書き込みの削除代行業者は弁護士法違反!?

 インターネット上の掲示板などには、誹謗中傷や著作権・商標権侵害の書き込みについて、弁護士以外の業者が「削除請求を代行します」などの広告を掲載していることがあります。しかし、弁護士以外の者が、インターネット上の書き込みの削除請求を代行することには、弁護士法上の問題があります。
 今回は、削除請求の代行がなぜ弁護士法に違反するのか、依頼してしまった場合どうすれば良いのかについて、解説します。

1 書き込みの削除請求とは

 弁護士は、書き込みがされた事業者から依頼を受けて、インターネット上の書き込みの削除請求を行いますが、まずはその具体的内容から見ていきます。

1-1 削除請求の法的根拠は?

 削除請求の対象となる書き込みは、多くの場合、誹謗中傷か、著作権・商標権などの知的財産権侵害です。
 誹謗中傷の書き込みについては、書き込みがされた事業者は、名誉権侵害に基づいて削除請求を行うことになります。
 また、知的財産権侵害の場合には、著作権法や商標法に、削除請求(差止請求、名誉回復措置)などの根拠規定があります。
 このほか、法律ではないのですが、プロバイダ責任制限法に関連して、削除請求をすることができると定めるガイドラインがあります。

1-2 削除請求の流れ

 一般的に、以下のような流れで書き込みの削除請求を行います。

書き込みの削除代行業者は弁護士法違反!?

 以上のフローチャートは基本形で、このほかにも、掲示板の運営会社に対する損害賠償請求などの選択肢もあります。

1-3 交渉・請求業務の中身

 掲示板の運営会社やプロバイダに対し、書き込みの削除を請求したり、発信者情報開示請求を行う場合には、法的判断が必須になります。

 すなわち、誹謗中傷の名誉権侵害の場合には、書き込みをした者の表現の自由(憲法21条)にも配慮しなければなりません。名誉棄損が成立するためにも、その書き込みの内容が真実かどうか、書き込みをした者が真実であると誤信したかどうかなどの様々な事情が関係してきます。
 また、知的財産権侵害の場合にも、例外的に著作権を自由に利用できるケースに当たるかどうかなどの判断が必要です。

 最近は、発信者情報開示請求について、プロバイダ責任制限法などの法整備が進んできたため、法律専門家の資格を有しない方でも、削除請求をするハードルは下がりました。ですが、インターネット上の環境も目まぐるしく変化し、既存の法律でどのように対処するか悩ましい問題も日々現れてきます。そのため、国家資格が認められる程度の知識を有する者でなければ適切に対処することが難しいという一面があります。

2 弁護士法で禁止されている行為とは?

 弁護士法では、弁護士などの資格を有しない者が一定の行為を行うと、弁護士法違反であるとして刑事罰が科されることとなっています。

2-1 専門家でないとできない行為とは

 弁護士法72条は、次のとおり定め、原則として弁護士資格を有しない者による法律事務を禁止しています。資格を有しない者が弁護士業務を行うことを、一般に「非弁行為」といいます。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 「別段の定め」というのは、例えば裁判所での代理人を許可された司法書士や、特許庁での代理人を許可された弁理士などが挙げられます。

2-2 法律事務とは

 弁護士法の条文では、上記のとおり、法律事務の例示が挙げられています。
 「その他の法律事務」については、裁判例や日本弁護士連合会によれば、次のように言うと解されています。

  1. ・法律上の効果を発生、変更する事項の処理
  2. ・法律上の効果を保全、明確化する事項の処理も含む

 上記の弁護士法72条に違反し、非弁行為を行うと、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます(弁護士法77条3号)。

3 削除代行業者の危険性

 削除代行業者は、弁護士法に違反している可能性があり、書き込みの削除請求が実現できないなどの問題に加え、様々な危険があります。

3-1 削除代行業者の弁護士法違反の可能性

 前述のように、弁護士資格を有しない者による、法律上の効果を発生、変更する事項の処理は、非弁行為に該当します。そして、削除請求は、名誉権や知的財産権の侵害の有無を法的に検討し、削除請求という法律上の効果を発生させる行為ですので、非弁行為に該当する可能性が高いといえます。最近、インターネット上の書き込みの削除請求を代行することは弁護士法違反であるとする裁判例も出ています。

 この点について、削除代行業者は「弁護士と提携している」「IT面でのサポート業務しか行わない」などの広告を出して、自らは非弁行為をしていないと主張することが多いです。ですが、弁護士との提携といっても、単なる名義貸しがされているだけの場合や、実在しない弁護士名を挙げる業者もいます。また、サポート業務といっても、プロバイダに対して発信者情報開示請求をしていくことは、プロバイダ責任制限法に根拠のある請求ですので、果たして単なるサポート業務といえるのかは疑問なケースもあります。
 もっとも、弁護士法に違反するかどうかの判断は、明確な境界線がないため、非常に難しい問題というのが現状です。

 もし非弁業者に依頼してしまった場合、書き込みが削除されないということがあります。また、高額な費用を請求されたりするトラブルも起きる危険性があります。

3-2 非弁業者への対応~費用の返還請求~

 依頼している削除代行業者が非弁行為を行っているのではないかと疑問に感じたら、まずは弁護士に相談しましょう。もしその業者が弁護士法に違反している場合には、削除代行を依頼したときに支払ってしまった費用の返還請求をすることができるケースもあります。
 違法業者への費用返還請求は、①業者が非弁行為を行っているか、②費用返還請求が認められるかといった難しい問題を含んでいます。そのため、ご自分で返還請求を行うより、弁護士に依頼をした方が安全です。

4 まとめ

 今回は、インターネットの書き込みの削除代行業者の危険性について解説しました。
 最近は、削除請求を以前より容易に行うことができるようになったので、書き込みをされてしまった方も削除を検討する機会が多くなってきたと思います。ですが、非弁業者に依頼してしまった場合には新たなトラブルを招く危険性がありますので、依頼をする際には注意が必要です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士萩谷真樹

担当者プロフィール

企業法務の中でも、特に知的財産権分野を得意としている。同法人のIT・EC事業に特化している弁護士とともに、知的財産権分野という専門性の高い領域で、お客様へのサービス提供を行っている。

ピクト法律事務所

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