レビューによる風評被害の対応方法【IT時代における信頼(名誉権)維持のために】

誹謗中傷

 最近では、お店に行った感想や商材を買って使ってみた感想を、掲示板(又はブログ等)に記載することが多いですよね。特にECサイトの場合、その運営会社の評判や商品の評判(レビュー)をネット上で検索してから購入するかどうかを決定するということも日常的によくあることです。
ですので、このレビューがEC事業自体に大きな影響を及ぼすことがあります。
もちろん、会社や商品の評判をネットで調べることができるのは、悪いことではなくお客さんにとっても良いことでですし、良い商品やサービスを紹介してもらえる機会にもなりますので、EC運営会社にもメリットがあります。

 ただし、ネット上のレビューを見ていると、事実と異なることや「あのEC会社は詐欺だ!」などの誹謗中傷が記載されることも少なくありません。

 そこで、今回はこのような身に覚えのない自社の誹謗中傷レビューが記載されてしまった場合に、どのように対処すべきかについて記載したいと思います。
また、今回の記事は、EC運営をする会社が誹謗中傷された場合にという目線で書いていますが、ECサイト運営者がSNSや掲示板を運営しているということもあると思いますので、掲示板運営者側からも参考にしていただければと思います。


 今回も長くなりますので、「細かいことはいいよ!」という方は、「4 まとめ(取るべき具体的措置)」を見て下さい。

1 レビューの違法性(名誉権・営業権の侵害!?)

 法律上の措置を取る場合には、そのレビューに違法性がなければなりません(なお、削除依頼はできるので、とりあえず依頼しましょう。)。

1.1 名誉権(営業権含む)の侵害

 誹謗中傷レビューの場合に、違法となる根拠は、誹謗中傷をされた会社や個人の「名誉権」や「営業権」を侵害する点にあります。いわゆる「名誉棄損だーーー!」とか、「営業妨害だーーー!」というやつです。
しかし、誹謗中傷をされたと感じている者の個人的な感情のみで、名誉権(営業権も含む)侵害になるかといえばそれは違います。

 名誉とは、「人や企業の社会的評価」を意味しますので、その侵害といえるためには、レビューが客観的(一般の人からみて)に社会的評価を下げるものである必要があります。

上で記載した「詐欺だ!」等の表現は、犯罪行為を行っているということを述べていますので、当然に社会的評価を下げるものであり、名誉権侵害といえるでしょう。また、この商品には、毒物が入っている等の事実無根の書き込みも名誉・営業権侵害にあたることなります。

1.2 社会的評価を下げればすべて名誉権・営業権侵害!?

 一方で、1つ注意して欲しいことがあります。感じた方も多いと思いますが、社会的評価を下げれば、すべて「違法」ということになると、自分の意見とか評価とかそもそも言えないじゃん!?それってどうなの!?と。
そうです。名誉権の問題は、レビューを書いた人の「表現の自由」と衝突する問題です。それにある商品のレビュー等は、上記のようにメリットも大きいので、すぐに違法というべきではないものも存在します。

 そこで、この辺りのバランスをとるため法律(これは判例も含みますが)は、社会的評価を低下させるものであっても、①公共の利害に関する事実で、②(恨み等ではなく)公益を図る目的で、③その事実が真実である場合又は真実でなくても真実と信じたこと(事実ではなく意見又は論評の表明であれば、それの基礎となった事実の重要な部分について真実であること又は真実であると信じたこと)に相当な理由がある場合には、違法性がないというふうに考えているのです。

例えば、ECショップに対して「ここで「IPHONE」を買ったら、画面が壊れてた。ダメな会社」等の書き込みであっても、今後その店を利用する人のためレビューで(①②該当)、購入した「IPHONE」画面が壊れていたという事実(③)があれば、違法にはならないということです。

1.3 違法状態にある場合にまずすべきこと

 このような違法なレビューである思った場合、その後のその証拠を残すため、そのようなレビューを見つけた時点で、キャプチャして、ブラウザ上の画面を保存しておきましょう。

2 投稿者又はサイト運営者(掲示板管理者等)に対する請求

 まず、悪いのはレビューを書いた投稿者ですので、投稿者に対する請求を考えることになります。
しかし、匿名の場合に煩雑な手続きを経て特定しなくてはならないとか、投稿者自体にはお金もない等の理由でサイト運営者に対しても請求をしていくことが適切な対処法だと考えらます。

2.1 損害(金銭)の賠償を求める!

