が過熱されて爆発したものか不明であるとして、因果関係を否定した事例があります。
2 まとめ
以上のような要件をすべて満たした場合に、はじめてPL法に基づく損害賠償責任が発生することになります。実際の裁判では、「欠陥」があるのかや、因果関係があるかどうかといった点が争点になり、その立証はなかなか難しいので、製造物責任が認められない場合も結構あります。ただ、人体に被害が出たとなると、その損害額も相当大きくなる可能性がありますので、「欠陥」商品を製造・販売されないよう、十分ご注意ください、