ネットモール(ITモール)運営者は、モールへの出店者と利用者のトラブルについて責任を負うか!?【ネットモール運営者と出店者・利用者の契約・法律問題】

ネットモール

 ECサイト(IT取引サイト)を運営している方々の中には、ネットモール(ITモール)に出店してる方、はたまたネットモール自体を運営してしまう強者もいらっしゃると思います。
ネットモールは、電子商店街(でんししょうてんがい)ネット商店街、オンラインモール、サイバーモール、電子モール、ITモールなんて呼ばれたりましすが、インターネット上で複数の商店(EC)のページを一つのサイトにまとめて、様々な品物を販売するウェブサイトをいうことが一般的です。
 さて、そうすると、ネットモール(ITモール)の中の登場人物としては、①ネットモール運営者、モールへの②出店者とモールを利用する③お客さんが想定できますが、直接トラブルになるのは取引をする②出店者と③お客さんが多いと思います。

それでは、③お客さんが商品を購入したが、商品に欠陥があった場合等に、①ネットモール運営者はどのような責任を負うのでしょうか。


今回も長文ですので、対策方法のみ知りたい方は、「3.まとめ」をご覧ください。

1 ネットモール(ITモール)取引における契約関係

 まず、この3者は法律上どのような関係に立つのかを書きたいと思います。

1.1 ①ネットモール運営者と②出店者・③お客さんの関係

 ①ネットモール運営者は、②出店者と③お客さんにそのモールを利用してもらう(利用させてあげる)という契約をしています。その利用料としてお金をもらったり、無料にして人を集めて広告収入を得たりとその辺りは、各①ネットモール運営者が設計する利用規約の内容等によってそれぞれ異なります。少し前にヤフーでは無料で利用できる等話題になっていましたね。なお、利用規約の設置方法等はこちらの記事を参考にしていただければと思います。
分かり易く言うと、ネットモール運営者は、リアルでいうところの出店する場所を貸してくれる人ということになります。フリーマーケット等で、体育館を貸してあげるから、そこで店を出しても良いよ!?そのかわり体育館利用料は下さいね、という感じです。
 ②出店者からすれば、多くのお客さんが訪れてくれる可能性が高くなりますし、③お客さんとしてもこのモールに来れば欲しいものを一通りチェックできるということで、お互いにメリットがあります。

1.2 個々の商品・サービスの取引における契約関係

 次に個々のお客さんとの取引についてみていきたいと思います。
このサイトでは、「耳たこ」でありますが、契約は、買い手の「これを買います。」(申込み)という意思の表示と「これを売ります。」(承諾)の意思の表示が合致して成立します。
ですので、モールで販売されている個々の商品やサービスについての取引は、買い手である③お客さんと売り手である②出店者との間でなされるものですので、契約は、②出店者と③お客さんとの間で成立するのみです。

上記の通り、①ネットモール運営者は場所を貸すだけの人ですので、個々の商品・サービスの取引には、法律的には直接関係のない人なのです。 

2 個々の商品・サービスに問題があった場合は!?

 

2.1 ②出店者が責任を負うのは当然

 上記の通り、個々の商品・サービスについての契約は、②出店者と③お客さんの間で成立しています。
ですので、個々の商品・サービスに欠陥等があった場合には、③お客さんは、②出店者に対して、欠陥ない商品の提供を再度求めたり、代金の返金を請求したり、そのことで「損害」(例えば、その商品が原因で火災が発生した場合等)の賠償を請求することができます。

2.2 ①ネットモール運営者が責任を負う場合もあるのか!?

 繰り替えしになって恐縮ですが、個々の商品・サービスについては、①ネットモール運営者は、場所を貸しているにすぎません。ですので、原則として、①ネットモール運営者は、個々の商品・サービスに関するトラブル等について、責任を負うことはありません
 しかし、②出店者が逃げてしまった場合等に③お客さんとして、その①ネットモール運営者に何か請求したいと考える場合が多いです。法律的には、原則として①ネットモール運営者は責任を負いませんが、一定の条件がそろった場合には、例外として責任を負う場合がありますので、要注意です。

2.3 ①ネットモール運営者が責任を負う場合の例外的な具体例

 それでは、どのような場合に、例外的に①ネットモール運営者が責任を負うのでしょうか。
 

2.3.1 ①ネットモール運営者が売主であると誤解されても仕方がない場合!?

