インターネット(IT)上の情報の利用が著作権侵害になるのか!?【弁護士が教えるEC運営者のためのIT著作権法対策①】

著作権①

 今回からは、しばらく【弁護士が教えるIT著作権法対策】シリーズとして、著作権法について書いて行きたいと思います。
 今回は、その第1回ということで、インターネット上の情報と著作権法の関係等、概要を書かきます。スタートとして、まずここから抑えていただければと思います。
 
 

1 インターネットサイト上の情報は「著作物」なのか!?~著作権法上保護されるのか~

1.1 「著作物」って何?

 まず、著作権法上保護される「著作物」とは、何をいうのでしょうか。
著作権法2条1項1号は、「著作物」について、

「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

と定義しています。
 ここにいう「創作的」といえるためには、新規性(新しい何か)がある必要はありません。作成者の個性が表現されていれば足ります。ですので、インターネット上の情報の多くが、この定義にあてはまりますので、「著作物」として、著作権法上保護されます。
 ただし、事実を伝えるに過ぎない短いニュース等誰が書いても表現に差異がでないような情報の場合には、「著作物」として保護をされないので注意が必要です(著作権法10条2項)。

1.2 「著作物」だとどうなるの!?

 著作物にあたると、法律上原則として、複製(コピーしたり)や公衆送信(サイトに上げたり、メールに載せたり)する等により利用するには、著作権者の許諾が必要となります。
 ただし、個人の私的使用の目的での複製(著作権法30条)や引用(著作権法32条)等の場合には、例外的に許諾なく利用することが可能です。
 なお、法令や行政がだす告示や通達、裁判所の判決等は「著作物」ではあるものの、著作権法上保護の対象にはなりません(著作権法13条)。ただし、これらの解説を民間の個人がした場合には、「著作物」として保護されます(なので、このサイトの記事も私の「著作物」として保護の対象となります。)。

2 明確な許諾がない場合でも利用が許される場合はないのか!?~黙示の許諾~

2.1 黙示の許諾!?

 「1」からわかるように、複製・公衆送信等の著作物の利用行為は、権利者の許諾ない限り、著作権侵害になります。
 しかし、著作物の内容、利用の仕方によっては、明確に許諾がなくても、実際は許諾しているだろうということで、著作権侵害にならない場合があります。法律の世界でいうと”黙示の許諾”があるなんていわれます。
 それでは、黙示の許諾があるといえるとはどのような場合といえるでしょうか。

2.2 黙示の許諾が認められる場合と認められない場合

 具体的にどのような場合に黙示の許諾があると評価できるは、個々の事案による!!というところがあるのですが、それでは何もわからないので、類型的に著作権侵害にならない場合となる場合を見ていきましょう。
 

2.2.1 黙示の同意が認められる可能性が高い場合

① 誰でも無償で自由にアクセスできるサイトに情報を掲示し、アクセスする人すべてが自由に閲覧することとなっている場合で、そのサイト上の情報をディスプレイ上ではなく紙面上で見るためにプリントアウトする(複製)こと
② 社内で購入を検討するために、当該商品のインターネット上の広告をプリントアウトして回覧したり、メールを検討者間で送り合うこと
③ ニュース記事や論文等で、サイト上で誰でも無償で自由にアクセスできる場合に、紙面上でみるためにプリントアウト(複製)すること等

 これらの場合には、普通に考えて、書作者もこのような行為を利用することは想定しているといえますよね。
 例えば、②であれば、広告はお客さんに商品を購入するために作成しますから、その商品購入を検討する為に、お客さんがプリントアウトすることに対しては、許諾があるといっていいでしょう。
 また、③であれば、たまにPDFで挙げられているものってありますよね。これは、当然印刷されることを想定していると評価できるでしょう。
 ただし、サイト上にプリントアウトを禁止する文言等が入っている場合には、プリントアウトをすることは許されません(このような場合には、許諾していないので)し、単にプリントアウト等するのではなく自分のサイトやチラシ等に自分のもののように掲載することについて許諾しているとも当然評価できませんので注意してください。
 

2.2.2 黙示の許諾が認められない場合

④ 無償でインターネットにアクセスして閲覧できるとしても、ニュース記事を複製して販売する場合や営業活動の一環として社外に配布すること
⑤ 利用規約に反して、有料サイトや会員限定サイトの情報をプリントアウトしてコピーして社内に配布したり、メール配信すること

これらの行為は、著作権者が予想を超える利用方法であることから、黙示の許諾があるとはいえず、著作権侵害となるでしょう。
  

2.2.3 黙示の許諾のまとめ

 上で「黙示の許諾」が認めれる場合とそうでない場合を見てきましたが、端的にいうと、その利用方法(コピーやプリントアウト)を著作権者が想定しているといえるか否かという点で結論がかわります。
 このあたりは、著作権者の気持ちになって、常識で判断できる部分かと思います。

3 無許諾で利用できる場合とは!?

 インターネットの普及に伴って、著作権法は、許諾のない利用をしても著作権侵害にならない場面を規定しました。

〇 情報検索サービス事業者がそのサービスの提供過程において、インターネット上に公開された情報の収集、整理及び検索結果としての提供を行うために記録媒体への記録、翻案及びURLの提供と併せて公衆送信を行うこと(著作権法第47条の6、施行令第7条の5、施行規則第4条の4)
〇 情報解析のための抽出、統計的な処理等を行うために記録媒体への記録、翻案を行うこと(著作権法第47条の7)
〇 美術の著作物等を譲渡しようとする場合にサムネイルを作成してインターネット上にアップロードすること(著作権法第47条の2)
〇 送信の障害の防止等のため、キャッシュサーバー等に一時的に情報を蓄積すること(同法第47条の5)
〇 コンピュータでの情報処理の技術的過程においてその情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で記録媒体にデータを複製すること(同法第47条の8)
etc

これらは通常の利用方法等とは違いますが、インターネット普及のためになされたものです。一般的にはあまり関係ない部分ではあると思います。

4 まとめ

 今回は、インターネット上の情報の利用について基本的なことを書いてきました。繰り返しになりますが、ポイントは著作権者がその利用方法を想定しているか否かという点にあります。上でも述べたように、自分がサイトに記事を書いたとして、そのような利用をされても良いと思うかどうかという常識的な感覚を大切にして下さい。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

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