 違法性があるレビューの投稿者と誹謗中傷レビューが記載されたサイト運営者(管理人)に対して、そのレビューによって生じた損害について金銭賠償を求めることができます。
 

2.1.1 投稿者への請求

 ネット上のレビューの場合、匿名投稿であることが多く投稿者が誰であるかわからない場合も少なくありません。そうすると、請求する相手がわからないということがあります。
その場合には、プロバイダ責任法4条1項に基づいて発信者情報開示請求をして、投稿者を特定する必要があります。この制度については、今度、別記事で手順等を別途解説したいと思います。
 

2.1.2 サイト運営者(掲示板管理者)への請求

 こちらは、サイト上に「会社概要」や「管理人」等の表現で、明示的にされているので、相手方の特定には困らないでしょう(むしろ、これがわからないサイトがあれば、書き込み自体をやめましょう。)
サイト運営者への請求の場合、サイト運営者が自身が誹謗中傷レビューを書いたわけではないため、いわゆるプロバイダ責任制限法により、下記要件を満たす必要があります。

第3条  特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
一  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

つまりは、ⅰ権利侵害した情報の不特定多数の者に対する送信を防止する措置が技術的にでき(管理権があり、当該レビューを消すことが可能であること等)、ⅱ権利侵害の事実を、知っていた時又は知ることができたとき
に限定して損害賠償請求ができるのです。

2・2 記事の削除を求める!

 お金で賠償してもらえるといっても、その記事が残り続ければ被害は拡大してしまいます。そこで、当然記事の削除を求めることになります。
 

2.2.1 投稿者への請求

 この場合でも、相手を特定しなければならないのは、「2.1.1」の場合と同様です。
 

2.2.2 サイト運営者(掲示板管理者)への請求

 サイト運営者(掲示板管理者)への請求の場合には、裁判例上、誹謗中傷をされた者から具体的な削除請求を受けたにもかかわらず、その後も放置した場合にのみ、サイト運営者には削除義務があるとされています。
これは、物理的に常時書込み内容をチェックして、違法レビューを削除することをサイト運営者に要求するのは、現実的ではないという理由によるものです。

2.3 謝罪広告を求める!

 最後に信頼回復のため謝罪広告やそのレビューが誤りであった広告を求めるが考えられます。これは、相手に表現を強制させるという側面がありますので、大きな表現の自由への制限を加えることになりますので、お金では解決できない場合の限定措置となります。
なので、レビューの事実が誤りであり、謝罪や誤りであることを周知しなければ会社がつぶれてしまう等のかなり例外的な場合にしか、謝罪広告を求めることはできないので注意が必要です。

3 サイト運営者(掲示板管理者等)や投稿者が応じてくれない場合

 上記の措置は、あくまで法的に請求できるという意味です。つまり、請求はできるんだけど、相手が応じてくれない場合には、誹謗中傷されている側のみで強制できるものではありません。
 そこで、そのような場合には、損害賠償請求・レビューの削除等を上記の請求を裁判所に認めてもらわなくてはなりません。記事の削除は、早くしないとその分だけ、被害は拡大してしまうので、削除の「仮処分」というものを申立てて、早期にとりあえず(実際に裁判が終わる前に)削除するためのお墨付きをもらうという措置をとることとなります。

4 まとめ(取るべき具体的措置)

 以上からすると、誹謗中傷をされた者が取るべき措置は、

① 誹謗中傷画面をキャプチャして、保存する(「1.1.3」参照)
 
② サイト運営者(掲示板管理者)に削除依頼をする
 ※掲示板管理者に対する損害賠償や削除依頼が法的に認められるためには上記の通り、違法状態を認識してもらう必要があります。(「2.1.2」、「2.2.2」参照)
 
③ 投稿者を特定する手続きをする(「2.1.1」参照)
 
④ 損害賠償や削除請求をしても応じない場合は、裁判所に仮処分の申し立てし、お墨付きをもらう(「3」参照)
 
⑤ それでも、相手が争ってきたときは、裁判ではっきりさせる(もちろん、仮処分で一旦「削除」してもらった上で)
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弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士永吉 啓一郎

担当者プロフィール

自らもECサイトや新規事業(税務調査士認定制度等)の立上げや運営を行ってきた弁護士。
多くのベンチャー企業や新規ビジネスの立上げ等について、法律的なアドバイスのみでなく「パートナー」としてかかわっている。
得意分野は、ECサイトやIT関連企業を初めとして企業法務と税法

ピクト法律事務所

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