 以前、当サイトでも表見代理制度等の解説をした記事がありましたが、法律は直接契約関係がなくとも、例外的な場合には契約関係があったかのように処理をするという規定を置いている場合があります(法律の世界で「権利外観法理」とか呼ばれます。)。
 そして、ⅰ②出店者の営業が①ネットモール運営者の営業であると一般のお客さんが誤認するような外観が存在し、ⅱこの外観が、①ネットモール運営者の責任もあって作られており(帰責事由の存在)、ⅲ①お客さんがそのように勘違いして申込みをし、その勘違いが明らかにお客さんが悪いとはいえない(重大な過失がない)場合には、例外的に①ネットモール運営者も②出店者と同様の責任を負う(商法14条類推適用)ことになります。
 具体的には、個別の事情にもよるのですが、サイト上の②出店者が誰であるかの表記が不明確であったり、断りもなく代金支払いのメール等のオペレーションまで①ネットモール運営者が行なっていたりした場合には、①ネットモール運営者が責任を負う可能性があります。
 

2.3.2 放置による責任!?

 ③お客さんが、売主は②出店者であるとちゃんとわかっていた場合であっても、①ネットモール運営者が責任を負う場合もあります。
 重大な製品事故の発生が多数確認されている商品を販売してる②出店者がいる場合に、そのことを①ネットモール運営者が知っていたのにこれを放置し続け、③お客さんに製品事故による「損害」が発生したような場合には、その「損害」を賠償する責任を①ネットモール運営者が負う可能性が高いです。
 これの法律の根拠ですが、「1.1」の通り、①ネットモール運営者は、お客さんとの間で、そのモールを利用させてあげる契約を締結しています。さすがに利用させてあげるといっている以上、そのような重大で多数の製品事故が発生している商品であれば、それを除外するような措置を取ることぐらいしなければならないよね!?でもそれをしなかったんだから、運営者として一定の責任を負って下さいということになります。
 

2.3.3 品質等保証をした場合の責任!?

 こちらも③お客さんが、売主は②出店者であるとちゃんとわかっていた場合になりますが、①ネットモール運営者が③お客さんに対して、単なる情報提供を、紹介を超えて、特定の(問題が起こった)商品等について、品質等を保証したような場合には、例外的に責任を負う可能性もあります。
 ただし、品質等について①ネットモール運営者の判断が入らない形の特定の商品や出店者の広告をしているにすぎない場合、実際によく売れている商品を売れ筋商品として掲載したり、ランキングをつけておすすめとする場合等で、単純にデータ等に基づいて広告掲載をしている場合には、商品等の品質等について①ネットモール運営者の判断を示すものではないため、責任は負わないと考えらます。

3 まとめ(①ネットモール運営者及び②出店者が取るべき対策)

 それでは、最後に①ネットモール運営者及び②出店者が取るべき対策をまとめたいと思います。

3.1 ①ネットモール運営者が取るべき対策

① サイトのお客さんが認識しやすい場所に「当モールに出店している店舗は、当社とは独立した事業者が自己の責任の下運営しており、特に明示している場合を除き、当社および関連会社が管理又は運営しているものではありません」等ネットモール運営者と出店者が異なることを明確に表示しておく(「2.3.1」に対応するため)

② 常日頃からシステム上、出店者から情報を吸い上げる仕組みをしっかりもっておく(利用規約等に事故発生等の事情があれば出店者に報告義務がある旨明示しておく(「2.3.2」、「2.3.3」に対応するため)

3.2 ②出店者が取るべき対策

 直接的に契約の責任を負うのは、出店者である以上、常日頃から、在庫管理や債権管理をしっかりとしておきましょう。
また、お客さんからの信頼を守るために、ネットモール運営者とも情報共有等を通じてより良い関係を築いていくことが大切です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

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