「適法」な民泊とは?~民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要~

 民泊に関する住宅宿泊事業法案(民泊新法)が平成29年3月10日に閣議決定されました。今後、この法律が国会で成立・施行されれば、民泊事業に大きな影響に与えることになります。

 ホストとゲストをつなぐ民泊の仲介は、現在、いわゆるプラットフォーマーと呼ばれる事業者により、ウェブを通じて行われている実態があります。プラットフォーマーに与える影響については、次回詳しく書きたいと思いますが、プラットフォーマーは、違法な民泊のあっせんや広告をすることは禁止されていますので、「適法」な民泊とは何かを知っておく必要があります。

 

1 民泊新法の概要

 民泊新法は、適法な民泊(住宅宿泊事業)とは何かを整理し、民泊を行うホスト(住宅宿泊事業者)、代行業者(住宅宿泊管理業者)、プラットフォーマー(住宅宿泊仲介業者)がそれぞれ守るべき義務を定めています。それぞれの事業者は、民泊新法で定められた義務を守ることで、これまで旅館業法違反のおそれがあった民泊を「適法」に行うことができることになりました。

 

2 適法な民泊ってどんなもの?

 民泊新法で許される民泊とは、「住宅」に宿泊料を受け取って人を宿泊させることをいい、その宿泊日数が1年間で180日を超えないものをいいます。なお、その営業主体が旅館業の営業許可を受けた者であれば、民泊新法は適用されず、これまでどおり旅館業法の適用を受けることになります。

以下、詳しく説明します。

2.1 民泊の対象となる施設とは?

 民泊で利用できる施設は、「住宅」に限定されており、「住宅」の定義は以下になります。

第2条1項
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
1号 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
2号 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。

 民泊として貸し出される施設は、台所、お風呂、トイレ、洗面設備など人が住むために必要となる基本的な設備を備えていることが必要です。また、現に人が住んでいること、または、賃貸に出されている家屋で新たな入居者の募集が行われていることなども必要とされており、その詳細は、省令で定められることとなっていますので、これから明らかになっていきます。

このような要件を満たしていなければ、「住宅」には当たらず、民泊の対象とはなりません。

2.2 1年間180日の上限規制

 この部分が民泊新法の最も大きなポイントになります。民泊新法で許される民泊の範囲は、1年間の宿泊日数が180日を超えないことが条件とされており(第2条3項)、これを超えてしまうと、民泊新法で許される「住宅宿泊事業」とはいえなくなってしまいます。この180日のカウントの方法は、今後省令で定められることになっています。

また、180日の上限は、政令で定める基準に従って、条例で引き下げることも可能(第18条)とされており、今後の動向にもよりますが、地域によって、上限日数が180日未満に制限されるケースも出てくると思われますので、注意が必要です。

なお、旅館業法の営業許可を受けた者は、民泊新法の対象外ですので、180日の上限規制はかかりません。

 

3 ホスト(住宅宿泊事業者)に課される義務

 ホストが民泊を行うにあたっては、都道府県知事への届出を行わなければならないなど、様々な規制がなされていますので、その内容について詳しく見ていきましょう。

3.1 都道府県知事への届出

 民泊を行うホストは、民泊を行おうとする住宅ごとに、都道府県知事(保健所を設置する市または特別区においては、市長・区長)への届出が必要になります(第3条)。

届出の際には、商号・名称、役員の氏名、住宅の所在地、代行業者に管理業務の委託をする場合にはその業者の名称など、その他省令で定める事項を届け出ることになります。また、住宅の図面の添付も必要になります。

届出をすればよいだけで、「許可」までは必要ありませんので、それほど大きな障壁ではありません。決められた内容をしっかりと都道府県知事に届け出るようにしてください。

3.2 代行業者への委託(第11条1項)

 以下のような場合には、ホストが住宅の管理を行うのが難しいため、管理業務を代行業者(住宅宿泊管理業者)に委託しなければならないとされています。

・届出住宅の数が、一定数を超える場合(一定数は、今後省令により定められることになっています。)
・宿泊させる間、家主が不在にする場合(一時的な不在は除きます。)。なお、家主が近隣に居住していて、住宅の管理を適切に行える場合として、省令で定められる場合に該当すれば、管理の委託は不要です。

現在行われている民泊は、上記のような要件に当てはまるものが多いと思われますので、今後管理委託が必要になるケースは相当数に上ると予想されます。

3.3 その他の義務

ホストには、その他、以下のような義務が課されています。

  1. 宿泊者の衛星の確保(第5条)
  2. 床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃等を行わなければなりません。

  3. 宿泊者の安全の確保(第6条)
  4. 非常用照明器具の設置、避難経路の表示等を行う必要があります。

  5. 外国人観光客の宿泊者に対する義務(第7条)
  6. 外国人の宿泊者に対して、宿泊設備の使用方法や移動のための交通手段に関して、外国語での情報提供を行う必要があります。

  7. 宿泊者名簿の備付け等(第8条)
  8. 民泊を行う住宅には、宿泊者名簿を備え付け、宿泊者の氏名、住所、職業等を記載してもらわなければなりません。また、都道府県知事からの求められた場合には、宿泊者名簿を提出する義務もあります。

  9. 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(第9条)
  10. 宿泊者に対して、騒音や近隣の生活環境への悪影響を防止するために必要な事項を説明しなければなりません。

  11. 近隣からの苦情への対応(第10条)
  12. 近隣からの苦情や問合せがあった場合には、これに対して適切に対応することが必要になります。

  13. 標識の掲示(第13条)
  14. 住宅の見やすい場所に、標識を掲示しなければなりません。標識の内容等は、省令により定められることになっていますが、民泊の届出をしている住宅であることなどを記載することになると思われます。

  15. 都道府県知事への定期報告(14条)
  16. 宿泊者を宿泊させた日数等を、定期的に、都道府県知事に報告することが必要になります。

 

4 まとめ

 これから適法に民泊を行うためには、ホストの方は、都道府県知事に届け出をした上、180日の上限規制、その他の義務を守る必要があります。また、プラットフォーマーは、違法な民泊のあっせんや広告をすることは禁止されており、ホストがこれらの規制を守っているかどうかに注意を払う必要がありますので、適法な民泊とは何かを知っておくことが必要です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士南史人

担当者プロフィール

ビジネスへの理解と特有の法的なリスクがあるIT・EC業界に精通している弁護士として、多くのIT・EC事業の経営者の相談に乗ってきた実績を持つ。常に経営者目線でのアドバイスを心掛け、スピード感を持った専門性の高いサービスを提供している。


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