インターネット(IT)・オークション事業者(運営者)の利用者に対する法律的な責任と対応策!?【ITオークションの法律問題①】

オークション・トラブル

 以前、このサイトで、「中古品」のインターネット・オークション運営者(事業者)が守るべきルールについての記事を書きました。
 今回から、「中古品」(つまりは、古物商関係)ではなく、インターネット・オークションについてインターネット・オークション事業者やそこでの商品を売るEC運営者等に関連する法律問題について書いていきたいと思います。
 今回は、その1発目として、インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)の利用者に対して負う法律的責任について書きます。

1 オークション利用者間のトラブルに関する責任

 例えば、オークションの利用者間(出品者と落札者)で、商品未着、代金未払い等のトラブル生じた場合に、インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)が責任を負うのか!?という問題です。

1.1 原則:オークション事業者は責任を負わない!?

 この辺りについては、基本的にそのオークションサイトの利用規約(利用規約に関する記事一覧はこちら)によって決まってくるのですが、基本的には、オークション事業者は、いわゆる「場所」を利用させてあげるだけというスタンスをとっていることが多いです。
 ですので、インターネット・オークション運営者(事業者)は、原則として利用者(出品者と落札者)間のトラブルについて責任を負わない立場にあるといってよいでしょう。
 この辺りの法律関係は、ネットモール事業者(運営者)の法律責任に関する記事マッチングサイト事業者(運営者)の法律責任に関する記事と同様ですよね!つまりは、オークションによって成立する個別の契約の当事者は「出品者」と「落札者」であって、オークション事業者は「場所を提供しているだけ」なので契約の当事者となりません!っということです。

1.2 例外:オークション事業者も責任を負う場合!!

 上記の「原則的にインターネット(IT)事業者は、当事者間のトラブルについて責任を負わない」ということの根拠は、「場所を提供しているだけ」ということが根拠になります。ですので、もはや「場所を提供しているだけ」とはいえないような場合には、インターネット(IT)・オークション事業者(運営者)も責任を負う場合があるということになります。
 

1.2.1 インターネット(IT)・オークション事業者が利用者の出品行為を積極的に手伝い、落札報酬を出品者からもらう場合(オペレーションを担当する等)

 このような場合には、もはやインターネット(IT)・オークション事業者は、単なる「場所」を提供する人を超えて、出品代行者と評価されます。ですので、出品物が偽ブランドであった場合等には、それを確認できるのですから、出品者と同様にオークション事業者が責任を負う場合があります。
 

1.2.2 インターネット(IT)・オークション事業者が契約者であると誤解されても仕方のない場合

 この論理的な根拠は、ネットモール事業者の責任に関する記事「2.3.1」をご覧になって頂きたいのですが、

①出品者がインターネット(IT)・オークション事業者であると落札者が誤認するような外観が存在し(虚偽の外観の存在)、
②この外観が、インターネット(IT)・オークション事業者の責任もあって作られており(帰責事由の存在)、
③落札者がそのように勘違いして申込みをし、その勘違いが明らかに落札者が悪いとはいえない(重大な過失がない)

場合には、例外的にインターネット(IT)・オークション事業者が、出品者と同様の責任を負う(商法14条類推適用)ことになります。
 ただし、オークションの場合には、ネットモールやマッチングサービスと異なり、落札者が勘違いしにくい(③)とは思いますので、この規定が適用される場合はほとんどないでしょう。
 

1.2.3 インターネット(IT)・オークション事業者が問題をあまりに放置していた場合

 そのオークションサイトで詐欺が頻発しているような状況で、インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)が、サイト上で詐欺について注意喚起等をする措置を一切講じていない場合等には、オークション事業者が責任を負う場合があります。
 実際に詐欺の被害にあった落札者から、賠償金を支払うように請求された場合には、損害賠償をしなければならなくなる可能性があります。つまり、いくら「場所を提供する」というだけといっても、詐欺の注意喚起等は、最低限の運営責任として、オークション事業者は負うべきだと考えられているからです。
 

1.2.4 インターネット(IT)・オークション事業者がその商品の品質等保証をした場合の責任

 インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)が落札者に対して、単なる情報提供・紹介を超えて、特定の(問題が起こった)商品等について、品質等を保証したような場合には、例外的に責任を負う可能性もあります。
 ただし、品質等についてインターネット(IT)・オークション運営者(事業者)の判断が入らない形の特定の商品や出店者の広告をしているにすぎない場合、実際によく売れている商品を売れ筋商品として掲載したり、ランキングをつけておすすめとする場合等で、単純にデータ等に基づいて広告掲載をしている場合には、商品等の品質等についてインターネット(IT)・オークション運営者(事業者)の判断を示すものではないため、責任は負わないと考えらます。

2 利用者間トラブル以外についての責任

 上記の責任とは別に有料・無料問わず、インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)は、利用者(出品者や落札者)に対して、インターネット(IT)・オークションのシステムの機能を提供することが、契約の内容となっているので、適切にその機能を維持・管理する義務を負うことになります。

3 まとめ(インターネット(IT)・オークション運営者(事業者)の取るべき措置)

 それでは、以上を前提に対応策をまとめます。

① 「出品代行者」までやる場合には、商品等のチェック体制を確立した上で行う(「1.2.1」への対応)
②  サイト利用者が認識しやすい場所に「当オークションの出品物は、特に明示している場合を除き、当社および関連会社が販売する物ではありません」等ネットモール運営者と出店者が異なることを明確に表示しておく(「1.2.1」「1.2.2」への対応)
③ トラブル情報を利用者等から吸い上げる仕組みを持っておき、詐欺等の問題が生じた際には、その出品者の利用を停止したり、詐欺に対する注意喚起をサイト上で行う(「1.2.4」への対応)
④ 当然、オークションステムの機能の維持・管理をしっかり行う

 以上、インターネット(IT)・オークション事業者(運営者)の方は要チェックです。

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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

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